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セカンド・ラブ


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帯にある”『イニシエーション・ラブ』の衝撃、ふたたび”の言葉はさすがに大げさかと思ったが、それでも素晴らしいミスリードっぷりだった。

今回はどういう騙しが入ってるのか、と用心しながら読んでも見事に騙された。ちょっと設定自体にトリッキー、そして騙し自体もトリッキーだけど、前作の衝撃がハードルを上げてしまっていることを考えたら仕方ないと思う。


『イニシエーション・ラブ』のレビュー イニシエーション・ラブ - zakky's report



セカンド・ラブ
セカンド・ラブ
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乾 くるみ
文藝春秋
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(「BOOK」データベースより)
『イニシエーション・ラブ』の衝撃、ふたたび。1983年元旦、僕は春香と出会う。僕たちは幸せだった。春香とそっくりな女・美奈子が現れるまでは。良家の令嬢・春香と、パブで働く経験豊富な美奈子。うりふたつだが性格や生い立ちが違う二人。美奈子の正体は春香じゃないのか?そして、ほんとに僕が好きなのはどっちなんだろう。

主人公は木工所に勤めるごく普通の工員、里谷正明。会社の先輩紀藤和彦に元旦スキー旅行に誘われ、紀藤の彼女の友達、内田春香と出会う。超美人でおしとやかな大学院生、おまけに良家のお嬢様ということで正明には縁のない人だと思っていたが、ちょっとしたきっかけで二人は付き合うことになる。

交際は順調だったが、ある日、新宿のスナック、シェリールで春香そっくりのホステス美奈子に出会う。最初は他人の空似だと思っていた正明だったが、実は二人は双子で事情があって春香はその事実を知らない、という話を美奈子から聞く。一方で正明は春香そっくりの美奈子を見せて驚かせようという単純な思い付きから紀藤をシェリールに誘ってしまう。思えばこれが失敗の始まりだったのかもしれない。その結果紀藤は美奈子を口説き落とし、美奈子の部屋に泊まったりする仲になる。


※以下、重大ネタバレあり












一通り読み終えて、まずしたことと言えば序章と終章をもう一度読み直すこと。うーん、なるほどよくできている。これは最後の数行まで分からなかった。双子というトリッキーな存在ばかりを意識していたが、まさかこっちにミスリードがあったとは。。。 序章と終章は正明の視点になっているのだが、最後の最後まで見抜けなかった。

双子が出てきた時点で一人二役か二人一役のどちらかのトリックがあるはずだと、そちらにばかり意識が行っていた。結果的に一人二役だったことが判明し、こんなもんかと高をくくっていたところに見事なカウンターアタックが決まった感じ。

春香と美奈子は確かに双子で事情があって生き別れたんだけど、正明が出会ったときは既に美奈子はこの世を去っていた。つまり正明が知っている美奈子は実は春香が演じていたワケなんだが、肝心なのはそこじゃなかった。春香が美奈子であるということは、つまり春香は紀藤とも関係を持っているということになる。その事実を知った正明は春香にどっちを取るのか迫るワケだが見事玉砕。そして絶望して自殺してしまう。

衝撃の最後の4行

そこで自分の過ちに気づく。この時刻、窓ガラスは室内にいる人間にとっては鏡になってしまう。
正明はガラスの外から内に移動した。ガラスを通り抜けた瞬間、春香の表情が変わるのが見えた。
やっぱり「見えて」いるんだ。
ごめんね。ずっと嘘だと思ってた。

序章と終章は正明視点になっていると先に書いたが、ただの正明視点ではなく、正明の幽霊視点というのが最大のトリックだった。この「見えて」いる、というのは、春香は正明に自分は霊が見えるといったことを打ち明けていた部分があるのだが、特に意味のないエピソードだと思っていたところが実は最大の伏線となっていた。見事すぎる。

というワケでイニラブほどの衝撃ではなかったが、違う意味で背筋がゾワワってしたのは確か。イニラブと似たようなタイトルにしたことで、自らハードルを上げておいてしっかり衝撃のラストを出すのは本当にスゴイと思った。

ちなみにサブタイトルの「THE HIGH PRIESTESS」はタロットカードの「女教皇」を意味している。これは乾くるみのタロットカードシリーズというものらしく、例えばイニラブはTHE LOVERS(恋人)で、他に『塔の断章』のTHE TOWER(塔)、『リピート』のWHEEL OF FORTUNE(運命の輪)なんかがあります。

シリーズでストーリーがつながっているワケではないのだが、天童太郎なる人物が共通して登場するのだとか。天童は英語のtend(番をする) 太郎はタロットの英語の発音がタロウということで、乾くるみのタロットシリーズの番人的な位置づけらしい。イニラブでは石丸美弥子の先輩として登場しており、本作品では名前こそ出ないものの美奈子の部屋に引っ越してきた男が風貌的に天童と一致するらしい。

ちょっと『塔の断章』と『リピート』もチェックしといた方がいいかな。

イニシエーション・ラブ (文春文庫)
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