ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

隣の家の少女

上野駅構内の書店で「最悪な事が起こります」みたいなフレーズの宣伝POPに気になって手にしてしまった本。。。 うーむ、確かに最悪。なんとも言えない不快さだ。

でもこれは評価が分かれる作品だと思う。否定するのは簡単だが、本作品は単なる鬼畜作品ではなく完成度もかなり高いと思う。だからこそ、一部のファンには絶大な人気を誇るのだろう。

確かに最悪の結末なんだけど小説だからこそ実現できることあるわけだし、、、 あ、でもこれインディアナ州で起きた事件がモチーフなんだっけ。。。(汗)

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)
ジャック ケッチャム
扶桑社
売り上げランキング: 8,074


(「BOOK」データベースより)
1958年の夏。当時、12歳のわたし(デイヴィッド)は、隣の家に引っ越して来た美しい少女メグと出会い、一瞬にして、心を奪われる。メグと妹のスーザンは両親を交通事故で亡くし、隣のルース・チャンドラーに引き取られて来たのだった。隣家の少女に心躍らせるわたしはある日、ルースが姉妹を折檻している場面に出会いショックを受けるが、ただ傍観しているだけだった。ルースの虐待は日に日にひどくなり、やがてメグは地下室に監禁されさらに残酷な暴行を―。キングが絶賛する伝説の名作。

一部マニアには圧倒的人気を誇り、あのホラー小説の巨匠スティーブン・キング氏も絶賛しているというジャック・ケッチャム

主人公デヴィットの回想により物語が進行していく。

舞台は1950年代のアメリカ。のどかな田舎の小川でデヴィット少年がザリガニ取りをしている。そこに隣家にやってきた美しい少女メグが現れる。なんとも微笑ましいシーンだ。まるで『赤毛のアン』や『トム・ソーヤーの冒険』を髣髴するような、、、そう、日曜夜にやっていた世界名作劇場の一コマのようなシーンなんだ。

両親の事故死によってチャンドラー家に預けられたメグと妹のスーザン。両親の事故は不幸だが、今まで会ったことのないような美しい少女が隣の家に越してきてデヴィットは浮かれ気分。小川での出会いから、何度か会話を重ねて、徐々に親密になっていく二人。ここまでは普通の淡い青春ストーリーの展開。

しかし、徐々に不穏な空気が流れ始める。チャンドラー家の切り盛りしているのはルースおばさん。(夫は離婚したんだか死別したんだか忘れたがいない)ルースはデヴィットの母とは少し不仲だが、子供たちにとってはよき理解者。ルースの息子ら3人と共にデヴィットも我が子のように接してもらっている。メグもそんな家に引き取られたんだから全く問題ない。はずだった。。。

ある日のこと、メグはお腹を空かせ、デヴィットからお金を借りてサンドウィッチを食べる。聞けばルースに何も食べさせてもらえないのだと。児童虐待ニュースが当たり前のように流れている今なら、それはもうヤバいっしょ!というサインが出まくりなんだが、子供たちにとっては親の言うことは絶対。しかも1950年代のアメリカ。宗教的にも家庭内では親の言うことは絶対、みたいな考えが根底にあったようだ。

そして虐待は徐々に静かにエスカレートしていく。途中、お祭りの時にメグが警察官に事情を話したが、警察官も家庭での躾の範囲ということで取り合ってくれない。読者としては気づいてやれよ、、、と思ってしまったり、そもそもデヴィットが何とかしてやれ!このフヌケ野郎!とか思ったりし始める頃だ。。。

そんなこんなでいつの間にか後戻りできないレベルへと達する。この「いつの間にか」というのが本当に絶妙に描かれていて、本当にちょっとずつちょっとずつ進行していく。気づいた時にはメグはチャンドラー家の地下室で鎖でつながれ、もうとんでもない状態。エグいです。この時点でルースは理由はよく分からんが精神的にかなり病んでおり、もうただの鬼畜ババァ化している。さらにルースの息子らがこれまた鬼畜っ子となっていて、デヴィットも迂闊には逆らえない状態。

それでもデヴィットはとうとうメグ救出に立ち上がる。夜中にチャンドラー家の地下室に忍び込み、鍵を開けてメグの逃亡を助けようという作戦だ。この忍び込み作戦の描写がものすごいスリリング。真夜中の静寂の中、階段が一段一段軋む音が聞こえてきそうな、心臓のバクバク音も聞こえてきそうな、そんな緊張シーンだ。鍵を開けてくる作戦自体は成功するのだが、メグは妹スーザンを助けようとして逃亡失敗。そして虐待はさらに凄惨を極める。ルースももうメグを殺す気満々だ。

はい、まぁ、、、メチャクチャです。レイプまでいっちゃいます。ってか、下半身に "I FUCK FUCK ME" とかって刺青は彫られるわ、クリトリスは焼かれるわ、頭を壁に叩きつけられるわ、、、もう本当にメチャクチャです。

デヴィットはこれまで虐待を止めるわけでもなく、加担するわけでもなく、ただただ傍観していただけだった。 が、刺青をみんなで一文字ずつ交替で入れよう、という話になり、初めて拒否スタンスを明確にする。さらに途中で見ていられなくなり、助けを求めようと地下室から逃げ出すが、結局ルースらに捕まり、メグと一緒に地下室に閉じ込められてしまう。

デヴィットを閉じ込めたことが仇となり、デヴィットの両親らの働きかけで警察が突入してくるが、時すでに遅し。。。 その少し前にメグはデヴィットに看取られながらひっそりと息絶えたのだ。 理不尽に陵辱の限りをつくされながらも、最後まで弱音を吐かず、気高く、諦めず、そして静かに息を引き取ったメグ。ここはとにかく悲しすぎて泣けてくる。

せめてもの救いはメグが命を賭けて助けたスーザンが助かったこと。 また、最後にデヴィットが反撃してルースを階段から転落させ事故死させる。が、メグはもう帰ってこない。本当に後味の悪いエンディングだ。

インディアナ州での実際の事件がモチーフとなっているらしいが、人間ってここまで残酷なことができるのか?と思ってしまった。 が、よく考えてみれば日本でも似たような事件が起きていたじゃないか。しかもそれは発展途上中の昔の事件でもなければ、閉鎖的な田舎町での事件でもない。1990年前後に東京都で起きた事件だ。あまり詳しくは書きたくないので、ここまでにしとくが。。。

ちなみにジャック・ケッチャムという名前はペンネームで、この名前はイギリスの絞首刑執行人に代々受け継がれている名前だそうだ。


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