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毎日暑い日が続いてたので、何か乙一作品が読みたくなった。というわけで、乙一デビュー作品を選んでみた。表題作「夏と花火と私の死体」と「優子」の2本が収録されている。
(「BOOK」データベースより)
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。
まずは、デビュー作「夏と花火と私の死体」。
幼く拙い殺人者の死体遺棄逃避行ストーリー。その無邪気であっさりとした死生感は、蒸し暑い日に読むのがオススメかと。
物語は主人公(なのか???)の五月、その五月と仲良しの弥生、そして弥生の兄の健が中心になって進んでいく。ただ、普通と違うのは主人公の五月が物語の前半で弥生に殺されてしまうところ。
そしてこの作品の最大の特徴は、この死体となった五月の一人称で語られること。生きていた時も、まさに死んでいく時も、そして死んでからも、五月の語り口調には全く変化がなく、その冷静な視点と他人事のような語り口にはすごい違和感を覚える。もちろんこの違和感こそが作者の狙いなんだろう。死体なのに片足からサンダルが脱げたことを恥ずかしがったりしてて、なかなか不思議な感じ。
で、健と弥生は五月の死体をハラハラしながらあの手この手で隠そうとするんだけど、その死体自身が冷静に淡々と語ってしまうため、そのハラハラ感がちょっと伝わってこない。まぁ、その独特なタッチこそがこの作品の魅力だから仕方ない。
あと、ところどころであまりに上手くいき過ぎるので、何かシラけてしまう。この辺は当時16歳でのデビュー作品ということで、良くも悪くも荒削り。
ただ、最後は意外な終わり方で、なるほど~、うまくオチをつけたなぁ、って感じ。何か一応、みんな納得の終わり方ってことで、ある意味ハッピーエンドなのかもしれない。あ、五月のお母さんだけは納得できないだろうけど。。。
そして次、2本目「優子」は、田舎村のいわくつき名士の家の主人、政義とそこに住み込みで働いている女性、優子の悲しい話。
こちらも何か不気味な描写、怪談チックな物語で結構ぞわ~ってなった。「夏と花火と~」とは違って、結構伏線を張り巡らして、それらを最後に一つにくっつけて、ぞわわ~ってさせる。なかなか見事でした。やべ、思い出しても鳥肌が。。。こちらも暑い日にオススメです。
で、最後は一体誰が混乱していたのか?ほんとに優子?それとも政義? えっ?まさか自分? ぞわわわ~、って感じでした。
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