ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで

★★★★
安藤 健二
価格
「なぜ」に興味のある人にとっては読み応えあり
封印(いわゆる放送禁止の意)作品の紹介ではなく「なぜ作品が封印されたのか」を追ったルポ。よって、取り上げられたのは、その道のマニアでない私でも封印された理由を知っていた「ウルトラセブン第12話」「怪...
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封印作品。。。わいせつ図書とかの発禁作品とは異なり、発売元や版権元が自主規制した結果、封印されてしまった作品だ。その封印理由も様々で謎が多い。 そういった謎に迫るため関係者を取材するが、すんなり話が聞けたり、何やら陰謀めいた話に展開したりと二転三転する。会社を辞めてまで執筆に取り組んだ筆者の執念を感じた。 封印モノとしては有名すぎる『DVDウルトラセブン』のスペル星人から入り、同じく円谷プロの『怪奇大作戦』や手塚治虫の『ブラック・ジャック』まで、とても興味深い封印ネタを扱っています。

(「BOOK」データベースより) DVDや衛星放送が普及し、あらゆる“埋もれた名作”が発掘、復刻されている21世紀。しかしその片隅では、存在のみ知られながら、いまだ決して目にすることができない一部の作品群が、ひそかに語り継がれ続けている。これらの物語は、いったいなぜ「封印」されてしまったのか?誰が、いつ、どこで、「封印」を決めたのか…?大学生時代、ネット上での酒鬼薔薇聖斗の顔写真公表の動きに関わった経験も持つ著者が、戦後の特撮、マンガ、ゲームを中心に、関係者の証言を徹底的に集め、その“謎”に迫る。必読の新世代ルポルタージュ。

第1章は、ウルトラセブン禁断の第12話、スペル星人の話だ。これは封印業界(そんな業界あるのか?)では有名すぎる作品。小学館の雑誌『小学二年生』のふろくに”ひばくせい人”というニックネームのウルトラ怪獣が使われていた。それが全員をケロイドで覆われた真っ白な人間の姿をした怪獣、スペル星人だった。これをきっかけに原爆被害者を怪獣扱いしているという抗議に発展し、ついにウルトラセブン第12話は封印されてしまった。 この禁断の第12話の録画ビデオの個人取引のエピソードに先日死刑が執行された宮崎勤死刑囚が出てきたのには驚いた。本当の話なのか真相は不明だが、あの事件の最中に、宮崎勤と手紙をやり取りし、あの脅迫文と同じだったという。なかなか驚きだ。 で、この第12話、本当に封印すべき作品なのだろうか? ボタンの掛け違いのような気がしないでもないが、一番の問題は円谷プロのことなかれ主義ではないだろうか? 続く第2章は、『怪奇大作戦』の第24話「狂鬼人間」だ。刑法第39条を扱った内容で、この話のあらすじが書かれているが、かなり衝撃的だ。読んだだけで鳥肌がたった。これは放送できなくても仕方ないと感じた。叫び声で終わる不気味なエンディングなんて自分が子供の時に見たら確実にトラウマになるよ。 『そして殺人者は野に放たれる』の著者、日垣隆氏も機械で人工的に精神障害を起こすというアイディアはいいが、精神障害と殺人がイコールになっているなど、当時者が反発してもおかしくない内容、とコメントしている。ホントにそうだ。主人公格が機械にかけられて精神障害になった途端に笑いながら銃を乱射するなんて。。。マジ怖え。 で、実はこれ、前章と同じく円谷プロの作品で、特撮業界のトップに君臨する同社の脅威で業界関係者の取材が難航。当時の制作者は封印を知らないといった反応だったが、しらばっくれてるとしか思えなかった。第1章でも思ったが、円谷プロの対応は悪すぎる。 第3章は、映画『ノストラダムスの大予言(←こちらはサントラCD)』が題材だ。だが、この映画、全く知らん。。。例によってあらすじが掲載されていたが、これがまたスゴイ。。。『エボリューション』と『デイ・アフター・トゥモロー』とあと何かショッキング系の映画をごちゃまぜにした感じだ。 これもセブン第12話同様、原水爆への警鐘が空回りして、原爆被害者の抗議につながってしまったケース。ただ、セブンの時と違うのは、制作サイドが非を認めた上で問題シーンをカットし、その後、メディア再販の際に自主的に封印されていったということ。なので封印するまでの経緯は面白味がない。むしろ、封印後のエピソードで興味深い話があった。 それはグリフォンという会社が『ノストラダムスの大予言』をドラマCDという形で復活させた話だ。グリフォンはこのドラマCD発売の直後に忽然と姿を消している。また、グリフォン社長が暴力団からの借金返済のために海賊版ビデオを売りさばいたという話まで出てきて、実際この海賊版ビデオは現在もかなり出回っているようだ。ちなみにこの社長は現在消息不明とのこと。。。 第4章は巨匠手塚治虫ブラックジャックの封印ストーリー。問題の作品は、『植物人間』『快楽の座』の2話。どちらも脳外科に関する話で「ロボトミー」という医学用語の誤用が原因と思われる。実際にロボトミーの誤用によって抗議を受けたのは別の作品なんだけど、その話は脳外科手術を別の手術に変更して、改作という形で生き残った。一方、先の2作品は脳外科手術ありきの話だったため改作できず封印したのだろうと推測される。亡くなった手塚氏が単行本収録作品を決めていたため、封印の真相は闇の中だ。 意外だったのは手塚氏が作品への抗議に対して非常に謙虚だったこと。氏ほどの巨匠となると普段はともかく作品に対しては横柄な態度を取りそうに思ったが、抗議を真摯に受け止め対応していたことが伺えた。ただ、その結果、医学漫画であるブラックジャックの執筆には非常に苦労されていたようだ。 最終章の第5章は、O157予防ゲーム。これは著者が封印モノを書くきっかけになった話だ。埼玉県が監修にあたった教育用O157予防ゲームに18禁ゲーム(エロゲー)のキャラクターが使われることが発覚し、県が監修を降りたという話。メディアで報道されるたびに2ちゃんねるで話題になっていたようだ。実はこのゲームは完全な封印作品ではなく、県が監修を降りた後も開発会社が自力で開発を進め、『水夏 ~おー・157章~』として発売にこぎつけている。 著者はエロゲーキャラを教育用ゲームに使えない理由にこだわりすぎで、話の方向性が面白くなかったが、元AV女優小室友里の話はなかなか興味深かった。あ、エロな意味じゃなくて、自分の経験に基づいたしっかりとした意見を持っていて、それが結構なるほどな〜と思える内容だったんで。飯島愛を見ていると元AV女優の肩書きはデメリットでもハンデでもないと思ってしまうが、彼女が特別なだけで肩書き差別はあるらしい。 と、こんな感じで最後は変な方向だったけど、全体的には興味深く読めました。 あ、そういえば、第2章の『怪奇大作戦』の紹介サイトを見たんだけど、大人でも余裕でビビりました。マジこえー。
安藤 健二
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考察に値する取材結果
 『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」、『ブラック・ジャック』第41話「植物人間」・第58話「快楽の座」、『怪奇大作戦』第24話「狂鬼人間」、映画『ノストラダムスの大予言』などの、現在は...
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