zakky's report

ネタバレ上等ブログ

悪果


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★★★★
黒川 博行
価格
関西アウトロー
黒川博行はもっと評価されていい作家だと思う。この作品は近年にないピカレスク小説。リアリティはそこいらのノンフィクションを蹴散らし、読者の頭の中で人物が動き回る。警察官がイイ人ばかりじゃないことは皆が...
あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成
これは楽しめた。第138回直木賞候補作。受賞作『私の男』をつい先日読んだばかりだが、個人的にはこっちの方が大衆作品として楽しめました。まぁ、あくまで素人の主観なんですが。あ、この回って『警官の血』も候補に挙がってたんだ。うーむ、激戦って感じですね。 大阪府警今里署のマル暴担当刑事が主人公のハードボイルド小説。主人公の堀内は暴力団とは持ちつ持たれつ、悪徳業界紙と組んで強請(ゆす)りをしたり、とにかく悪徳刑事だ。いや堀内だけでなく暴犯係のほとんどの刑事が何かしらの悪徳商売(シノギ)で稼いでいるし、警察幹部のための組織的な裏金作りなど、警察自体が悪の巣窟として描かれている。 そんな現実とは思えない設定にも関わらず、大阪弁の小気味いい会話や緊張感溢れる捜査状況の描写にリアリティがありすぎて、え?これマジ?と思ってしまう。いや、でもこれが仮に本当だとしたら警察がゆるさんだろ。悪徳警察に筆者が消されちゃうよなぁ。。。あ、ちなみに大阪府警には今里警察署ってのはないです。架空の警察署です。

(オンライン書店ビーケーワンより) 大阪今里署のマル暴担当刑事・堀内は淇道会が賭場を開いているという情報をつかみ、金曜日深夜、賭場に突入し28名を現行犯逮捕する。堀内は、賭場に参加していた学校経営者をゆすり始め…。警察ハードボイルド。

極道よりも性根が腐ってる堀内と極道よりも極道らしい伊達、大阪府警今里署暴力団犯罪係の名コンビだ。捜査費を幹部に吸い取られるため、自らヤクザまがいのシノギをして金を作る。この辺りは『警官の血 下巻』の三代目和也の話に出てきたマル暴担当の加賀谷係長と同じだ。ヤクザを抑えるには金がかかるからという理由で非合法なシノギで金を作り、いつしか金に溺れてしまう。あ、デンゼル・ワシントンの『トレーニング デイ』も思い出しちゃうな。 毒を以て毒を制すじゃないけど、より巨悪を潰すためにはアリなのかな?と思ってしまう。が、どう考えても捜査に関係ない女を囲うために大金を使っているし、やはり悪徳刑事だ。 前半は淇道総業の賭博(遠出の盆)のガサ入れを中心に進む。ネタ元の田代から警察内部情報と引き換えに仕入れたのは淇道総業というヤクザ組織が仕切る大規模賭博の情報だった。堀内は伊達と組み、内偵捜査を敢行。賭場の場所となるカラオケボックスの構造や淇道総業の取引銀行の金の動き、賭け客の一人である中古車販売会社社長の動きなどを調査する。2人で可能な限り内偵し、あとはガサ入れだけ、というところまで持っていってから上長に報告する。暴犯係の刑事は自分の持ちネタを秘密裏に調査し、自分で確信を持つまで他には漏らさない。縄張り根性と手柄を独り占めする意思こその刑事家業なのだと。 ガサ入れ直前まで仕立て上げた二人は、暴犯係の捜査会議で初めて賭博情報を報告する。そんな二人を今は暴犯係も組織捜査の時代だと一蹴する佐伯係長。マニュアル重視の組織人間で堀内、伊達とは相容れないタイプだ。 今回は規模が大きいため、暴犯係以外からも応援捜査員を投入し、大規模なガサ入れを敢行することに。この辺りからの組織を挙げての緻密な作戦遂行は手に汗握る。銀行では賭場開催の資金を下ろしにくる組員を張り込み、たまりと呼ばれる賭け客の集合場所を探り、賭場開催が確実であることを掴む。そしていよいよ深夜1時半過ぎ、ついに現場に踏み込む。意外とあっけない。組員もジタバタせず、客も呆気に取れれて動けない。あっという間に証拠を押さえて、ガサ入れは無事終了。 後半はこのガサ入れを基点とした新しい展開になる。堀内は今回賭場にいた賭け客の中に森本という学校法人理事長がいることに目をつけ、悪徳業界紙の編集長坂辺と組んで強請りをしようとする。学校法人理事長が賭博現場にいるところを捕まったとなったら世間的にはちょっとマズイ。その立場を利用して強請ろうするワケだ。ところが坂辺の様子がちょっとおかしい。と思ったら、坂辺はなんと轢き逃げに遭い、あっけなく死亡。明らかに他殺だ。堀内のシノギの崩壊だ。 さらに堀内までも見知らぬヤクザに襲われ警察手帳を奪われる。奪ったヤクザは坂辺からの預かり物と引き換えに返すと言うが、堀内には何のことか全く分からない。どうやら坂辺は堀内には言わずに動いて殺されたようだ。 堀内はこれまで伊達にも話さなかったシノギの内容を打ち明け、伊達に警察手帳奪還の手助けを依頼する。ここからまた二人の隠密捜査が始まる。捜査が進むにつれて強請りの対象だった森本のキナ臭さが見えてくる。森本と部下の間宮はヤクザを使い、殺人を教唆していたことが見えてくる。そして、その決定的な証拠こそ、森本がヤクザを使って堀内から奪おうとしているものだった。 正直ここからはかなり複雑。最初は全く関係ないように思えた賭場の手入れ自体が森本に仕組まれていたのだ。複雑に張り巡らされた伏線がきれいに整理された時はここまでつながってたのかと驚いた。そして、何とかギリギリのところで警察手帳を取り戻した堀内だったが、捜査の途中でヤクザと派手な衝突を起こしてしまい、そこから警察にばれてしまう。監察からの要請で結局堀内は依願退職をすることに。。。警察は張本人を依願退職させることで、内部の不祥事を隠蔽するらしい。まぁ、身から出た錆、堀内らしい最後かと。。。 それでもただでは終わらせない。警察を辞める直前に拳銃で森本を脅し、例の証拠を1億円で買い取らせる。山分けすると約束した伊達をも騙して、伊達には2500万を渡し、自分は7500万を取る。まぁ、辞職する羽目になったことを考えれば、その取り分もまぁアリかなぁ。うーむ、最後まで悪徳野郎なのに、なぜか魅力のある主人公でした。 これ、柴田恭兵とかで映画化したら面白そう。。。