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ネタバレ上等ブログ

半落ち

なかなか考えさせられるテーマだった。県警と検察の確執、現職警官の犯罪、マスコミの報道姿勢骨髄バンクのドナー制度、アルツハイマー病などなど。ただ残念なのは、2時間弱の映画にまとめるにはちょっと押し込み過ぎ。かなりの消化不良。原作ならもっと消化できたのかもしれないが、映画化に当たってはどれかの要素を端折っても良かったのでは、と思ったり。。。あ、でもどれか一つでも削ったらこの話は成り立たないか。。。

なお、タイトルの「半落ち」の意味を知らず、ずっと見続けてればその謎が解けるものだと勝手に思ってたが、被疑者が犯行の一部を認めつつも完全には認めていない状態を指す警察用語であり、コレ自体は別に普通に公開されていたと聞きビックリ。ちなみに「半落ち」に対して、完全に自供した状態を「完落ち」というらしい。

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(「DVD NAVIGATOR」データベースより)
横山秀夫原作の同名小説を『陽はまた昇る』の佐々部清監督が映画化したドラマ。現役警部がアルツハイマーの妻を殺したと出頭した。彼が自首するまでに2日間の空白があると判明し、刑事、検事、判事、新聞記者、弁護士らがそれぞれの立場で真実を追う。

物語は現職警部の梶聡一郎(寺尾聡)がアルツハイマー病を患った最愛の妻を殺し、自首するところから始まる。県警の若き出世頭の志木和正(柴田恭兵)が梶の取調べをするが、どうやら殺害から自首までに2日間の空白があり、その間に何と歌舞伎町に行った可能性が浮上する。現職警部の殺人事件だけでも警察としては大問題なのに、殺害後に歌舞伎町で遊んでいた、逃亡の可能性もあった、といった事まで重なり、県警上層部はろくに調査もせずに穏便に済まそうとする。しかし、志木や検事の佐瀬銛男(伊原剛志)はこの方針に反対する。

で、警察、検察、弁護士、マスコミが入り乱れてこの空白の2日間の謎を追うことでストーリーが進む。取調べでは絶対に口を割らない梶。やましい事がないのなら、なぜきちんと説明しないのか?非常に解せないのだが、最後にその理由が明らかになる。

以下、ネタバレです。













謎を解く鍵は、急性骨髄性白血病で亡くなった梶の一人息子にあった。最愛の一人息子を急性骨髄性白血病で亡くした梶は、同じように苦しむ誰かを助けるために骨髄バンクにドナー登録する。そして、自らの骨髄を提供して、ある少年の命を救ったことがあった。妻を殺害した後、自分も家族に会うために死を決意したが、まさに首を吊ろうとしたその時、亡き妻の遺した日記を見つける。そこには梶の骨髄移植で助かった少年の新聞投書記事が貼られており、それを読んだ梶はその少年が働いているという歌舞伎町のラーメン屋に行くことを決意する。その少年の元気な姿を見てしまった梶は、自分の骨髄で誰かを救うことができるなら、ドナー登録が解除される51歳までは生きようと決意をする。そして冒頭の自首へとつながる。梶が自供できないのは、骨髄提供に関する情報は秘密にしなければいけないという規則があるからで、しかしその秘密を守ることで自らの罪状を重くしてしまう。そして最終公判でも梶はそのことを一切説明せず、結果として懲役4年の実刑判決が下される。

この映画の原作は『このミステリーがすごい!』2003年版国内部門1位を獲得しているが、それよりも直木賞落選後の欠陥論争の方が有名かも。オチに欠陥があるということで直木賞を落選したが、その欠陥というのが、梶は懲役中に51歳の誕生日を迎えるため、結局、梶の狙い通りに骨髄提供ができないということらしい。直木賞選考委員の調査によれば、受刑者は骨髄提供ができないということらしいが、本当に?と思ってしまう。だいたい、タイプの会う骨髄が見つからずに死んでいく患者がいるというのに、受刑者だからという理由で提供させないというのはおかしいだろう。人の命がかかっているのにそんな理由でスルーされたら死んでく方はたまったもんじゃない。と勝手に心配してみたりもしたが、この論争をきっかけに骨髄バンクや関係機関が検討し、受刑者でも骨髄を提供できる方向で話が進んだらしい。まぁ、当たり前だと思うが。。。

ま、それでも直木賞は落選のままなんだけど、落選後もかなり売れまくり、映画にもなり、先の論争でも原作の意図通りに話が進んだことを考えれば、この勝負は原作者の勝ちかなぁ、と思う。


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