ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

宰領―隠蔽捜査5

今TBSで本作のドラマをやってますが視聴率がイマイチ伸びない。。。やばい。

でもやっぱり隠蔽捜査シリーズは面白いです。

半年遅れでやっと読んだ第5弾。少し柔らかくなった気もするが、竜崎は相変わらずの変人だった。それこそが本シリーズの面白さだな。


隠蔽捜査シリーズの過去のレビュー
 第1弾 隠蔽捜査 - zakky's report
 第2弾 果断―隠蔽捜査2 - zakky's report
 第3弾 疑心―隠蔽捜査3 - zakky's report
 第3.5弾(スピンオフ) 初陣―隠蔽捜査3.5 - zakky's report

宰領: 隠蔽捜査5
宰領: 隠蔽捜査5
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大森署署長・竜崎伸也、今度の相手は「要人誘拐」そして「縄張り」――。大森署管内で国会議員が失踪した。やがて発見された運転手の遺体、犯人と名乗る男からの脅迫電話。舞台は横須賀へ移り、警視庁の“宿敵”神奈川県警との合同捜査を竜崎が指揮することに。県警との確執、迷走する捜査、そして家庭でも予期せぬトラブルが……全ての成否は竜崎の決断が握る! 白熱度沸点の超人気シリーズ最新長篇。

竜崎、相変わらずの安定感

シリーズ第5弾(スピンオフ入れたら6作目)になるが主人公竜崎の変人っぷりは相変わらず。二浪の息子が東大入試直前であっても気の利いたことひとつ言わないし、それについて家族に咎められても、言ったところで頑張るのは息子だし、俺が言わなくても頑張るだろう、という考えだ。

そんな竜崎のところに警視庁刑事部長で同期の伊丹から連絡が入る。元警察庁官僚の3期後輩で議員秘書田切からの依頼で、羽田空港から行方が分からなくなった牛丸議員を内密に探してほしいという話だ。将来入閣間違いなしと言われている牛丸議員だが、過去にも無断で行方をくらまして騒動になってからひょっこり戻ってくるといったことをしており、今回もその可能性もあるからあまり大事にはしたくないというのが田切の依頼だった。

ところがそこは原理原則マンセーの竜崎。彼にかかれば議員の気まぐれもへったくれもなく、そんな融通は全く利かないw 警察官であれば最悪の事態も想定して動くべきだと部下に指示して捜査態勢をきっちり組もうとする。一応マスコミには漏れないように内密には進めようとしてはいたが、田切も伊丹もやれやれといった感じだ。

依頼主が騒ぎ立てるなと言ったのにここまで大事にしてもし事件でも何でもなかったらどうすんの? というのが普通の人の感覚なんだが竜崎にはそんな感覚はなさそうだ。その時の情報と原理原則に従ったまでで間違ったことはしていないし、間違ったことをしていないのに何か言われても自分は気にしない、という考えらしい。

実際、竜崎がこう動けば竜崎が想定したとおりに事が進むのが本シリーズの特徴で、今回も竜崎が想定していた最悪ケースに話が進んでしまう。竜崎さんすげーっすw 迷惑だけどw 何が起きたかというと牛丸議員を乗せていた車が見つかり、中には喉を切られて死亡した運転手のみが見つかり、牛丸議員の行方は分からないまま、という状況だ。

ここまで来れば内密に進める必要もなく、警視庁が中心となって本部が大森署に設置されることになる。ただし捜査本部ではなく指揮本部だ。今回の事件はほぼ誘拐事件と想定され、現在進行中の事案ということで捜査本部ではなく指揮本部となるらしい。もちろん警視庁刑事部長の伊丹がそこの本部長となり、大森署署長の竜崎が副本部長となる。いつものパターンだ。


SITとSAT

今回は誘拐事件が想定されるため犯人との交渉にSIT(特殊犯捜査係)が呼ばれた。SITと聞くとテロリスト対策とかで強行突入するような重武装部隊を想像してしまうが、そちらはSAT(特殊急襲部隊 Special Assult Team)で、SITというのは元々特殊犯捜査係の存在を隠すために Sousa Ikka Tokusyuhan の頭文字から作られた名称らしい。現在は Special Investigation Team という名称が正式名称に使われている。

犯人との直接交渉はSITの下平係長が対応することになる。この人は第2弾『果断―隠蔽捜査〈2〉』でも立て籠もり犯との交渉に呼ばれた際、竜崎から交渉を含めた指揮権を渡されて依頼、竜崎を信頼している。普通は指揮権まで渡さないが、合理主義者の竜崎はその場その場のプロフェッショナルが指揮を取った方が成功確率が高まるという考えらしい。別に丸投げではなく、責任は自分が取る覚悟の上でだ。


神奈川県警横須賀署の前線本部

一向に掴めなかった牛丸議員の足取りだが、犯人からの電話の逆探知から横須賀方面にいることが分かる。どうやら海を渡ったらしい。早速、伊丹が神奈川県警本部の本郷刑事部長と交渉し、横須賀署に前線本部が設置されることになった。そして竜崎がそこに出向くことに。前線本部といえばやはりシリーズ第2弾『果断―隠蔽捜査〈2〉』で置かれた指揮本部と前線本部の体制を思い出す。そこでも指揮本部に伊丹が、前線本部に竜崎が詰めていた。

