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ネタバレ上等ブログ

映画『64‐ロクヨン‐前編/後編』

前編後編に分かれていることで尻込みしてたんだけど、後編公開前日の夜に前編を見て、翌日朝イチで後編を見てきました。

通しで見て思ったのは、これは1本にはまとめられない。前後編に分けるべき映画だということ。

原作未読ですが、どうやら結末は原作とは違うらしい。ということで近々原作を読みたい。

ただ、このロクヨンって横山秀夫のD県警シリーズ4作品の一番最後の作品で、シリーズ物は順番に読みたい几帳面A型気質がつらいところ。(D県警シリーズの前3作はすべて短編集らしい)

64-movie.jp



(シネマトゥデイより)
わずか7日で終わった昭和64年。その年に起きた少女誘拐殺人事件、“ロクヨン”から14年が経過し、未解決のまま時効が近づいていた。そのロクヨンの捜査に携っていた警務部秘書課広報室の広報官・三上義信(佐藤浩市)は、記者クラブとの不和、刑事部と警務部のあつれき、ロクヨンを模倣したような誘拐事件に直面し……。
映画『64−ロクヨン−前編』 - シネマトゥデイ
映画『64−ロクヨン−後編』 - シネマトゥデイ

豪華なキャスト陣

とにかく豪華です。ドラマや映画の主演クラスがゴロゴロいます。

佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、瑛太、坂口健太郎、小澤征悦、三浦友和、窪田正孝、筒井道隆、吉岡秀隆、仲村トオル、緒形直人、柄本佑、永瀬正敏、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、、、

すごすぎでしょw


この中でも特に雨宮美男を演じた永瀬正敏さんが恐ろしい演技でした。すべてを失ってしまった男。。。 まさに何かに取り憑かれているかのような、そんな鬼気迫る演技。

予告編でも「遺族の雨宮さんは昭和64年のたった7日間にまだ取り残されている。」というセリフが出てくるんだけど、これ本当に取り残されてるんです。14年間も時間が止まっている。動けないでいる。その狂人めいた行動に驚愕しました。

やっぱり役者ってすげえわ、と思わされました。


前編は記者と警察の対立がメイン

さすが横山秀夫作品。とにかく分厚くて考えこまれたストーリー。

前後編でメインとなるのは通称ロクヨンと呼ばれる昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件。雨宮美男(永瀬正敏)の娘が誘拐され、身代金2000万円を要求される。犯人の指示通りにスーツケースに入れた身代金を橋から投げ捨てるも、身代金を失い、後日少女は無残な姿で発見された事件だ。

そして14年後、ロクヨンの時効まで残り1年というところで話が動き出す。

前編はロクヨンの事件描写はあるものの、ロクヨンに関してはあまり捜査が進まない。ロクヨンの話が進むのは後編だ。

では前編は何なのかというと、警察とマスコミの対立がメインになっています。

主人公の三上義信(佐藤浩市)、ロクヨン当時は事件の捜査にあたっていた刑事だったが、14年後の現在は県警本部警務部秘書課広報室で広報官となっている。広報官というのは県警からの情報提供を担う役割で、記者クラブとの連携が必要な職務となる。

が、少々問題が生じていて、ロクヨンとは全く関係ない事件で実名発表しない県警と実名発表を要求する記者クラブの間に立たされて三上は窮地に陥っていた。

さらには警察庁長官がロクヨン視察のためにやってくるからその調整をしろとの上からのお達し。三上の上司で県警本部警務部長の赤間(滝藤賢一) がこれまたムカつくんだよねw いや滝藤さんっていうと『半沢直樹』とかの弱々しいイメージがあるんだけど、こういうムカつく役とかもできるんだな。

長官視察の取材をしてもらわなければいけないんだけど、例によって記者クラブとは平行線のままで協力を取り付けられない。

ロクヨン自体の話もちょっと進む。三上は当時の捜査において何かしらの隠蔽があったことを掴む。この隠蔽のために前途ある若者が将来を失い、老害がのうのうと署長となっていたのは胸糞だったなぁ。

さらには三上自身も身内に問題を抱えていて、娘が家出してしまってるんだね。なんか父と似た顔が許せないから整形したいとか何とか、、、うわあ、なんだそりゃあ(;^ω^)



そういったいくつかの問題が並行で走っていて、これどうやって収まりを付けんのかな、というような拡散っぷりでした。


そして前編の最後で三上は腹を括ります。自らの職を賭して、今後は実名発表を基本とすることを記者クラブに宣言。ただし実名で発表するがそれを世に伝えるべきか否かをよく考慮して欲しいと伝える。

誠意を見せた三上に対して記者クラブもまた長官視察の協力で誠意を返す、という丸く収まり系のエンディングとおもいきや!


