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絶対学力―「9歳の壁」をどう突破していくか?

知る人ぞ知る「どんぐり倶楽部」の糸山泰造氏の教育書。受験対策本ではないので要注意。

本書の対象は低学年の子供を持つ親だが、中学受験の対策本ではなく、あくまでも教育指南書的な位置付け。一応中学受験対策にも言及しているが、基本的には中学受験には反対的な立場をとっている。低年齢化した受験対策への警鐘といった意味合いもあり、その過激な内容は心構えがないと受け入れられないかも。

特に公文や100マス計算といった反復学習を真っ向から批判していて、そのヒステリックな批判っぷりには正直びびった。

やってはいけない家庭学習ワースト10というのもあるが、多くの人がドキッとさせられるんじゃないだろうか。

でも、子供たちに対する愛情は確かで、随所に暖かい表現が見られる。本当に子供たちを第一に考えているんだろうなぁ、と思った。

絶対学力―「9歳の壁」をどう突破していくか?
糸山 泰造
文春ネスコ
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(オンライン書店ビーケーワンより)
基礎学力とは計算を速くしたり、漢字を暗記することではない。教育とは人生を楽しむことができる力を育てることだ。塾の講師に指導方法を教える立場にあったカリスマ講師が提案する「考える力」の育て方とは。

塾や受験といった何かの基準や母体に対する学力(相対学力)ではなく、あらゆる思考の根底にある本当の学力(絶対学力)の養成を提唱している。そのために必要なのは目で見て視覚イメージで考える力でこれを視考力と呼んでいる。ちょっと難しい感じがするが、実は大人はこの視覚イメージによる思考ができており、これと同じことを子どもにも教えよう、そうすればあとは子どもが自力で難局を切り開いていける。そういうことらしい。

そして、この視考力を育てるための良質な問題というのが巻末についているのだが、ちょっと、、、ここだけはワケ分からんかった。うさぎのピョンとビョンとバビョンが出てきて、、、この名前だけで頭がこんがらがる。他にもカタツムリのムーリー君とか、本当にこの設定が必要なのかどうか悩んでしまった。でも絵に描いてイメージするためにあえてそういう設定が必要なのだろう。

さて、著者は大手進学塾で講師を指導する立場にいた経験から、進学塾の考え方にも熟知しており、商業主義の進学塾に批判的な意見を連ねている。言葉使いの過激さもあって、これまで塾様万歳本を読んできた親、それから実際に塾に通わせている親にはズシーンとくるものがありそう。無料テストからの入塾勧誘マニュアルは一見の価値アリ。こんなの公開しちゃって業界団体から抗議が出ないのか心配だけど、、、

また、教育アドバイザーとして子育て論や学校との関係についても触れていて、学校と家庭の住み分けについて提案している。学校は社会性を身につける場、学習すべき内容を知らせてくれる場。家庭は個人指導が適しているしつけと学習内容の理解度を確認する場という住み分けだ。なるほど、、、

そして、成功とは結果に対する評価ではなく、過程に対する評価の言葉であり、何かを達成できなくても、そのためにした努力と工夫に与えられるものだと著者は言っている。当たり前のことだが、誰しもが気づいていないことかもしれない。この考えがあればテストや受験の結果に一喜一憂せずに自信を持って生きていけるのではないだろうか。

確かに言葉は過激だが、それだけ真剣に子供たちのことを考えているってことだ。続編もたくさんあるので、必要と思うところだけ取り入れるというのもアリかもしれない。半端なことすると著者に怒られちゃいそうだけど。