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ネタバレ上等ブログ

沈まぬ太陽

とても重く、そしてとても長かった。3時間22分(途中10分休憩)ということで原作を余すところなく描いたのかと思いきや、、、なんと原作も5冊という大作でした。なので全然描ききれてないんじゃないかと。。。 機会があれば原作も読みたいけど、5冊ってのはなぁ。。。

主人公の恩地は労働組合でスト権を行使しようとするなどして会社から煙たがられ、計10年の僻地赴任を強いられるんだけど、小倉寛太郎氏という実在する人がモデルになってるのだとか。

御巣鷹ジャンボ墜落の話は『クライマーズ・ハイ』と合わせて見ると、内と外からの視点でより理解が深まりそう。

クライマーズ・ハイのレビュー
 →クライマーズ・ハイ(映画) - zakky's report
 →クライマーズ・ハイ - zakky's report


沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組) [DVD]
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(「シネマトゥデイ」より)
国民航空の労働組合委員長・恩地(渡辺謙)は職場環境の改善に奔走した結果、海外勤務を命じられてしまう。10年におよぶ孤独な生活に耐え、本社復帰を果たすもジャンボ機墜落事故が起き、救援隊として現地に行った彼はさまざまな悲劇を目の当たりにする。そして、組織の建て直しを図るべく就任した国見新会長(石坂浩二)のもとで、恩地は会社の腐敗と闘うが……。

架空の航空会社、国民航空(NAL)を舞台に繰り広げられる壮大な悲劇。架空と言いつつ、御巣鷹での墜落事故、日本のナショナルフラッグキャリア、NALのロゴがもろパクリってところから、日本航空(JAL)がモデルになってることはすぐに分かる。てか、実際、映画化に対してはJALも抗議したらしい。むしろ知らん振りした方がいいと思うのだが、、、

さて、ストーリーは大きく3つのパートに分かれている。1つが御巣鷹ジャンボ墜落パート、1つが僻地赴任パート、そしてもう一つが会長室パート。

前半は御巣鷹ジャンボ墜落パートと僻地赴任パートが交錯する。一応、御巣鷹ジャンボ墜落パートが現在進行形で、僻地赴任パートについては主人公の恩地元(渡辺謙)による回想シーンという形になっている。

墜落現場から自衛隊ヘリで次々と運ばれる遺体、そして体育館に生前と並べられた棺桶。阪神タイガースの野球帽を抱いて泣いている母親、、、 この辺は『クライマーズ・ハイ』と合わせて見たい。

恩地は僻地赴任から呼び戻されたとはいえ、国内でも不当な扱いを受けており、この事故を機に遺族係を命じられる。

遺族がかけつけた現場で土下座して説明する恩地。しかし、国民航空は加害者ということで情報をシャットアウトされており、ろくな説明もできない。宇津井健さんが演じる遺族の一人のセリフ「一番欲しいのは情報なんですよ!情報!」というのは本当だったんだろうな、、、 確かあの事故って自衛隊への出動要請までの時間とか問題視されてたはず。一番情報を欲していた遺族がどんな思いで待っていたのかと考えると胸が痛くなる。

一方、僻地赴任パートでは労働組合委員長の恩地、副委員長の行天四郎(三浦友和)、労組書記長の八木和夫(香川照之)らを中心とした労働組合と経営陣との労使交渉のシーンから入る。ストライキをちらつかせ交渉をまとめた恩地だったが、そのことが仇となり、懲罰人事を受けることになる。

まず飛ばされたのがパキスタンのカラチ。カラチなんて全く知らなかったが、どうやら首都ではないがパキスタン最大の都市らしい。ちなみに首都はイスラマバード。

最初はカラチへの2年だけで、他の労働組合員の懲罰人事は一切しないという約束だったはずが、イランのテヘラン、ケニアのナイロビと10年も転々とさせられるだけでなく、他の組合員も不当な扱いを受ける。その上、娘は親が左遷されたということでイジメに。。。ひでぇ。

その一方で副委員長だった行天は組合から徐々に遠ざかり、出世街道を歩み始める。行天も最初は恩地を救うために社内を奔走するが、頑なに詫び状を書かない恩地に対し「いつまで青臭いこと言ってるんだ!」と一喝。というか、ずるい自分を誤魔化してるだけだと思うが、、、

そんなこんなで前半が終了。前半は重い話と主人公不遇の話で正直しんどかった。てか後半も似たようなもんだけど。。。 後半の会長室パートでは恩地と行天、元委員長と元副委員長のその後を追う展開。頭が固くて実直な恩地、一方で出世に溺れて会社を食い物にする行天。この二人が見事に対照的に描かれている。

乗客乗員合わせて520名の犠牲者を出した国民航空は、内閣総理大臣からの紹介で関西紡績会長の国見正之(石坂浩二)を代表取締役会長に迎え入れる。ちなみにこの国見のモデルになっているのは元カネボウ会長の伊藤淳二氏。

恩地はこの会長に抜擢され、新しくできた会長室の部長職に就く。恩地が会長と新年早朝から自社の一番機を見送る一方で、常務に昇進していた行天は社長、副社長と芸者遊び。恩地と会長が整備現場を視察する一方で、行天は運輸省クルーザー接待&ジャーナリスト銀座接待。大手航空会社の常務とはいえ、羽振りがよすぎる行天。実は不正をやらかしてたい。元労組書記長の八木に命令し、社内の航空券を横領していたのだ。ま、このしっぺ返しは後で食らうことになるワケだが。

さて、一筋縄ではいかない取締役会で孤軍奮闘する国見会長だが、現場視察をやったりしたことで社員からの信頼は掴めたようだ。恩地がカラチに赴任したときのカラチ支店長だった和光雅継(大杉漣)が社内の問題点を的確に示した報告書を国見に持ち込んだ。これにより国民航空が10年の為替予約で大損していること、ニューヨークのホテル買収で不正があったことなどが発覚してしまい、運輸大臣や内閣がその責任を追及される羽目になる。すると国見を推した内閣総理大臣が手のひらを返し、国見を辞任へと追い込んでしまう。なんてこった、やっと主人公の恩地が報われたというのにしょんぼりだ。国見は会長辞任を前にして、恩地が現地調査したニューヨークホテル買収不正の主犯である八馬忠次取締役(西村雅彦)を解任するのがやっと。

会長室がなくなり、恩地は本人の希望通りに遺族係へと戻ることになった。が、ここで行天がまたもや暴走。恩地が遺族係にいられるのは国見会長がいる間だけで、5月からは再びナイロビへと飛ばされることになる。なんという理不尽か。

しかし八木を使って社内横領していた行天に天罰が! 八木が自殺と引き換えに横領の証拠を東京地検に送りつけ行天は破滅。それでもナイロビ行きが変わらないのは実話が元となっている証拠か。。。どうやらモデルの小倉寛太郎氏もその後アフリカに行ったらしい。。。

この映画を見て、まず思ったのは社内不正云々よりも航空機の安全確保のこと。どんなにコストを払ってでもやらなければいけない航空会社の使命だと思った。そう考えると今の日航は再建のためにコスト削減や整理解雇など、あらゆる手を尽くしているが、本当にそれで大丈夫なんだろうかと。。。世論的には一般株主にも大打撃を与え、社員だけが救われていいのかとか、普通の会社なら潰れてるとか散々言われているが、少し複雑な気持ちだ。格安航空会社(LLC:Low Cost Carrier)との競争もあるが、だからこそナショナルフラッグキャリアとしての意味合い、ポジショニングを考えた方がいいのではないかと、いろいろ考えてしまった。


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