ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

Newton (ニュートン) 2009年 05月号

巻頭の”時間”に関する特集に惹かれた。

「時間」とは何か、、、 うーん、そんな真剣に問われても、、、と普通の人は思うんだけど、天才ってのはやっぱりどこか違う。とにかく当たり前と思えることを真剣に真面目に考え抜く。そして凡人には理解できない境地に辿り着いちゃうワケだ。

前に読んだ『時間はどこで生まれるのか』では、時間の正体を我々人間の意識の産物だと書いていたが、本書によればそういう考え方もあるし、また別の考え方もあって、結局まだまだ解明できてないってことらしい。

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Amazon.co.jpより)
物理学者を悩ませつづける「時間」とは何か?-過去・現在・未来とは?時間に“はじまり”はあるか?/「かぐや」が塗りかえる月の進化史-日本の探査機がもたらした最新成果!/「脳」が物を見るしくみ-視覚の情報処理を錯視で探る

時間とは何ぞや? この疑問に最も早く考えをめぐらせた人、それは古代ギリシャの哲学者アリストテレスらしい。まぁ、もしかするともっと昔の人も考えてたかもしれないけど、記録に残ってないってことで一応アリストテレスが一番最初の人ってことになってました。でも物理学や科学も未発達だった当事、そんなことを考えたってのは本当にスゴイ。周囲からは変人扱いされたんじゃないかなぁ。。。

そんなアリストテレスの話や「ゼノンのパラドクス(飛ぶ矢のパラドクス)<http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%bc%e3%83%8e%e3%83%b3%e3%81%ae%e3%83%91%e3%83%a9%e3%83%89%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9>」から始まり、ガリレオの「振り子の等時性」の発見、時計の精密化、さらにはニュートン力学相対性理論エントロピー増大の法則なんてのにまで話が進む。最後は「時間論の最前線」っていうことで、時間の始まりについての考察や量子重力理論という最先端理論まで登場。いやいやお腹一杯、というか理解しきれてない、消化不良気味だ。。。

ニュートンの考えた絶対時間、これは普通の人には当たり前に感じるかもしれない。まぁ、地球上で普通に生活する範囲ではニュートン力学だけで十分説明可能だし、となると時間なんて絶対的な存在であっても問題ないように感じる。しかし、実は現代人はもうその範囲を超えてしまっていた。カーナビや最近では携帯電話にも搭載されているGPS機能、あれがアインシュタイン相対性理論抜きでは語れない代物らしい。

相対性理論の時間の伸び縮みについては、運動の早さによって時間の進み方が変わるという話は有名だ。だがそれだけじゃなく、重力によっても時間の進み方が変わる。重力が強いほど、時間の進み方は早くなる。そのためGPS衛星に積まれた時計は地球の重力が弱い分、進むのが遅いのだという。そして、GPSが正常に機能するためには、相対性理論による時間補正が必須なんだとか。いやぁ、、、何と言うか、、、もう我々一般人ですらニュートン力学だけでは生きていけないんだなぁ、、、文明ってのはやっぱり怖いなぁ、と思った。

エントロピー増大の法則のところでは、何やらコーヒーとミルクの混ざり方を真剣に考えたりする。コーヒーにミルクを入れれば時間と共に段々と混ざっていく。当たり前の話だ。だけど、こういう当たり前のことをとにかく難しく考えることで、これまでにない新しい発見が生まれるんだろう。

時間の始まりのところでは、宇宙の始まりにまで話が及ぶ。一口にビッグバンといっても、その最初の部分は考え方がいろいろあるらしい。サイモン・シンの『ビッグバン宇宙論 (上)』『〃 (下)』では、ビッグバンの瞬間に時間と空間が生まれたという話が出ていたかと。北極点では東西南北の考え方が無意味になるように、ビッグバン時点では時間と空間という考え方は無意味になるとか、そんな話だったような。。。

この特集では宇宙の始まりについて4つの考え方が紹介されていた。ホーキング博士の「無境界仮説」では空間と区別できない虚数時間から宇宙が始まるという。これがサイモン・シンの『ビッグバン宇宙論』に出てた話かと思われる。 次のゴットの「自己創造する宇宙モデル」では、未来と過去が循環する「タイムループ」から宇宙が始まるという。これはちょっと初耳で理解できんかった。 それからループ量子重力理論では、前の世代の宇宙が収縮して、そのはね返り(ビッグバウンス)が宇宙の始まりと考える。これは何かで読んだ記憶がある。現在の膨張する宇宙もそのうち膨張が止まり、逆に宇宙全体が収縮に転じて、最後は全てが集まって爆発し、その跳ね返りの勢いで再び膨張して、また膨張が止まって収縮に転じ、、、、と延々と繰り返す話だったかと。 最後の「宇宙の多重発生」理論では、我々がいる今の宇宙を生んだ親宇宙なるものが存在し、たくさんの宇宙が存在するという話。これも10年以上前だったか、新聞の特集記事で読んだ記憶がある。確か、宇宙ってのはユニバース(universe)で、ユニってのは唯一のって意味があるんだけど、この理論になると宇宙は唯一じゃなくなるからマルチバース(multiverse)となるんだとかって話を覚えている。

まぁ、宇宙の始まりなんて結局は解明できないと思うんだけど、、、つーか、解明するのは何か怖いし。。。解明したら神様が「見ーたーなー」とかって出てきたりして、、、

そしてラストはループ量子重力理論の話。ここで、日本人初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹の発表した「素領域論」が出てくる。何でも時間と空間にはそれ以上分割できない最小の領域(素領域)があるんだという話。物質の最小単位である原子のように、時間や空間にもそういったものがあると。つまり時間は連続的に流れているのではなくて、パラパラ漫画のようにコマ送りだと。。。あれ?これって『涼宮ハルヒの憂鬱』の”みくる理論”では???(汗)

ま、それはさておき、徐々に忘れられていったこの「素領域論」が、ループ量子重力理論の研究によって再びホットになってるとか。このループ量子重力理論が完成すれば、一般相対性理論量子論を融合した”究極の理論”となるかもしれない、ものすごい理論らしい。ちなみにループ量子重力理論によると空間の最小単位は、プランク長さ(10の-33乗cm)を3乗した「プランク体積」で、時間の最小単位はプランク時間(10の-43乗秒程度)だという。まぁ、とてつもなく小さいけど、最小に限度があるということらしい。まさか、みくる理論が本命候補にあがってくるとは思わなかった。

で、最後はこのループ量子重力理論を研究する一人、リー・スモーリン博士のインタビューが出ていたが、うーん、何か物理学者って感じのオッサンだ。いい感じの白髪混じりの不精髭といい感じのボサボサ頭だった。ちなみにループ量子重力理論では時間のとらえ方は一つではなく、研究者ごとにとらえ方があるという。スモーリン博士自身は、時間は相対的でありながら同時に本質的なものであって、幻影や創発的なものではないという考え方らしい。


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