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ネタバレ上等ブログ

笑う警官

警官の血』でも知られる佐々木譲の道警シリーズ第一作。

 数年前に北海道警察で起きた組織ぐるみの汚職事件をモチーフにしているらしいが、これが本当だとすると警察って、、、という感じがしてしまう。

 でも、身内に甘い体質ってのは昔から言われてるからなぁ、、、 こればかりは大ナタ振るったくらいじゃ変わらんのかもなぁ、、、

 これ、元は『うたう警官』だったのを文庫化に伴い分かりやすくするために『笑う警官』に改題したとか。余計分かりにくい、、、

 つーか、『うたう警官』のが分かりやすいよ。。。同名の有名作品『笑う警官』を知っていると、改題の意図が分かるのかもしれないが、、、 それから本作品は角川春樹の11年ぶりの監督作品として映画化も決まっている。公式サイトで予告ムービーが公開されているが、佐伯役の大森南朋がなかなか雰囲気でていた。

 

笑う警官 (ハルキ文庫)
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佐々木 譲
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(「BOOK」データベースより) 札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長だった。やがて津久井に対する射殺命令がでてしまう。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつて、おとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するために有志たちとともに、極秘裡に捜査を始めたのだったが…。北海道道警を舞台に描く警察小説の金字塔、「うたう警官」の文庫化。

主人公は北海道警察大通警察署刑事第一課の佐伯宏一警部補。無実の罪で道警の射殺対象にされた盟友津久井巡査部長を救うために有志を集めて非公式な隠密捜査を敢行する。

 冒頭、警察組織に疑いをかけられ、先が望めなくなった警察官が拳銃自殺をするシーンがプロローグとして挿入されている。最近も警察官の拳銃自殺のニュースがあったと思うが、もしかしてこういう組織絡みの自殺だったりするのかも。。。ちょっと怖いな。

 そして本編、まずはミス道警にも選ばれた美人婦警の水村が道警がアジトとして使っていたマンションで絞殺体となって発見される。

 間もなくして水村のかつての交際相手で北海道警察本部生活安全部銃器薬物対策課の津久井巡査部長が被疑者として浮上。間もなくして不自然な形で津久井射殺命令が発令される。

 この動きにきな臭いものを感じた佐伯が有志の警察官を集めて独自調査に乗り出す。

 実は佐伯と津久井はかつてタイ人娼婦人身売買事件の潜入捜査で生死を共にした仲だった。死に直面した重圧の中、互いへの揺るぎない信頼感が生まれていた。だからこそ佐伯は独自調査に乗り出したワケだし、八方塞がりとなった津久井もまた佐伯に連絡してきたのだろう。

 佐伯率いる有志軍のミッションは、津久井を翌朝の道議会百条委員会に無事出席させること。実は津久井はこの会で道警の不祥事に関する重要な証言をする(うたう)ことになっていた。どうやら道警はこれを阻止するために津久井を消そうとしているようだ。

 マジか?と思ったが、実際、過去に起きた郡司警部による拳銃麻薬不法所持事件では、郡司の証言内容によっては道警全体の裏金事件へと発展する可能性もあり、裁判の際には郡司の口を塞ごうとする動きから、防弾ガラスで囲って守るという厳重警備が敷かれたこともある。つまり裁判所は道警による郡司暗殺を現実的な脅威と判断したワケだ。

 タイムリミットは16時間後。「真犯人を挙げるためには、ずいぶん短いし、津久井さんを守り通すには、結構長い時間ですね。」とは小田の言葉だが、個人的には津久井を匿うのは楽そうに感じた。うーん、この辺は警察からの逃亡経験がない自分には想像が及ばないのかも。

 さて、有志軍の主要メンバーだが、なかなか多彩だ。若い新宮、ベテラン駄洒落の植村、水村殺害事件の初動捜査に当たった町田、紅一点小島といった面々。そこに道警本部だが気概のある長正寺警部らも絡んだりして、難攻不落の本部を崩していく。

 それにしても佐伯の指揮官ぶりは見事だ。必要な情報を小出しにし、しかも各メンバーに個別の情報を与えることで万が一の情報リーク時に出元を割り出す仕組みまで作っておく徹底ぶり。

 実際、何故か津久井の潜伏先とした小田の弟の部屋に警察が貼り込んだり、重要情報がリークされているようだ。ちなみに佐伯の巧みな采配によって、津久井は別の場所に匿われており無事だったワケだが。

 そして最後の難関、百条委員会会場への津久井入場の場面はなかなかの緊迫感だった。携帯電話で巧みに各メンバーを操り、道警本部の裏を、いや裏の裏までかいて津久井を百条委員会会場に送り込む。その過程でついに裏切り者のあぶり出しにも成功。その裏切り者はまさかまさかの植村だった。うーん、あの駄洒落おじさんだったとは、、、ベテランだけに道警への愛着心は強かったのだろう。

 それから水村殺しの真犯人だが、道警本部生活安全部長の石岡だった。郡司事件の不祥事対応として警察庁が送り込んできた警察庁キャリア。文科省キャリアの妻と子を東京に残して単身赴任してきており、そこで水村と愛人関係となっていた。SM趣味に走ったりして楽しんでいたが、水村の過剰な要求に耐え切れずに殺してしまった。佐伯に自首を促されたが、自殺を選んだ。うーん、、、こんな身の滅ぼし方って、、、 というわけでそれなりにボリューム感があったが、それほど中だるみもなく、一気に結末に向かう疾走感あふれるストーリーだった。タイムリミットものは疾走感が命だからな。

 

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