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数学ガール ゲーデルの不完全性定理

待ちに待ったシリーズ第3弾。オイラーフェルマーに続いて取り上げられるのはゲーデル。イニシャルがE、F、Gと続いているのは偶然らしい。著者がブログにそう書いていた。

過去2作のレビューはこちら
 第1作 数学ガール - zakky's report
 第2作 数学ガール/フェルマーの最終定理 - zakky's report

今回のテーマ「ゲーデル不完全性定理」はちょっと難しかった。何度も戻っては読み、戻っては読み、という感じだった。数学的にはそれほど難しくないんだが、形式的体系とそのための定義の嵐がとっつきにくく、読み進めるのに苦労した。

(オンライン書店ビーケーワンより)
数学って、不完全だったの? 「僕」と3人の少女が「不完全性定理」の真実に迫る、すべての数学者に捧ぐ魅惑の数学物語。「数学ガール」シリーズ第3弾。


まず前半の見どころとして「ペアノの公理」が出てくる。普段当たり前のように使っている自然数について、その存在を数学的に定義していく。普段自分たちは1の次は2で、2の次は3で、といった具合に永遠に続いていく自然数を当たり前のように使っているわけだが、実はこのペアノの公理の上に成り立っていることを思い知らされる。そして、これが本作品のテーマ、ゲーデル不完全性定理にまでつながっていくのがスゴイ。

ここを読んで気づくのは、やはりテトラちゃんが自分のような凡人の疑問を代弁してくれているということ。これは前作までと変わっていない。この非常に的確な疑問に主人公やミルカさんが答えていくことで、読者の理解が深まる形になっている。特に数学的帰納法に関する説明についてドミノ倒しを例に説明したり、動的に見えて実は静的で、論理の力で集合全体を一気に捕まえていると説明したりする辺りは一般人にも本質を理解しやすく、さすがだなぁと思った。

まぁ、前半は比較的簡単な話題ばかりだった。中盤の「数学を数学する」という辺りが最初の難所か。ここで論理式の意味を考えない、つまり真偽値を使わない構文論的方法を駆使して形式的体系(ここでは仮に「H」と呼ぶ)を作っていく話が展開。これがすげー難しい。意味を考えるなと言われても、ついつい考えてしまい余計にややこしくなる。見るなと言われるとついつい見てしまう感じか。違うか。。。 それでもミルカさんの説明に沿って順々に理解していくと、論理式、公理、推論規則の定義から定理の証明までがこの形式的体系Hによってきちんと説明され、数学を数学したことを実感できるからすごい。

そして、イプシロン・デルタ、対角線論法を何とか読み進めていくと、その後はまた少し簡単な話題に。というか、この辺はミルカさんとの遊園地デートとか、ストーリーの方に気を取られた。ソフトクリーム間接キスとか高所恐怖症とか、この遊園地デートは萌えの宝庫だった。さらにその後に重大発表が。。。どうやらミルカさんは高校卒業後、海外留学するらしい。

さて、そんなこんなで気づいたら最終章だった。いよいよゲーデル不完全性定理に挑む。ミルカさんの叔母である並倉(ならびくら)博士の私設図書館が舞台となる。この双倉図書館のロゴの図形的な不思議さが目を引いた。アンビグラムというらしい。

この章では、全体を春夏秋冬と新春に分けて、意味の世界と形式の世界を行き来しつつ、難問「ゲーデル不完全性定理」をアタックしていく。

《春》形式的体系Pの定義
《夏》ゲーデル数の定義
《秋》原始再起的関数と原始再起的述語の定義
《冬》《pはxの“形式的証明”である》という術語を原始再起的述語として定義(46個もの定義をただひたすら追っていくのが大変だった)
《新春》八つのステップ《種》《芽》《枝》《葉》《蕾》《梅》《桃》《桜》から構成され、最後の《桜》で決定不能な文を構成し、ゲーデルの第一不完全性定理を証明する。テトラちゃん作成の「《新春》という旅の地図」がすごく分かりやすい。つーか、これを最初に示してくれたらもっと楽に読めたのに。。。構成上無理だとは思うけど。

というわけで、何とか読み終えたんだけど、今作はテトラちゃんの成長ぶりが目を見張った。今まで数学が苦手な女の子ってイメージが強かったが、もう立派な数学娘になっていた。それにバタバタっ娘っていう落ち着きのないイメージもなくなり、特に成績低迷で自己嫌悪に陥る主人公を慰めるシーンでは全く違ったテトラ像が描かれていた。主人公に対する好意はミエミエで、主人公の鈍感さと相まってイタイ二人って感じもあったが。。。

次作では一体どうなるのか。テーマも気になるところが、テトラちゃんとの関係も楽しみだ。個人的にはミルカさんとは結ばれるより、テトラちゃんと結ばれて欲しい。まぁ、ユーリはないな。