zakky's report

ネタバレ上等ブログ

Newton (ニュートン) 2011年 04月号


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科学雑誌「Newton」を久しぶりに読んだ。特に興味のある特集でもなかったのだが、なぜか読んでしまった。相変わらず理系魂をくすぐってくれるいい雑誌だ。

そういえば、この雑誌と出合ったのは中学生の頃。学校の先生のオススメ雑誌として紹介されたんだが、雑誌といえば200円くらいの週刊漫画雑誌しか買わない自分にはエラく高い印象があった。 今じゃ1冊1,000円なんて当たり前なんだけどね。

■過去のNewtonのレビュー
2009年 05月号 Newton (ニュートン) 2009年 05月号 - zakky's report




Amazon.co.jpより)
「運命」を物理学で考える
未来は決まっているか
協力
二間瀬敏史
ボールの行方も惑星の動きも,私たち各個人の運命さえもすべて決まっていると考える「決定論」。
一方,未来は決まっていないと考える「非決定論」。
物理学からの回答は?

■第1特集  「運命」を物理学で考える  未来は決まっているか
あまり興味がない分野だったが、読んでみるととても楽しめた。
まずはニュートン力学から入る。テニスボールやビリヤードの球の動き、海王星の発見などを題材として、ニュートン力学による決定論を考察する。そして、ここで出てくるのがあの有名な「ラプラスの悪魔」だ。世界のすべてを把握している知性が存在すれば、その知性にとっては不確実なことはない、という考え。

我々人類も含め、全ての物が原子の集合体であり、その原子の動きもまたニュートン力学で説明できるので、世界のすべてを把握できれば、それをパラメータとして未来はすべて計算できるという考えは一見正しいように感じる。現に地球から40億キロという遠くの海王星の発見すら成し遂げている。

しかし、20世紀に入って量子力学の研究が進むにつれ、どうもそうとも言い切れないぞ、という展開になってくる。電子銃から放出した電子が二重スリットを抜けると必ずしもスリットの延長線上に観測されるとは限らない。一重スリットであればその延長線上にしか観測されないのに二重スリットにすると縞模様のような観測結果になってしまう。これはニュートン力学では説明できない。どうも電子は互いに干渉し合っているようにも見え、ミクロの粒子は波の性質をも持ち合わせているとも考えれられるが、観測結果としては一点に決まっており、観測時点では再び粒子の性質に戻っている。

実はこの「観測」というところに厄介な問題が付きまとう。「観測」すなわち物を見るということは対象物に光を当てて、その表面で反射した光を見ることで実現している。ところが、ミクロの粒子は観測のために光を当てると、その光に弾かれてしまうため、たとえどんなに精密な観測を行っても、ミクロの世界の不確かさは完全にはなくせないのだという。

そしてこれまた有名な「シュレーディンガーの猫」が登場。放射性物質とそれから放射される放射線を感知して猫に毒薬を放つ仕掛けを用意して、その中に猫を入れるという思考実験だ。放射線は、放射性物質の原子核が壊れると出てくるものだが、量子力学によれば原子核の状態は観測前には決まらない。原子核が壊れていない状態と壊れている状態のどちらも決まらないということは、そこに直結している猫の生死も決まっていないことになってしまう。しかし、生死の決まっていない猫など現実ではありえない。これは一体どう説明するのかと。結局このシュレーディンガーの猫については、いまだはっきりとした結論が出ていないとのこと。

この量子力学の不確かさについて、一般人には量子力学が不完全のようにも感じられるが、そうではない。現代社会の多くの産物を担っている半導体も量子力学の賜物だという。

この他にも多世界解釈や究極理論候補の超ひも理論などが紹介される。超ひも理論も非決定論的理論だ。

で、この特集の結論としてはこんな感じ。世界は根本的に非決定論的である可能性が高い。ただし、現時点ではマクロのスケールに非決定論的な性質がどれだけ影響をあたえるのかはわからない、とのこと。

■第2特集  「死」と「不死」のサイエンス  なぜ生物には,寿命があるのだろうか?
定期券タイプの細胞死アポビオーシスと回数券タイプの細胞死アポトーシスの二種類があるという。アポトーシスには染色体の末端にあるテロメアが関係している。これは伊坂幸太郎重力ピエロ』でも出てきた話だ。(『重力ピエロ』のレビューはこちら→重力ピエロ<<http://rep.hi-zakky.net/?p=54>>)

東関東巨大地震による福島第一原発の事故が騒がれているが、放射能の何が怖いかというと放射線によるDNAの損傷が何よりも怖い。ただ、実は放射線を浴びなくとも我々のDNAは常に損傷の危険がつきまとい、若干の損傷であれば自力修復が可能だという。しかし放射線を一度に大量に浴びてしまった場合は、DNAが修復不可能なレベルになってしまい、細胞死(アポトーシス)や発ガンという形で生命を脅かすことになるのだろう。

そして、我々人類を含め、生命にはなぜ寿命があるのかという問いについて、よくある回答として、住む場所や食べ物が不足するというのがあるが、実はこれは本質ではないという。傷ついたDNAを残すことで種が絶滅しないように古い個体が必ず死ぬようにプログラムされているというのだ。

■その他の記事
特集以外では「ワームホール」についての記事が一番興味深かった。名古屋大学の阿部文雄准教授が望遠鏡でのワームホールの観測方法を考案したという。記事によると、もしワームホールを望遠鏡で観測したら、ワームホールは宇宙空間に浮かぶ球面に見えるらしい。そして、一方の球面の中にはいると他方の球面の外に出るらしい。なるほど、何となくイメージが掴めた。

それと「太陽系の”名脇役”」と題して、太陽系惑星の衛星や小惑星についてカラー写真やイラストを使って説明していた。この記事もなかなか秀逸。木星の衛星ガニメデや土星の衛星タイタンは水星より大きいという事実や、タイタンの窒素大気の濃さは太陽系屈指の濃度だという。また、土星のリング形状を保つ役割を持っている羊飼い衛星パンドラも興味深い。海王星の衛星トリトンは海王星公転方向に逆行しており、将来は海王星に衝突するか海王星の重力で破壊される運命にあるという。