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ドラゴン・ティアーズ 龍涙

毎度お馴染み、石田衣良池袋ウエストゲートパークシリーズ第9弾。

ちょっとマンネリ化してきた感じもするが、毎回時事ネタを分かりやすく書いてくれるから飽きずに読める。

シリーズの過去のレビューはこちら
第7弾 非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8 - zakky's report (試験中)
第8弾 Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7 - zakky's report (試験中)


今回は詐欺、出会い系売春、非正規雇用のさらに下層の話など、様々な時事問題をネタに楽しませてくれる。それにしても石田衣良はこういった時事ネタをエンタメ小説にするのがうまい。



(「BOOK」データベースより)
茨城の奴隷工場から中国人少女が脱走した。250人の研修生の強制送還まで、タイムリミットは一週間。捜索を頼まれたマコトは、チャイナタウンの裏組織“東龍”に近づく。

1.キャッチャー・オン・ザ・目白通り
お姉系タレントが率いる美容関係の詐欺会社の話。目白駅周辺で手当たり次第に道行く女性に声をかけ、最初はモデルの仕事を斡旋すると言ってエステを紹介、言葉巧みに女性を騙し、徐々に高額の美容商品を売りつけていくという悪徳商法。主人公のマコトと池袋のガキの王タカシがキャッチとして潜入。お姉系タレントのブラッド宮本のキャラは実は演技で、詐欺会社では思いっきりマッチョキャラ。潜入して撮影した暴力映像をYouTubeなどの動画コミュニティサイトを使って告発するのは、今風で面白かった。

2.家なき者のパレード
日雇労働被保険者手帳(通称、あぶれ手帳)を使った失業保険詐欺の話。城用建設が呼び寄せた三人組に怯えるホームレス達。ホームレス支援団体の代表ヨウスケに調査を依頼されたマコトはホームレスに聞き込みを開始する。カラクリとしては最初に二~三千円程度の小額を気前よく貸しておき、突然回収モードに切り替え、借金のカタにあぶれ手帳を取り上げるという手口。この手帳に何千円かの印紙を貼ると、失業保険として10万円近くが支払われるという。ネタとしては面白かったが、団体交渉であっさり終わってしまい、オチがちょっと残念。

3.出会い系サンタクロース
「出会い部屋」なる新形態の出会い形サービスを隠れ蓑に管理売春が横行する。アヤという女性が母親の借金のカタにこの出会い部屋で売春を強要される。アヤに恋した冴えない太っちょサラリーマンのヒデトがマコトに助けを求める。最後は1つ前の話と同じで話し合いで解決する。結局ヒデトとアヤがくっつきハッピーエンドでまぁよかった。この出会い部屋って実在すのか?聞いたことないし、あってもすぐ摘発されそうだが、、、

4.ドラゴン・ティアーズ──龍涙
中国の貧しい農村から日本にやってきた研修生の話。非正規の派遣社員よりももっと悲惨でどん底のカースト。自給270円、10日に1度の休み、外出禁止、1日12時間労働と驚きの連続。中国の貧しい農民は月の手取りが千円だとか、、、その貧しい農村から実習生に選ばれた若者は日本での三年間の奴隷生活で生涯収入を得られるという。しかし、親の行木を知って早く金が必要なった女性クーがこの奴隷生活から脱走。クーの失踪が残り250人の研修生の強制国外退去につながる可能性が。。。 この難題を中国人ブローカーのリンから依頼されたマコトは中国人組織東龍のボス揚と取り引きし、クーを連れ戻す。親を見捨てるか、250人の研修生を見捨てるか、この難局を切り抜ける答えを見つけたのはマコトではなく、中国人ブローカーのリンとマコトの母だ。なんと養子縁組というウルトラCで解決。マコトに妹ができてしまった。。。


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