ここでロクヨン模倣事件が発生。しかも独断で実名発表をした広報室に刑事部は情報をシャットダウンしようとする。

実名なしでの報道協定を要求する刑事部。実名なしでの報道協定なんかありえないという記者側。その間にまたしても立たされる広報室。

という形で後編を迎えることになりましたw


後編はロクヨン真相解明がメイン

前編からの警察vs記者の対立は過激さを増します。ロクヨン模倣事件発生により普段警察施設に陣取っている記者クラブだけでなく、本社からも記者が投入されます。

通常、重大事件の記者発表は捜査一課長がするはずが、出てきたのは捜査二課長。演じるのは柄本佑。キャリアの二課長でまだ若手。これはノンキャリが牛耳っている刑事部によるキャリアイジメか。二課長は捜査情報どころか被害者の名前すら知らない状態で壇上に吊し上げ状態で、記者からは無能呼ばわりで糾弾され、途中白目向いてぶっ倒れてた。これは可哀想すぎる。。。

つーか前編でも思ったけど記者横暴過ぎだろ。横山秀夫先生も元記者ということで記者の描写は結構ホンモノに近いのかな、と思ったりもするが、もしこれが本当ならちょっと引くわ。マスゴミいいかげんにしろや!


さて前編終了間際に発生したロクヨン模倣事件。犯人は佐藤と名乗り、身代金2000万円を要求してきており、そこからロクヨンに似ているのではないかという疑惑が。さらに進むと身代金を入れるスーツケースの指定から、身代金の受け渡し方法まで、関係者しか知り得ないレベルでロクヨンと酷似している。


被害者はスポーツ洋品店を経営する目崎正人(緒形直人) 目崎には二人の娘がいるが誘拐しやすい小学生の次女ではなく、高校生の長女が誘拐された。これはロクヨンと違う点だ。

そしてこのロクヨン模倣事件が衝撃の展開を迎えることに。

ロクヨンと同じ順序で指定される身代金受け渡しルート、前編でチラッと見えた雨宮の指先のマメ、ボッサボサ髪だった雨宮が散髪したこと、不祥事隠蔽に反発して警察を去った幸田が雨宮宅を訪れていたこと、雨宮が目崎の娘と接触していたこと、、、すべてが一つに収束して物語が完結する。

正直、映画広告にかかれているような感動巨編かというとそうでもないんだけど、でも練りに練られた素晴らしい結末だったと思う。


あそこまでいっても逮捕できないとか、正直どうなの?って思った。もう少しうまく誘導すれば自白引き出せそうなんだけどなぁ、って。そしたら三上もあんなことせず、いろいろと丸く収まりそうな、、、それじゃドラマとしてダメなんだろうけど、一番ダメなのは警察組織だな。上の奴らは自らの保身しか考えてないし、キャリアとノンキャリの対立もいびつだし、もう少しちゃんとしようよ。


ロクヨンのモデルとなった事件

このロクヨンにはモデルとなった事件があると言われています。

1987年に群馬県で起きた「功明ちゃん誘拐殺人事件」と呼ばれる結構有名な未解決事件で、2002年に時効が成立しています。

著者の横山秀夫先生は事件当時、群馬県の上毛新聞社にて記者をしていたのでこの事件には詳しいと思われます。

実際、逆探知の不手際などが分かっており、ロクヨン事件との共通点は結構あります。

とはいえ物語はフィクションで、実在の人物や団体などとは関係ないってスタンスなので、「功明ちゃん誘拐殺人事件」の犯人像に迫るものではないです。



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