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素数に憑かれた人たち

 

John Derbyshire
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素数の意味の広がりを知らずに死んだらもったいないです
 毎日数十ページをたどると頭の芯が疲れます。でもやめられなくなってしまいました。そしてやっと最後まで来ました。素数定理、リーマンのゼータ関数予想、ヒルベルトの問題提起・・・と話は迷宮をたどります。1...
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素数に関わる数学上の大問題「リーマン予想」についての解説本。あの難解なリーマン予想をどこまで噛み砕いて解説してくれるのか。。。著者によれば大学で数学関連の講義を2~3取った人が前提らしい。ちなみに、この本を読んでもリーマン予想が理解できなかった諦めた方がいいそうだ。かなりの自信だ。個人的には、マーカス・デュ・ソートイの『素数の音楽 (新潮クレスト・ブックス)』の方が分かりやすかったが。。。

(「MARC」データベースより)

150年間数学者を虜にし続け、21世紀の今なお未解決の素数の重要問題「リーマン予想」。この歴史と、証明・反証に取り組んだ数学者達のエピソード、謎の理解に必要な数学を示しながらまとめた、挫折と勝利の群像ドラマ。

 

 

 

全22章からなる大作だが、奇数章が数学的な解説、偶数章がその背景となる歴史や伝記的な話という構成で、なかなか読みやすい構成。構成はいいんだけど文章がイマイチ。もしかすると日本語訳が悪いのかもしれないが、微妙な修飾語などが気になる。サイモン・シンやマーカス・デュ・ソートイのような、頭に染み渡る文章じゃない。それが残念だ。あ、でも、このテの本で索引がついているのは非常にうれしい。

さて、まず最初に引き込まれたのは、第1章冒頭部分のトランプを使った思考の話。重ねたトランプの一番上のカードを落ちないギリギリのところまでせり出させる。この時は単純にカードの1/2がせり出すことになる。次に二番目のカードも同様にせり出させる。上に乗っていて半分だけせり出している一番目のカードも一緒に動くので、二番目のカード自体は半分もせり出せず、2枚のカードの合計の重心まで動かせることになる。で、これを繰り返すことで一番目のカードは最終的にいくらでもせり出させることが可能だと。これは驚いた。ちなみに52枚のトランプなら最終的に一番目のカードは2.25枚分せり出させることが可能。カード100枚分せり出させるには、何と405,709,150,012,598兆枚の1兆倍の1兆倍の1兆倍の1兆倍の1兆倍のカードを用意すればいいらしい。ちなみにこれだけ重ねると宇宙の広さすら超えてしまうらしいが。。。

続く第2章ではリーマンの人生について語られる。リーマン、実は相当な貧乏で受けられた教育も人並み以下だったとか。そしてその貧乏が災いして、身体はかなりの貧弱。それがずっと尾を引いて、39歳の若さでこの世を去ってしまう。うーん、悲しすぎる。この人がもし長生きしていたらどうなっていたのだろうか。リーマン予想を自力で解いちゃったんじゃないだろうか。。。

第8章では、リーマンの数学能力が見出される話が。リーマンは長い不遇の時期を何とか乗り越えて、28歳で教授資格を得た。その5年後には相次いで亡くなったガウス、ディリクレに続くゲッティンゲン正教授の地位に着くことに。そして、さらには若くしてアカデミー通信会員の一員となり、その栄誉を飾るために素数に関する論文を発表する。この論文が後に数学界の難問として語り継がれる発端となった。

こうして長い長い前フリを経て、いよいよ第11章からリーマン予想の核心に迫ることになる。

この辺りまで進んでいくと、「黄金の鍵」というキーワードが何度となく出てくる。一体何なんだろうと思ったら「オイラーの積の公式」のことらしい。これを鍵に見立てて回すことで、リーマンの辿った道筋を追うことができるらしい。実際、第19章でこの「黄金の鍵」を回すのだが、これはちょっと。。。難しすぎる。。。何だコリャ。。。orz

あ、第8章に出てきた「チェビシェフの偏り」は面白かった。どういうものかというと、2以外の素数を4で割ると余りは必ず1か3になる。で、素数101までで見ると、余り1の素数が12個、余り3の素数が13個となる。そして、素数1009までなら81個と87個になるし、素数10007までなら609個と620個となり、わずかながら常に余り3の方が多くなっている。この偏りが「チェビシェフの偏り」とのこと。で、てっきり余り3の方が必ず多くなるものかと思いきや、何と素数26861のところでこの偏りは破れ、そこから一時的に余り1の方が多くなる。著者によれば、最初の580万個の素数のうち、余り1が多くなるのはたった1939個らしい。

それからスキューズ数にも驚いた。これは自然数eのe乗のe乗の79乗で、その数は「10の1兆乗の1兆乗のさらに100億乗」桁になるという。数学の証明から自然に出た数の中では最大のものになるという。で、これはリーマン予想が正しい場合に、リトルウッド違反となる(素数個数関数π(x)が対数積分関数Li(x)よりも大きくなる)最初のxがこのスキューズ数になるらしい。

そんなこんなでいろいろと数学を堪能しつつ、第20章ではリーマン予想の最近の成果について触れている。難しい。。。アラン・コンヌのアデールとかさっぱり分からんかった。。。orz でも、このアラン・コンヌはかなりいい線いってるらしい。

第21章ではリーマン予想の本質についてズバリ書かれている。リーマン予想って何か有名で難解で素数に関連して、ってイメージばかりでその本質は分かりにくいんだけど、結局のところ、その本質とは次の通りらしい。『ゼータ関数の自明でない零点は、π(x)とLi(x)の差、つまり素数定理における誤差項の大きな成分をなしている。』

さてさて、このリーマン予想、正しいと見るのが多数派だが、それでも反証があるのかもしれない。コンピュータがあれば反証探しなんて楽に思えるけど、そのコンピュータの能力をはるかに超えた先に反証が潜んでいるかもしれないという。結局、リーマン予想にはコンピュータは役に立たない。このリーマン予想、本当に正しいのだろうか?それとも数の遥か彼方にその反証が潜んでいるのだろうか。。。謎のまま終わってしまった。