ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

TUGUMI

美丘を読んでこの作品を思い出し、18年ぶりに読み返してみた。つぐみの激しい性格とは裏腹に情緒的で穏やかな気分になる作品。

(「BOOK」データベースより)

病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った―。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。

 

 

 

病弱でワガママし放題の美少女つぐみ。彼女と過ごした港町でのひと夏を主人公のまりあが振り返る。つぐみが病弱で気性が激しいとか、反対にまりあは穏やかで冷静だとか、そういった登場人物の設定はこの作品の肝ではなく、一番の肝は情景的な部分ではないかと思う。

この作品には何とも言いようのない懐かしい夏の情景が描かれている。それは読み手それぞれが持っている夏の記憶と相まってより儚く美しい情景へと映し出される。祭りやちょっとした事件など、読み手それぞれにも似たような思い出はあるだろうから、それらとうまくシンクロして、その世界に入り込んだ気分にさせられる。

で、18年前はどう思ったのか。。。つぐみの性格しか記憶に残っていなかったことを考えると今とはまるで違う感想を持ったんじゃないかと思う。その頃は高校生になったばかりでまだ夏の思い出といったら部活くらいしかなかったし、それよりも今までに出会ったことのない異性のタイプが描かれていたことで、そちらの方に衝撃を受けたんだろう。それはそれで若かったってことか。。。

というわけで、読み手それぞれの夏の記憶を美しく甦らせてくれる作品。春先から初夏にかけて読むのがオススメかと。