zakky's report

ネタバレ上等ブログ

サクリファイス


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★★★★
近藤 史恵
価格
ヨーロッパの青空と乾いた空気が似合う,カラっとした作品
3000m走で高校総体を獲りながら,勝利の期待を背負って走ることを嫌って自転車に転向した白石誓。この駆け出しのプロロードマンは,エースのために風を受け,時にわざとリタイアまでするアシストこそ「自由な...
あまなつShopあまなつで見る同じレイアウトで作成
自転車ロードレースを題材にしたミステリ。(ん?ミステリなのか???) 自転車ロードレースというと漫画『シャカリキ!』を思い出す。あの漫画は結構好きだったなぁ。。。あ、そういえばもうすぐ映画化するらしい。 それにしてもあっという間に読み終えてしまった。量も少なくあっさり仕上げだ。自転車と同じ疾走感を狙っているのか?ちょっと読み足りなさを感じた。 ちなみにサクリファイス(sacrifice)の意味は「犠牲」。この作品のタイトルとしてこれほど相応しいのはないんじゃないかと思った。

Amazon.co.jpより 出版社/著者からの内容紹介) ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。 勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。

以下、ネタバレ&長文注意! 主人公の白石誓(チカ)はチーム・オッジ2年目の若手プロロードレーサー。高校時代は陸上でインターハイ制覇し将来を嘱望されていたが、勝利を期待を背負って走ることの意義を見出せずに悩む。そんな時、自転車ロードレースにアシストというエースを勝たせるために走る選手の存在を知り、自転車ロードレースへと転向した過去を持つ。チーム・オッジでも山岳コースを得意とするクライマー型で、同じくクライマー型のエース石尾のために走るアシストとして頭角を現し始める。うーん、なんて贅沢な転向なんだ。トップアスリートであることを捨ててまで転向するなんて、、、と思ったら難なくプロとしてやっているところがニクイ。 チーム・オッジは不動のエース石尾豪を擁する自動車メーカーを母体とするチーム。石尾を長年アシストしてきた赤城、チカと同期の若手スプリンター伊庭など、15人の選手が所属しており、大会規模やこれまでの成績などで出場選手が決まっているようだ。国内で自転車レースがそんなにあるものなのかよく知らないが、レースごとに重要度があるっぽい。 さて、エースの石尾だが、普段は寡黙にロードレース最優先の生活を送るストイックエースだ。しかもそんな習慣をチームメンバーにも科す無言の統治者といった感じだ。入ったばかりの監督よりも長年エースに君臨してきた石尾の方がチーム内での影響力を持っているという。そんな石尾だが、実は3年前に将来のエース候補を事故に巻き込んで自転車競技者として再起不能にした過去を持つ。しかも自分以外のエースを認められない石尾が故意にやったんじゃないかという疑惑まで。怖え。。。 さて、物語前半はツール・ド・ジャポンというツアー大会を追う形で話が進んでいく。この大会はチームにとっても重要な大会で、エース石尾、アシスト赤城を中心としたベストメンバーで挑む。そんな中、チカ、伊庭の2年目の若手二人が異例の抜擢で出場を果たす。 伊庭はこれまで小規模大会では石尾の代わりにエースとして出場し、何度か優勝した経験も持つ。将来的には石尾に代わるエース候補と目されているようだ。この大会でもチカは明確なアシスト役だったが、伊庭は大会前半のスプリンター向け平地コースで石尾に代わるエース格として投入されていた。 大会初日の大阪ステージでは、石尾の指示でチカが前を引いてアシストし、伊庭が4位へと食い込む。チカは3年前の疑惑から、石尾が自分以外のエースを認めないのではという疑念を抱いていたが、伊庭を勝たすために貴重なアシストを使った石尾の判断を見て、杞憂だと感じていた、初日で好成績を収めた伊庭は、続く奈良ステージでもゴール前のスプリント勝負で2位に入った。メジャー初出場としては上出来だ。ただ、伊庭本人は勝てなかったことを悔しがっている。この辺りがエース気質なんだろう。 移動日1日を挟んでの南信州ステージ、初の山岳ステージということで大会も佳境に入る。チカは石尾から集団を飛び出し逃げるよう指示を受ける。逃げる選手が出ると他チームは集団を引いてでも追わなければならない。チカが逃げることでチーム・オッジは他チームに引いてもらえ、最終決戦で有利になるという算段だ。集団を引くのと引いてもらうのとでは空気抵抗が相当違うみたいで、だからこそ成立する戦略なんだろう。 チカはアタックタイミングを冷静に見極め集団を飛び出すことに成功。香港チームのウォンとサントス・カンタンのマルケスもチカを追って飛び出した。先頭はこの3人が交代で引きながら、先を急ぐことに。ただし、チカはこのままゴールまで逃げ切ってしまうわけにはいかない。なぜなら適当なところで後方集団に追いつかせ、エース石尾がこのステージで優勝することこそがチーム使命だからだ。ここで素人は、いいじゃん勝っちゃえば、なんて思ってしまうが、そうもいかないのが自転車ロードレースだ。 さてさて、マルケスの所属するサントス・カンタンというチーム、これはスペインのプロコンチネンタルチームとのこと。プロコンチネンタルチームとは?ってな感じで調べてみたんだけど、どうやら自転車チームってのは国際自転車競技連合 (UCI) によって格付けされていてトップカテゴリのプロチームに次ぐ格付けということらしい。