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フィッシュストーリー

 

伊坂 幸太郎
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伊沢節は健在です
人と人との連鎖の不思議さ、微妙にずれた登場人物たちなど、伊坂さんのいいところもいっぱい見られるので、ファンとしてはそれなりに楽しめた。が、やはり客観的に見ると、他の作品に比べてやや物足りないなぁ。フ...
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うーん、ちょっと他の伊坂作品とは異質な一冊な感じが。。。やはり彼の作品は長編の方がしっくりくる。最後の最後で全ての伏線がひとつに重なるといった彼の良さは、やはり短編だと発揮しきれない。この作品はおなじみの人物がたくさん登場するという意味では楽しめた。特に「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」あたりとの作品間リンクが豊富なので、この辺を読んでないとあまり楽しめないのかも。。。

(「MARC」データベースより)

あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。

 

 

 

全4編のうち1本目「動物園のエンジン」は彼のデビュー作らしい。かなり微妙でオチもよく分からなかった。「ラッシュライフ」に出てくる河原崎の父親、「オーデュボンの祈り」の伊藤が出てきたが、それ以外はなんだかよく分からなかった。特になぜ長沢が動物園のエンジンとなっているのかがよく分からない。。。どういう原理なんだろう。オーデュボンで”喋るカカシ”の原理を明かしたように、サクッと明かしてほしかった。

2本目「サクリファイス」では、あの黒澤が閉ざされた集落に伝わる風習に隠された謎に迫る。これは先が気になって仕方なかった。不気味な風習と現在の闇社会がつながるオチには驚いた。

3本目は表題作の「フィッシュストーリー」。これはなかなか伊坂チック。ある作品を軸にして、過去と現在と未来のちょっとした話がつながっている。30数年前に泣かず飛ばずだったバンドの最後の作品に仕込まれた無音部分が、偶然に偶然が重なりまくって、未来で世界を救ってしまうという、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な作品。唯一、おなじみの登場人物は出てこないが、それなり楽しめた。

そして最後の「ポテチ」はこの本の中ではダントツに面白かった。特に主人公の今村のキャラが良かった。彼はこの作品内で、三角形の内角の和が180°になることやピタゴラスの定理なんかを自力で発見している。「ラッシュライフ」でもリンゴが落ちるのを見て引力を自力で発見していたので、世が世なら大天才なのかも。また別の作品で、相対性理論あたりを自力で導いてほしいところだ。あ、この作品にも黒澤が登場する。今村のちゃらんぽらん風な性格と黒澤の何事にも動じない落ち着き加減が見事にマッチしていた。今村の彼女、大西もなかなかいいキャラだ。特に今村母との会話は小気味が良かった。

まぁ、全体的には可もなく不可もなくといったところなんだけど、伊坂作品の魅力という観点からはちょっと何かが足りない。初めて伊坂本を読む人にはあまりオススメできない一冊だった。