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疑心―隠蔽捜査3

今野敏の隠蔽捜査シリーズ第3弾。竜崎の強烈なキャラクターが今作でも爆発。より大きな舞台で大活躍する。

主人公は警察庁官僚の竜崎。警察庁長官官房総務課長というエリートコースを歩んでいた竜崎だったが、第1作で息子の不祥事(ヘロイン吸引)により警視庁大森警察署署長への降格人事を受ける。所轄の署長となってもその真っ直ぐな性格は変わらず、当初は浮いていた竜崎だったが、第2作の立て篭もり事件で自ら前線指揮を執り、所轄の面々と心を通わすことになる。

そして、本作ではアメリカ合衆国大統領来日の警備において、竜崎は方面警備本部長に抜擢される。キャリアとはいえ、所轄の署長が方面本部長に任命されるのは異例中の異例。しかし竜崎の担当する第二方面警備本部にはエアフォースワン(大統領専用機)が着陸する羽田空港があり、その警備を巡ってシークレットサービス先遣隊との軋轢に悩まされることになる。

つい先日、オバマ大統領の初来日が報道されていたが、その裏には警察の多大な苦労があったんだろうと改めて思った。

隠蔽捜査シリーズの過去のレビュー
第1弾 はてなブログ
第2弾 はてなブログ

疑心: 隠蔽捜査3 (新潮文庫)
今野 敏
新潮社 (2012-01-28)
売り上げランキング: 31,307


(オンライン書店ビーケーワンより)
キャリアながら息子の不祥事で大森署署長に左遷された竜崎伸也。異例の任命で、米大統領訪日の方面警備本部長になった彼のもとに飛び込んできたのは、大統領専用機の到着する羽田空港でのテロ情報だった…。シリーズ第3作。

主人公の竜崎、本作品でもその偏屈ぶりは健在だ。妻の冴子曰く「唐変木」 そんな唐変木竜崎が署長を務める大森署で、アイドル山咲真美の一日署長イベントが開かれる。このイベント自体は問題なく終わったが、アイドルが来ただけで署員が舞い上がったことに、竜崎は理解できずにいた。唐変木ここにあり。

さて、そんな竜崎は、アメリカ合衆国大統領来日の警備で第二方面警備本部長へと抜擢される。警視総監が本部長となる綜合警備本部の下に設置される方面警備本部。通常は方面本部長が方面警備本部長につき、所轄の署長である竜崎が任命されるのは異例中の異例。

幼なじみで同期入庁の伊丹警視庁刑事部長を通して警視庁の藤本警備部長、落合警備企画課長に確認すると、第二方面本部の野間崎管理官が言い出しっぺということが分かる。実はこの野間崎は前作で竜崎とやり合って、完膚なきまでに叩きのめされたという過去がある。これは謀略か? 疑心にかられる竜崎。

結局、藤本警備部長に諭され、第二方面警備本部長に就任することになった竜崎。そして、本来なら第二方面警備本部長に就くはずだった長谷川第二方面本部長が副本部長となり、その秘書官としてあの野間崎管理官もやってきた。さらに女性キャリアの畠山美奈子が竜崎の秘書官としてやってくる。

タイトスカートが似合ういい女、畠山は、かつて竜崎が警察庁総務課広報室長だったときに、彼の下で研修を受けていた。そして8年ぶりの再会となったワケだが、なぜか竜崎は彼女のことが気になり始める。最初こそ、そんなはずはないと抵抗していた竜崎も、四六時中彼女のことを考え、彼女が他の男性と近づくだけで不愉快になり、夜も眠れないほど嫉妬に狂い始めると、自分が畠山に夢中になっていることに驚きつつも認める。その狂いっぷりは本人も言うようにまるで中学生だ。いや、ある意味中学生以下か? 夜も眠れないって、、、

さて、そんな色ボケ中の竜崎のところにシークレットサービス先遣隊のハックマンがやってくる。第二方面警備本部の管轄である羽田空港の警備に加わりたいということだった。ロサンゼルス留学経験のある畠山がハックマンの通訳を買って出たため、また嫉妬のタネが増えてしまった竜崎。そうこうしているうちにハックマンは空港の監視カメラの記録から不審人物を見つけ出す。その不審人物は1日おきに服装を変え、合計3回ビデオに写っていた。すぐさま羽田空港の閉鎖を要求するハックマン。

竜崎もさすがに空港閉鎖の要求を呑むことはできず、総合警備本部に掛け合うようにハックマンに言う。藤本警備部長から警察庁を通し、外務省、国土交通省にも根回ししたものの結局空港閉鎖はできないという結論に。納得いかずに騒ぎ散らすハックマンを再び押し付けられた竜崎は、畠山とハックマンの両方の問題を抱えることに。

そういえば『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』でもレインボーブリッジを封鎖するのにえらい苦労してたのを思い出した。

さて、方面警備本部長という重責よりも畠山のことの方が大きな問題となりつつある竜崎だったが、なんと禅の公案「婆子焼庵」でこれを解決する。つーか、これで立ち直れるのはさすが竜崎。ちなみに恋の関係は諦め、仕事の関係を持つことに頭を切り替えるという、諦めの境地のような解決方法だ。さすが原理原則を重んじる変人なだけある。伊丹もそれで立ち直ったのかと驚いていた。

恋の悩みから解放された竜崎は自信を取り戻して仕事に専念する。ハックマンの執拗な要求にも自らの責任で大統領を脅かすテロ犯を拘束し、大統領に危険を及ぼさないと宣言する竜崎。勢いよく啖呵を切ったはいいが、何の手掛かりもなしに犯人を見つけ出せるだろうかという周囲の不安をよそに、なぜか竜崎は楽観視している。

ここで今や竜崎の懐刀ともいえる大森署の戸高刑事がまたまた大活躍。方面警備本部の特命班に入った戸高は管内で起きた大規模な交通事故の後処理を手伝っていた。この事故の最初の原因となった大型トラックの運転手が行方をくらましており、戸高がそれを追っていた。

ハックマンの見つけた不審人物と戸高が追っていた人物が一致した時、全てがつながった。1日おきに空港に現れていたのはトラックの運転手として、1日おきに空港に出入りしていたからで、大掛かりな空港の捜索でも不審点が見つからなかったのは、この人物が空港のターミナルではなく、整備工場でテロを画策していたからだった。そしてこの情報を元に、警視庁の各部が一斉に動き出し、犯人を確保。それにしても犯人の名前が小島義雄って、、、あのオッパッピー芸人と同姓同名。。。

テロを未然に防ぎ、大統領の来日は無事全ての日程を終えることができた。あれほど騒いでいたハックマンも最後は竜崎を認め、友情を確認して大森署を後にしていった。それから竜崎がずっと疑っていた長谷川第二方面本部長は、本当に竜崎を評価してるように見えたがどうなんだろう。野間崎管理官もよく分からないところがある。前回はあれだけやられたのに、普通に接していた。竜崎の成功に悔しげな描写もないままだったし、この辺がよく分からなかった。

そして、今回のヒロイン畠山も第二方面警備本部の解散と共に大森署を去ることに。最後に畠山が竜崎のことをアイヌ語で「エオリパク」と言う。作中で種明かししないで欲しかった。さすが優秀なキャリアだ。当たり前の言葉だった。

最後はやはり妻の冴子だ。一連の色恋沙汰を見透かしたような言葉にさすがの竜崎もタジタジ。やはり竜崎の奥さんは冴子にしか務まらないんでは?と思った。

いやぁ、今回も十分楽しめた。このシリーズは2年に1回ペースで出ているようなので、次は再来年か??? 早く出て欲しい。

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