zakky's report

ネタバレ上等ブログ

 

夜は短し歩けよ乙女


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読書メーター - あなたの読書量をグラフで記録・管理』で2009年上半期にもっとも読まれたとかって記事になっててちょっと読んでみた。

「命短し恋せよ乙女」から捩ったタイトルがとてもキャッチー(死語かな?汗)で、後述するがネーミングセンスが個人的にはすごくヒットした作品。

京都が舞台で、主人公が京大生、そしてちょっと風変わりなストーリーということで、万城目学氏の『鴨川ホルモー』と比較されることが多いこの作品。

ちなみに両方の作品が選考対象となった2007年本屋大賞では、『夜は短し歩けよ乙女』が第2位、『鴨川ホルモー』が第6位という結果。また、『夜は短し歩けよ乙女』は第20回山本周五郎賞を受賞し、第137回直木賞候補にもノミネートされているが、『鴨川ホルモー』は意外なことに大きな受賞はないらしい。まぁ、こういった結果と作品の優劣は関係なく、どっちも最上級の娯楽作品だと思うが、、、




(「BOOK」データベースより)
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。====

主人公は冴えない「私」とその彼が恋する「黒髪の乙女」の2人の京大生。どちらも名前が出てこないので、ここでは「私」と「乙女」とする。

本作品は全部で4編で構成され、春の夜の飲み歩き、夏の古本市、秋の学園祭、冬の流行風邪騒動といった四季折々のイベントが描かれている。

基本的な流れとしては、毎回「乙女」が奇妙な出来事に巻き込まれ、彼女を追う「私」もまたその出来事に巻き込まれていくという展開。このお決まりの展開を二人のノスタルジー溢れる古風な語りで追っていくことになる。全体的に少し長めなので、この独特の文体に耐えられない人は最後まで読めないかも。。。

ただ自分の場合はこの語り口がすごくヒットして、特に冒頭の「乙女」の姉が彼女におともだちパンチを授ける際のセリフ「~略~ けれどもこの世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です。~略~」で完全にやられた。

さて、行く先々で巻き起こる騒動だが「乙女」の方はその騒動を純粋に楽しんでいる。一方の「私」は「乙女」のためにボロボロになりながら巻き込まれる。まぁ、思いっきりネタバレしちゃうと最後はこの苦労が報われ、見事彼女との恋が成就するワケだが。

ちなみに本作品は「私」と「乙女」の二人が交互で語っていくのだが、ところどころの口調から判断すると、これは二人が結ばれてから後日談として語っているように思える。勝手な想像だけど。。。

先にも書いたが少し長くて中だるみしまくりなのだが、個人的にはこの独特の文体も好きだし、あとネーミングセンスがとにかく秀逸。おともだちパンチ、詭弁踊り、偽電気ブランを始めとし、特に第三章「御都合主義者かく語りき」はそのセンスが爆発していて、偏屈王、プリンセス・ダルマ、パンツ総番長、韋駄天コタツ、ごはん原理主義者にパン食連合ビスコ派などなど、、、すばらしい名前が目白押しだ。

またネーミングセンスだけでなく、キャラクター設定もすばらしい。見知らぬ飲み会に潜入してただ酒を飲みまくる羽貫さん、いつも浴衣を着ている自称天狗の樋口さん、秋の学園祭以外はいつも騒動の中心にいる高利貸しの李白さん、意中の女性と再会するまでパンツを履き替えないという無謀な願掛けをしているパンツ総番長(後に成就し元パンツ総番長となる)、学園祭を賑わすゲリラ演劇「偏屈王」や神出鬼没の韋駄天コタツを追いかける学園祭事務局長といった面々。中には存在意義が不明な人物もいるが、それを補って余りある秀逸さがある。(というか自分が気づいてないだけで、ちゃんと意味があるのかもしれないが。。。) ちなみに羽貫さんと樋口さんはどことなく『めぞん一刻
』の朱美さんと四谷さんとダブる感じがする。

それからこれもネーミングセンスだが、「なるべく彼女の目にとまる作戦」をナカメ作戦と呼ぶのも気に入った。このナカメ作戦で外堀を埋めつつ、最後は夢と現実がごちゃ混ぜになったよく分からん展開で二人は結ばれる。この最後だけは本当によく分からなかったが、そもそも樋口式飛行術自体がよく分からん技だし、細かいコト言ったら、全体的によく分からんコトだらけなので、まぁ深くは考えないことにした。ハッピーエンドだし。

ちなみに第二章「深海魚たち」で「乙女」が探していた絵本『ラ・タ・タ・タム』は実在する本で、現在は入手困難らしい。



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