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手紙

 

東野 圭吾
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最高の書!
本を読んではじめて泣いた。文句なく素晴らしい傑作!!!最近流行りの、ただ泣かせるだけの、安直なストーリーなんかじゃなく、日常にひそむ様々な問題を深く考えさせられる、現代文学の最高傑作といっていい作品...
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初の東野圭吾作品。んー、ちょっと暗い感じもしたけど、全体としては結構良かった。実際そうなのかは分からないけど、犯罪加害者の家族がどういう状況になってしまうのか、周囲からどういう風に扱われるのかが垣間見れた気がする。その差別が決して悪いことではなく、一般人が犯罪者を差別的に見ることはむしろ自然なことなのだということも気付かされた。

(「BOOK」データベースより)

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。

 

 

 

学業優秀の自慢の弟、直貴の進学費用のために強盗殺人を犯してしまった兄、剛志。確かに結果は重大で許されるものではないが、その真っ直ぐで純粋に弟を想う彼はどこか憎めない。獄中から毎月欠かさず、拙い文章で手紙を出してくる彼の健気さにも泣けてくるものがあった。

ただ、弟からしてみればたまったもんじゃない。兄が殺人犯という理由で進学も就職も恋愛もうまくいかない。しかも自分のために犯してしまった殺人ならなおさらだろう。どこかで兄に負い目を感じながらも、ついにガマンは限界に達し、兄に引越し先を連絡せずに手紙を受け取らないようにしてしまう。そんなこととは露知らず手紙を出し続ける剛志がなんだかかわいそうに思えてくる。

しかも、弟、直樹にストーカーちっくにつきまとっていた由美子が直樹に代わって手紙を受け、なんと返事まで出していたため、兄はその事実も知らずに手紙をやりとりしていた。なんか哀れな感じもするが。。。

直樹は殺人犯の弟というレッテルのせいで何をやってもうまくいかなかったが、このストーカー女、由美子のおかげでやっと幸せな結婚生活を送ることになる。ストーカーちっくではあるが、決して悪い女ではなく、むしろ、直樹を心から心配している。邪険に扱われても絶妙な距離感を保つやり方は優良ストーカーとも言うべきだろう。

しかし、そんな幸せな結婚生活も。。。どこまで行っても兄が殺人犯であるという事実は消えないんだなぁ、と思った。そしてそれを悟った直樹は家族を守るために、ついに兄との決別を決意する。実はこれが簡単なようで一番難しい選択だった。

この選択に至るのに一番影響を与えた人物、それは直樹が就職先した電気量販店チェーンの平野社長。この人の語る自殺や差別論は自分にとっては初めての考え方だったが、非常に納得させられた。この作品の一番の肝じゃないかと思った。彼曰く、犯罪を犯すというのは社会からの自殺に等しいということ。犯罪を犯すというのは、そういうことまで踏み込んだ覚悟が必要だとのこと。

そして、物語は終盤、最高の感動ポイントを迎える。それは弟に決別を突きつけられた兄の最後の手紙。といっても弟に直接渡されたものではなく、被害者の遺族への手紙だったんだが。この辺はすごい感動した。。。それだけに最後の最後、エンディングがちょっと白けた感じがしたんだが。。。

まぁ、細かい設定に無理があるような気もするけど、全体的な作品観はかなり良かったので、映画版「手紙」もちょっと観てみたいと思った。