で、このクラスのチームがツール・ド・ジャポンに参戦するのは異例中の異例なのだが、ウォンを振り切りチカと2人となった時、マルケスがその参戦理由を語りだす。てか、走りながらそんな余裕あるのか??? 自転車ってもっとも過酷なスポーツとかって言われてるけど、話する余裕はあるのか??? この辺がよく分からない。。。ま、いいや。で、サントス・カンタンの参戦理由はなんと日本人選手の獲得だった。それを知ったチカは初めて自分自身の成績を気にし始めるようになる。 南信州ステージ終盤、チカの心の葛藤を見透かしたかのようにレースが動く。優勝候補のサントス・カンタンが逃げているため、後方集団チームは追うことを諦め、次ステージ以降に力を温存することを選んだ。これによりエース石尾も2人に追いつけないまま、チームオーダーとしてチカはステージ制覇を目指すことになる。監督の指示よりもかなり手前でアタックをしかけたチカだったが、見事マルケスを振り切ってステージ制覇を果たす。 続く富士山ステージでエース石尾がやっと勝ち、総合1位チカ、総合2位石尾という形で運命の伊豆ステージを迎える。伊豆ステージでは好調チーム・オッジを抑えるために他チームが連携してアタックをしかける。このまま疲弊すること嫌った石尾はチカを従えて集団を抜け出す。石尾の山岳アタックは相当なスピードでライバルがどんどん絞られていく。チカは石尾についていきながら、いざ石尾との直接対決になってしまったらどうしよう、と。。。アシストと自己成績の天秤に揺れるチカだったが、ここで石尾の自転車がパンクする。どうすべきか迷っているチカを石尾は呼び戻す。チームカーが到着しタイヤ交換をしたが、かなりの時間をロスしてしまった。ここでチカは自分の役割を思い返す。自らの力で石尾を引き、先頭集団へと送り届けると、チカは力を使い果たして後退していった。チカの好アシストでトップとわずか3秒差でゴールした石尾はとうとう総合1位に躍り出た。ちなみに総合優勝を狙うような選手はステージ優勝をガツガツ取りに行かないのが暗黙の了解となっているらしい。つまり石尾はあえてステージ優勝を取りにいかなかったということだそうだ。欧州の紳士のスポーツってのは何かと難しい。。。 最終東京ステージは平坦コースのため、ほとんど差がつかず、石尾はそのまま総合優勝を果たす。そしてチカも大健闘の総合10位でツール・ド・ジャポンを終えた。 と、ここまでが前半。長いな。。。いや、作品自体は短くてあっという間に読み終えたんだけど、その中にドラマがぎっしり詰まっている感じだ。そして、ここでチカの元恋人の香乃が登場し、かつて石尾が再起不能にした袴田と出会うことで物語がうねりをあげて思いもよらない方向へと展開していく。 後半はリエージュ・ルクセンブルクという欧州の大会を軸に進む。ツール・ド・ジャポンでの活躍が認められ、初めて海外遠征に帯同したチカ。伊庭も一緒だ。そこにツール・ド・ジャポンにも出場していたサントス・カンタン、チカの元恋人の香乃、石尾に再起不能にされた袴田、といった役者が勢揃い。何かが起きる予感。。。 香乃はツール・ド・ジャポン伊豆ステージで石尾がタイヤの空気を抜いていたという情報をチカに伝える。香乃は断片的な情報から石尾の細工でチカのタイヤがパンクしたものと勘違いしていたが、実際にパンクしたのは石尾だった。香乃には心配いらないと言ったものの、やはり腑に落ちない。石尾はわざと自身のマシンをパンクさせたというのか??? リエージュ・ルクセンブルク初日を無難に切り抜けたチーム・オッジ。2日目は勝負どころの山岳コースだ。サントス・カンタンへのアピールもあって、チカと伊庭がアタックをしかける。見事成功し、先を急ぐ2人に監督から戻るように指示を受ける。止まれという指示ならまだしも戻れとなると異常事態だ。いやな予感を感じながら戻ったチカは凄惨な事故現場を目の当たりにした。石尾はブロックに顔面から突っ込み即死だった。冒頭のシーンがここへとつながっていたワケだ。。。たいていの大会はレース中に死者が出るとそこで中止となり、賞金は全て遺族へと支払われるのだという。 不可解な石尾の事故死から1ヶ月。チカは二転三転しながらも驚くべき真相へと辿りつく。袴田の自己輸血、石尾のドリンクに仕込まれたドーピング剤エフェドリン、事故直前に袴田が石尾にかけた言葉、香乃からチカに差し入れられたワイン、サントス・カンタンの日本人スカウト条件、石尾がツール・ド・ジャポンで自身のタイヤをパンクさせたこと、、、こういった全ての伏線が一つになったとき、石尾の驚くべき行動心理が明らかになる。石尾はレースのためではなく、もっと大きな、チカの、いや日本人選手の本場での活躍のために死を選んだのだった。チカがサントス・カンタン入りを果たすためにはそうするしかなかったのだろう。正直スゴイと思った。ある意味ストイックすぎる。まさにサクリファイスだ。ただ、ちょっと現実味に欠けるかな。。。 そして、全てを知ったチカはその思いを胸にサントス・カンタンで活躍する。今までのチカなら耐え切れないほどのプレッシャー。しかしチカは変わった。フランスのクラブチームにスカウトされるほどの順調な活躍ぶりだ。貴重なサクリファイスがあっての自分であることを身に染みながらひたすら走っていた。 ★追記 2008/7/1 先週発売のヤングチャンピオンで漫画連載が始まりましたね。 電車の吊り広告で見た絵はメガネをかけていたのが違和感があったけど、疾走感があっていい感じでした。 連載は1年半の長丁場になるとか。隔週刊ってのがちょっと微妙だなぁ。。。