ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

シュガーダーク 埋められた闇と少女

涼宮ハルヒの憂鬱』以来6年ぶりの角川スニーカー大賞受賞作ということで手にしてみた。

とにかく暗い、、、そしてファンタジーっぽい、ちょっと苦手な分野だなぁ。。。というのが第1印象。実際読んでみたらハルヒで受けたような衝撃はなく、正直、これがスニーカー大賞?と思ってしまった。

涼宮ハルヒの消失』で完成しきったハルヒとデビューしたての作品を正面から比較してはいけないと思いつつも、角川スニーカー大賞受賞の金帯のせいで、どうしても比べてしまう。

ただ、バッドエンドを彷彿させる冒頭とハッピーエンドの締めくくりのコントラストは見事。


(「BOOK」データベースより)
えん罪により逮捕された少年ムオルは、人里離れた共同霊園に送られ墓穴を掘る毎日を送っていた。そんなある夜、自らを墓守りと名乗る少女メリアと出逢う。彼女に惹かれていくムオル。だが謎の子供カラスから、ムオルが掘っている墓穴は、人類の天敵・死なずの怪物“ザ・ダーク”を埋葬するものだと聞かされる!混乱するムオルは、さらにダークに殺されるメリアを目撃してしまい―!?第14回スニーカー大賞大賞受賞。

舞台は謎の共同墓地。ここに主人公ムオルが囚人としてやってきて、この墓地の墓守として暮らしているヒロインのメリアと出会うことでストーリーが進む。

ヒロインのメリアは暗く、特に前半は人間味が全く感じられない。中盤から徐々に人間味を帯びてきて、最後は普通の女の子になってたり、、、この変化がよく分からなかったが、それまで外の世界を知らなかった少女が、ムオルと出会い、外の世界の話、そして、ムオルへの恋心から変わっていったのだろうか? だとしたら、もう少しその辺にもクローズアップして欲しかった。

全体はHole:1からHole:3の三部構成となっている。
ここからは章立てでざっとストーリーを追っておく。
なので、ネタバレ注意!





Hole:1 GRAVE DIGGER
冤罪で強制労働を科された主人公のムオルは謎の共同墓地の墓穴掘りをすることに。そこで無垢の美少女メリアやカラスと名乗る謎の少年(少女???)と出会う。

ヒロインのメリアはこの地区から出たことがないらしく、どこか人間味が感じられない。そして、この共同墓地は長年人間の天敵として恐れられていた悪魔、ザ・ダークを埋めているいわくつきの場所であることが発覚する。

ここまでは低調で正直面白さを全く感じられなかった。全体的に暗くて、メリアもなんか暗いし、、、

Hole:2 GRAVE KEEPER
と、思ったら、ストーリーがいきなり進む。なんかメリアの水浴びとかの萌え要素も突発的に出てきた。

そのメリア、一体何者なんだ? ものすごく細い体つきなのに、それに矛盾するほどの柔らかそうな身体らしい。あ、水浴びシーンは挿絵もありました。。。謎の脈動する黒い塊を食べたり、ザ・ダークと戦ってズタズタに切り裂かれても元に戻るし、、、 って、あれ?人間じゃないのか??? メリアもザ・ダークなのか? と、ちょっと混乱。

謎が多すぎるメリアだが、ムオルへの態度が徐々に変わってくる。リンゴより真っ赤な顔でムオルに「あなたの友達になります」ってところが最大の萌え要素か。これまでの無愛想とはすごくギャップがあり、このギャップ萌えが狙いだったのだろうか?

ムオルとメリアの距離が近づくが、それに反して悲しい事実が明らかになる。しなずの怪物、ザ・ダークに対抗する唯一の手段が、墓守であるメリアがただ一方的にやられ、ザ・ダークが止まる(死ぬのではない)のを待つという墓守の再生能力に頼った消極的手法だった。かわいそうなのは墓守は再生はするが、痛みはあるということ。

その苦しみに耐えられず先代のマリアは自ら死を選らんでしまったという。ここでカラスが実は先代墓守のマリアではないかと思った。(真相は過去の歴代の墓守の人格が合わさった存在で、マリアもその中に含まれている。メリア曰く風貌はマリアだが、喋り方は違うらしい。)

Hole:3 GRAVE ROBBER
バッドエンドムードが高まりつつ最終章に突入。ここでムオルがメリアを救いつつ、自らも囚人からの脱出を計る。その手段はメリアの墓守の能力をムオルが奪うという、よく分からん方法。墓守は唯一人しかなれないはずなのに半分ずつ能力を分け合うのは可能なのか? でも、それじゃ再生能力とか半減しそうで、命にかかわりそうな。。。

冒頭のプロローグでムオルがメリアを殺したと思われる表現があったが、それがこのHole:3でネタばらしされている。この辺はまぁ、うまくまとまってるな、と思った。

ただ、時系列を前後させる手法が取り入れられていたが、ただでさえ展開が分かりにくいのに、その必要性があったのかは疑問。混乱の元となっているだけのような。。。


というわけで全体的にストーリーの起伏が少なく、最後に一気に逆転する展開。特にHole:1は低調な話が続いてちょっと苦痛だった。一気に読めればもう少し楽しめたかもしれないが、忙しくてちょっとずつしか読めなかったのが敗因かも。

あとがきによると、一応続巻も検討中だとか。どういう話になるのか興味はある。カラスによると、共同墓地は他にもあるらしいので、そこで苦しんでいる墓守を助ける冒険モノ? もしくはムオルとメリアのラブストーリーもの? ライバル出現で三角関係(もちろん男1女2)になったり、、、これはこれでメリアの反応とか面白そうだ。

ちなみに雑誌『the Sneaker (ザ・スニーカー) 2010年2月号』に本作品が登場し、新井円侍氏書き下ろしの短編も掲載

■過去のスニーカー大賞受賞作
◆第2回大賞受賞

◆第3回大賞受賞

ラグナロク―黒き獣 (角川スニーカー文庫)
安井 健太郎
角川書店
売り上げランキング: 439,990

◆第6回大賞受賞

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店
売り上げランキング: 83,689