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笑って合格する!「中学受験」必勝法

四谷大塚桜蔭特別コースを受け持つカリスマ国語講師の本。

中学受験が空前のブームとなった今、その対策本も多数存在し、実に千差万別だ。本来受験者一人一人の特徴や個性から決して画一的にできないはずの中学受験対策だが、一部の成功例がすべてに適用できるかのように語られ、噂や又聞きが一人歩きしている感もある。

そんな中、本書は極端な例は出さず、賭けのようなこともせずに、平均的なごく普通の受験生に適用できる中学受験への挑み方を懇切丁寧に説明している良書だ。それは著者が長年に渡って積み重ねてきた経験と、中学受験全体を俯瞰した上で導き出した堅実理論によるものだろう。

そして一番の肝は受験志望校選び。御三家だけが受験校じゃない。もちろん御三家には御三家の良さがあり、それを否定するわけじゃないけど、それ以外の学校にもいいところがたくさんある。見栄とプライドとエゴだけで難関校を選ぶのではなく、本当にその子にあった学校を選び、納得して受験すれば、それが笑って合格する受験なんだ、ということ。塾講師、しかも難関校対策特別コースを担当している講師とは思えない、この考え方。本当にすばらしいと思った。

笑って合格する!「中学受験」必勝法
南雲 ゆりか
ダイヤモンド社
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(「BOOK」データベースより)
いつ、何を、どれだけやれば、志望校に受かるのか?塾選び、入試のしくみ、受験プランの立て方、効率的な勉強法まで「中学受験で知りたいこと」がすべてわかります。

さて、この本、すごく良書なんだけど、その堅実さ故にインパクトが薄く、即効性もなさそう。だが逆にこれができれば相当強くなりそうだ。ただし、小学4年生開始時(実学年は小学3年生の2月)から徹底してこの堅実策を積んでいかないと間に合わなさそうだ。従って子どもが小学6年生になってから慌てて本書を読んでも、えぇ~?ってなるんじゃないかと思うし、別の方式でやってきた家庭が取り組もうとしても物足りなさや不安を感じて逆効果になってしまうかも。

例えば、演繹力をつけるとか、間違いは消さずに赤で直すとか、テストの結果に一喜一憂しないとか、ちょっと考えれば分かるようなことも書いてあるが、結局受験に近道も鉄板もなく、こういった当たり前のことを当たり前にこなす堅実な強さが一番の武器になるのかなと思った。

ちなみに現役塾講師の本ということだけあって、基本的には塾万歳本で、塾なしでは中堅校止まりとまで言い切っている。ただ、本書の内容を実践するだけなら塾なしでもできそうな感じはした。まぁ、親が大変なんだけど、、、

著者によると勉強ができる子どもは学力以前に集中力、忍耐力、根性が備わっているという。「集中力」はただ単に集中力があるってだけじゃなく、集中力がMAXになるまでのスピードが速いのだという。「忍耐力」は難問に食らいつく粘り強さ、さらに「根性」は中位生と上位生の差に如実に表れるという。学力ももちろんそうだけど、これらの能力も一朝一夕で身につくものじゃない。やはりそういった準備も考えると、子どもはともかく親は早くから受験への心構えを持っておくべきだと思った。

国語担当講師ということで、国語の勉強法が具体的に出ていた。自分は国語が苦手だったので、こういう考え方は全く持ってなかった。なるほど~、と思った。

国語に関しては他にもいろいろ具体例が出ていた。例えば、国語が苦手で読書もしたがらない子どもにオススメだったのが、ちびまる子ちゃんの満点ゲットシリーズの漢字辞典(1)(2)(3)ことわざ教室続ことわざ教室を使ってマンガを突破口にして語彙力をつけ、そこから読書への興味を引き出すという作戦。これは確かに有効かも。

あとは受験が近づいてきたら本番服を決め、模試もその本番服で挑むとか、受験会場によっては筆箱をしまうように言われる会場もあるので、筆記具を輪ゴムでまとめる技とか、それなりに具体的な例も出ていた。受験生なら当たり前のことなのかな???

あと、早い受験番号をもらうために出願日早朝に行く人がいるがこれは無意味と切り捨ててた。たしか、この間読んだ『この私が合格させる!―中学受験マザーズの超リアル奮戦記』は思いっきり早朝に行ってなかったっけ???

あ、それから具体例で思い出したのは、友達に抜かれて落ち込んでいる子への対処法やなぜ勉強するのかを聞かれたときの対処法なんかも一見の価値ありでした。

さて、著者によると中学受験で一番辛い時期は小学6年生の10月の終わりから12月に入る頃だという。この時期まで順調にきた受験生でも、周りも頑張ってるから相対的な順位が上がらなかったり、ちょっとしたミスに気を取られりして、無用な不安をかきたてられるらしい。肉体的な疲労があるなら勇気を持って1日や2日は休んだ方がいいとのこと。まぁ、これができないからツライんだけど、この辺は親が冷静にならんといかんのかな。

そんな著者が最後に締めくくっていたのは、受験本番に挑む生徒への熱い励ましの言葉だった。受験は幸せになるためにするもの。合格できたらいいけど、もし不合格だったらそりゃ悔しいし悲しい。けど不幸になるワケじゃない。第一志望校に合格できても不合格でも幸せになれるし、幸せにならなきゃいけないんだよと。なんと優しくて力強い励ましなんだろうと思った。