さて、その神奈川県警といえば警視庁とは犬猿の仲らしい。そんなアウェイに一人で出向くことになった竜崎だが、完全アウェイでも考え方は全く変わらない。本郷刑事部長は警察庁キャリアで竜崎・伊丹の2期下、横須賀署の島村署長もキャリアということで同じ官僚同士で通じ合えるものがなくはない。しかし、神奈川県警捜査一課の板橋課長は地方(「じかた」と読みます)のいわゆるノンキャリ。捜査経験の豊富さでキャリアを軽く見るところがある上、警視庁に対する敵対心は並々ならぬものがあるようだ。

しかし竜崎はそんなものはお構いなし。本郷刑事部長を味方につけて板橋課長との確執をものともしない。その辺はさすが竜崎。人は他人から嫌われたくないと思いがちだが、そういう感情よりも仕事を効率的に進める方が優先されるらしい。その結果、いつもいい方向に進むから羨ましいんだけどね。


竜崎家でも問題が・・・

本シリーズはなぜか事件と並行して竜崎でも様々な問題が発生する。今回は二浪中で東大受験当日の息子の邦彦が高熱を出してしまうというトラブルだ。邦彦は第1弾『隠蔽捜査』ではヘロイン吸引騒動を起こしている。そのせいで(それだけではないが)竜崎は降格処分を受けて、警察庁長官官房総務課長から警視庁大森署署長への降格処分を受けているわけだが。。。

結局こちらは邦彦がなんとか踏ん張るワケだが、ただでさえキツイ判断をしている竜崎を困らせないでほしいw ただ竜崎も言っているが本人がどんなに気をつけてても風邪はひく時はひくものだと。うーん、泣きごとの一つも言わないし竜崎は自分にも決して甘くない。


STSかSITか・・・

誘拐事件は大森から横須賀に渡った際に使用したプレジャーボートから足がつき、犯人の目星がつき、間もなく潜伏場所も突き止める。なんかよく分からんが引きこもりのニートが親を見返すため?だかでやっちゃったとかイミフな話だ。

しかし、そんなことよりも前線本部で指揮を執っている竜崎にはまたまた悩みの種が。それは犯人潜伏場所への突入を神奈川県警STS(特殊犯捜査係 Special Tactical Section)に任せるか警視庁SITに任せるかという話だ。ちなみに警視庁も神奈川県警も捜査一課に所属する特殊犯捜査係だがSIT、STSと呼び方が異なるらしい。多くがSITを呼称として採用しており、神奈川と埼玉がSTS、他に千葉がART(Assault and Rescue Team)、青森がTST(Technical Special Team)、広島がHRT(Hostage Rescue Team)と呼んでいるようだ。

話がそれたが、なぜSITかSTSか悩むのか。同じ特殊犯捜査係だったらコンディションのいい方が対応すればいいじゃん、と思うのが一般人だ。いや、竜崎もその考えだ。誘拐事件で被害者の健康が危険にさらされると言われる事件発生から24時間をとっくに過ぎており、これ以上の時間経過はリスクが伴う。すぐに現場到着可能で土地勘もあるSTSの方が適していると竜崎は考えた。

しかし、伊丹の指示はSITを使えと譲らない。理由は簡単で、SITは警視庁、STSは神奈川県警だからだ。警察組織の縦割り弊害キターってことですw ちなみに先ほど上で書いた第2弾でSITとSATの両方がいた時も、前線本部の竜崎の判断は交渉はSITが対応、突入はSATが対応、という原理原則に従った判断をしたが、伊丹はSITを使わそうとする。なぜならSITは警視庁刑事部所属、SATは警視庁警備部所属、そして伊丹は警視庁刑事部部長だからだ。警視庁の縦割り弊害キターってことですw もうそんなんばっかw

結局、第2弾の時と同じく竜崎がSTSに任せたことで被疑者も被害者も無事に確保できた。STS小牧係長も竜崎の的確な判断力を尊敬し、遅れて到着したSIT下平係長も竜崎の判断を尊重する。さらには今まで煙たがっていた神奈川県警捜査一課の板橋課長まで竜崎さんの下で働いてみたいです!みたいな手のひら返しw すげーぜ、竜崎。


警察組織の縦割り弊害、いい加減にしろwww

一件落着かと思いきや、今度は被疑者の身柄をどちらが確保するかで揉める。伊丹は相変わらず警視庁にしょっぴけと言うし、神奈川県警本部長の厳命を受けた本郷刑事部長も引き下がらない。結局、竜崎が神奈川県警本部長の官舎まで出向いて説明することに。深夜でもお構いなしだ。しかも説得ではなく事後報告とかマジ竜崎さんカッケーっす!

なんか自分は警察庁長官官房総務課長から降格処分を受けてるので、お前なんかこわくねーぞ!みたいなことをやんわりと言ってました。神奈川県警本部長も驚きながらも面白いやつだ覚えておこう、みたいな含みのある反応だった。どうなることやら。

その後、事件の真相が単純なひきニートによるものではなく、牛丸議員と田切秘書が裏で糸を引いていたというイミフな展開を遂げるがはっきりいってどうでもよかった。そんな後付はいらんと思ったが、まぁいいや。




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