zakky's report

ネタバレ上等ブログ

ラッシュライフ


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それぞれの人生を背負った複数の登場人物が複雑に絡み合う群像劇。仙台を舞台に5つのバラバラの物語が進行していく。

タイトルにもなっている”ラッシュ”という言葉は、英語ではrush、lush、rash、lashの4つあり、その意味の多様性をうまく使い、この作品のキーともなっているエッシャーの騙し絵をモチーフにした壮大な騙し絵的作品に仕上げている。パズル好きな理系の方にオススメかも。

(「BOOK」データベースより)

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

 

 

まぁ、正直なところ最初はちょっと馴染めなかった。まず複数の物語が次々に切り替わるので必然的に登場人物が多くなる。しかも最初は同時進行かと思っていたそれぞれの物語が、実は時間的に前後していることが徐々に判明する。こうなるともう大混乱で久々に脳疲労を感じた。

この時間進行トリックをうまく使うことでごく当たり前のことが非現実的な出来事となり、読者をうまく騙している。

そして、この作品の肝は何といってもエッシャーの騙し絵。騙し絵ってある程度脳が慣れるまでは、少し騙されようとがんばる必要がある。騙されることをわざわざがんばるのもどうかと思うが、そうしないと騙し絵としては楽しめない。ただ、一度脳がそれに慣れてしまうと今度はその騙しを楽しめるようになる。それと同じような騙しがこの作品にもうまく組み込まれていて、騙しに気づくとなるほどー、と感心してしまう。黒澤の瞬間移動についての話がその騙しポイントなんだけど、まぁ人によって解釈がかなり違ってきそうだ。

それからバラバラ死体がくっついて生き返るみたいな都市伝説が組み込まれているが、これは作品全体を意識したものになっているのも面白かった。バラバラに進行していたストーリーが徐々にくっついて、そして豊潤な人生として生き返る、みたいな。これも勝手な解釈かもしれないが、自分はそう感じた。

イデア自体は別に新しくないのかもしれないが、そのアイデアを徹底してブラッシュアップしているのはスゴイ。楽しむのには少し労力を必要とするが、それがエッシャーの騙し絵の醍醐味でもある以上、その苦労も含めてこの作品の良さなんだろう。

【単行本】

 

 

 

【2007.3.9追記】

ダ・ヴィンチ 2007年 04月号 [雑誌]伊坂幸太郎特集やってたんで買ってしまった。。。んー、やっぱり元SEか。自分もSEなので何かそういう匂いをすごく感じていました。法学部卒のSEってのは想像つかなかったけど。。。

で、この伊坂氏は作品間リンクという面白い手法を使っていて、ある作品の主要人物を別の作品の意外なところに登場させたり、人物だけじゃなくイベントやエピソードなんかも作品間でリンクさせてるらしい。例えば『ラッシュライフ』で存在感抜群だった黒澤は、『重力ピエロ』や最新作『フィッシュストーリー』所収「サクリファイス」にも登場するとのこと。そんな網の目のように張り巡らされた壮大な作品間リンクの関連図がダ・ヴィンチに掲載されていて、これまた興奮モノでした。

理系であまり小説読まないって人にオススメしたいなぁ。