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ネタバレ上等ブログ

プリンセス・トヨトミ


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「このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。・・・」という印象的な文章から始まる歴史浪漫(?)ストーリー。

鴨川ホルモー』『ホルモー六景』の京都、『鹿男あをによし』の奈良に続くのは関西の中心地大阪。

著者は現代日本と歴史事象を違和感なく融合するのがとてもうまく、今回も大阪を舞台に会計検査院という実在の官僚組織を登場させつつ、そこに太閤秀吉にまつわるエピソードをうまくミックスさせている。

ただ、もう少しコンパクトに仕上げてくれるともっと良かった。ちょっと冗長というか細かい設定やエピソードが多くて、読むのがキツイ章もあった。その結果、一番強調すべき部分がぼけてしまった感じがする。ちょっと残念。

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
万城目 学
文藝春秋 (2011-04-08)
売り上げランキング: 36,903

(「BOOK」データベースより)
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。

会計検査院第六局の松平副長、鳥居、旭ゲーンズブール(以下、旭)ら3人の調査官が会計実地検査のために大阪にやってきたのが事の始まり。3人は粛々と検査を終えていくが、1つだけ検査が終わらなかった団体があった。その団体の名は社団法人OJO。一方その頃、大阪の空堀商店街の一角では中学二年生の男子生徒、真田大輔が長年の夢だった女性として生きていくことを決心し、突然セーラー服で登校するという騒動を巻き起こしていた。

この全く関係なさげな2つのストーリーが並行して進んでいくが、社団法人OJOの代表が真田大輔の父、幸一であることが発覚し、2つのストーリーは徐々に1つの話へとまとまっていくことに。ちなみに会計検査院というのは国税の使途をチェックする機関。その特性上、三権分立(司法・立法・行政)から独立している。

3人のうち唯一大阪滞在を延長した松平が、いよいよ社団法人OJOの実地検査に踏み込むことに。場所は日本の国会議事堂に模した大阪国の国会議事堂だ。なんと大阪城の真下(つまり地下)に国会議事堂そっくりの建物が存在するというから驚きだ。ここで松平は大阪国総理大臣である真田幸一から大阪国に関する様々なことを説明される。今から約400年前、大坂夏の陣で豊臣家が滅亡した際、命を危ぶまれていた秀吉の血を引く子どもを大阪の庶民が匿ったことから大阪国はスタートする。大阪の男のみで構成される大阪国。250年に及ぶ徳川幕府の統治下では表舞台に出てくることは一切なく、父から息子そして孫へとその使命を粛々と受け継いで豊臣の血筋を守り抜いてきた。そして機が熟す。徳川幕府から新政府に政権が移った混乱に乗じて突如として姿を現した大阪国は、当時の太政官政府と条約を締結し、日本国から正式にその存在を認められることになる。そして現在もその条約を根拠に毎年5億円の補助金が国から出ているという。。。 そして現在の大阪国はこの補助金を使って、複雑なシステムを構築し、豊臣の血を引く王女を守っているという。堅物で「鬼の松平」という異名を持つ松平には、にわかに信じ難い話だった。

一旦、大阪府庁に戻った松平は東京に帰った鳥居、旭を呼び戻す。ところが松平の元にやってきたのは旭のみ。鳥居は書類仕事が滞っているため出発が遅れたという。法令に詳しい旭によれば、松平の入手した情報だけでは法令上、大阪国の存在を否定するのは困難だという。旭の説明がちょっと長くて難しかったので理解しきれなかったが、どうやら明治初期の混乱期は官報等が残っていないものも多く、だからといって否定はできない、、、みたいなそんな論理だったかと。この時点で松平がどういう決断を下すのかは不明だったが、この後、不測の事態が勃発。

遅れて大阪に到着した鳥居は、なぜか真田大輔と橋場茶子らの喧嘩に巻き込まれ、警察に連行されてしまう。様々な誤解や尾ひれ的な何かが介在して、”会計検査院の鳥居が橋場茶子を警察に拘束させた”という話に捻じ曲がってしまう。実は大阪国が守っている王女とは橋場茶子であり、大阪国はこれを会計検査院による宣戦布告と解釈する。そして、大阪国総理大臣の真田幸一は大阪国民の召集を発令し、会計検査院との対決を決意する。

この大阪国召集システムが面白い。総理大臣が召集を発令するとまず大阪城が真っ赤にライトアップされる。そしてこれを合図に大阪国民、つまりは大阪の男のみの120万人が各自与えられた役割を黙々とこなしていく。ある者は目印になるひょうたん(豊臣秀吉の旗印)を決められた場所に起き、その目印を見た別の者も決められた役割をこなしていく。誰かが大阪城のライトアップに気づかなかったり、気づいても役割を果たさなかったしても、二重三重に張り巡らされた目印が大阪中に配置されるため、全大阪国民への召集の合図として機能するようになっていた。ちなみに大阪の男が全員大阪国の存在を知っているかというとそうではなく、父親が自分の死期が近づいたときに息子へと伝えることになっているという。何か微妙な設定、、、

翌日の夕方、大阪城に集まった120万人の大阪国民が見守る中、大阪国総理大臣真田幸一と会計検査院松平元の公開討論が始まる。松平はどう判断したのか??? どうやら鳥居の誤解もあって、対決モードで挑むらしい。真田や普段は弁護士をしているという千野の説得もむなしく、松平は頑として意思を変えない。 と思ったら、なんかよく分からんうちに松平は意見を180度転換。大阪国のことは広言しないし、そもそも自分は何も見なかった。従って年間5億の補助金についてもこれ以上追求することはない、、、と。 あれれ、ハッピーエンドっすか? 正直、この松平の心の動きがよく分からなかった。読み落としたのかもしれないが、もう少し、分かりやすくしてほしかった。

実はこの物語は非常にややこしく、大阪国にまつわる話以外にも、性同一性障害や学校内のイジメ、暴力団の存在など、シリアスなテーマも扱っている。この辺がちょっと捉えどころがなくてもったいない。こういった周辺エピソードをもう少し整理して簡潔にした方がボリュームも抑えられてよかったんじゃないかと。

ちなみに大阪国発祥のエピソードによると、茶々(秀吉の側室)の血筋を守るために寧々(秀吉の正室)が動いたという。NHK大河『功名が辻』で浅野ゆう子(寧々)と永作博美(茶々)が激しく対立していた記憶があるので、これは万城目さん独特の暖かい解釈なのかと思ったが、どうやら近年の研究では寧々と茶々はむしろ協調していた可能性が高いとか。。。

さて、大阪中の男どもが大阪国だとか王女を守るぞー!とか大騒ぎをしている間、大阪の女性陣はどうしているのか? なんと全てを知った上で知らんぷりをしているんだという。男たちは知られていない、妻には知られずにうまくやっている、と思っているワケだが、そこは女性の方が一枚も二枚も上手。大坂夏の陣での豊臣家滅亡から400年余り、大阪では男どもが大騒ぎをしている裏で女性陣が知らん振りを決め込んでいるという関係が続いてきたという。

なんか大阪の街の雰囲気や大阪の人達のなんでも楽しむ気質が、実は大阪国によるものなのでは?と思ってしまった。本当に大阪城の下には国会議事堂があったりして。。。


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