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ホルモー六景

全長20cmという小さな身体に茶巾絞りの顔、「きゅるる」と鳴いて、「きゃあきゃあきゃあ」と囃し立てる。レーズンで”すぽぽっぽん”と体力回復して、「ぴゅろお」と消えていく、あのオニたちがまた帰ってきた。 『鴨川ホルモー』の続編、いや、サイドストーリー的な短編集。しかも全編がラブストーリーという『鴨川ホルモー』とはまた違った攻め方だ。しかもホルモーワールドがさらに広がるという、今後の続編が楽しみな展開だった。

ホルモー六景 (角川文庫)
万城目 学
角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-11-25)
売り上げランキング: 74,917

(「BOOK」データベースより) このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、励むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。祗園祭の宵山に、浴衣で駆けます若人ら、オニと戯れ空騒ぎ、友と戯れ阿呆踊り。四神見える王城の地に、今宵も干戈の響きあり。挑むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合、若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は天翔る。京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。都大路に鳴り渡る、伝説復古の大号令。変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、ここに推参。

 

第一景「鴨川(小)ホルモー」

京都産業大学玄武組の強さの原動力で「二人静」と呼ばれているが、全然静かじゃない女子コンビ、定子と彰子。”夢想花アタッキング”というオニたちの特性を活かした超強力攻撃法を編み出した二人静だが、ちょっとした色恋沙汰でコンビ解消の危機に。彰子との誓い「北山議定書」を破った定子は、初デートの真っ最中に彰子とのホルモー対決をする羽目に。でも最後は涙の友情が、そして鴨川にはオニたちが”捧げ”られた。うーん、これが第四景につながっていくとは。。。

 

第二景「ローマ風の休日」

『鴨川ホルモー』の真のヒロイン、凡ちゃんこと、楠木ふみの微笑ましい物語。「17条ホルモー」で見せた指揮官ぶりが、イタリアンレストランのアルバイトでも炸裂。『鴨川ホルモー』で凡ちゃんが安部に告白したきっかけが明らかに。

 

第三景「もっちゃん」

檸檬 (新潮文庫)』の梶井基次郎を勝手にモデルにして、しかも無理やりホルモーに絡めちゃったという斬新な作品。もっちゃんと絡んでいる「安部」が『鴨川ホルモー』の主人公の安部とは重なるミスリードがなかなか絶妙だった。

 

第四景「同志社大学黄竜陣」

『鴨川ホルモー』の芦屋満のモトカノ、山吹巴の話。つーか、『鴨川ホルモー』では、巴が芦屋につきまとっていたように見えていたが、実はむしろ逆ってことがよく分かった。そんなことよりも衝撃的なのは、何と、ホルモーには幻の5団体目が存在したということ。それが”同志社大学黄竜陣”。巴が知らず知らずのうちに黄竜陣復活のための3条件をクリアしてしまったのには笑えた。「黄竜陣ノ証ヲ持チテ、神社ヲ訪レルベシ。」は巴自身が理解してクリアしたものの、「彼ノモノヲ使役スル者トトモニ、神社ヲ訪レルベシ。」には芦屋が絡み、そして、最後の条件「同日夜、彼ノモノヲ鴨川ニ柱トシテ捧グベシ。」には何と第一景の二人静の対戦が絡み、巴が知らない間にクリア。これは見事すぎる。続編では巴の姐御っぷりが炸裂することだろう。

 

第五景「丸の内サミット」

同志社大学黄竜陣”だけでも驚きなのに、”青竜お茶の水””白虎一橋”って。。。「玄武」「朱雀」「黄竜」は一体どこの大学だ? つーか、東京と京都の交流戦までできちゃうじゃん。。。ホルモーワールドは広がる一方だ。。。

 

第六景「長持の恋」

これはちょっと泣いた。。。立命館大学白虎隊の代表、細川珠実の時空を越えた切ない恋。舞台が『鹿男あをによし』で出てくる”狐のは”ってのがまたニクイ。その”狐のは”の倉庫にあった長持(昔の衣装保管箱)を通して戦国時代の侍、なべ丸と文通を始める。なべ丸、おたまという組み合わせがまたまたニクイ。この文通は本能寺の変で途絶えることになるが、ちょんまげ男、高村を通して成就することに。「ありがとう、私を見つけてくれて」で終わるところがたまらんかった。

 

鴨川ホルモー (角川文庫)
万城目 学
角川グループパブリッシング
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