ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

少女には向かない職業

★★★★
桜庭 一樹
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最大問題作
山口県下関市の沖合の孤島に住む中学2年生の葵。学校ではおもしろキャラに専属するみんなの人気者的存在。そんな彼女の家庭環境とは。病気でアル中の義理の父。そんな彼の存在に心苦しめられていた。葵は図書委員...
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赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞受賞、『私の男』で第138回直木賞受賞と、今最も注目されている作家の一人、桜庭一樹の作品。初めて読んだが非常に読みやすい。先が気になって気になって一気に読んでしまった。

(「MARC」データベースより) 中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した-。これは、ふたりの少女の、血の噴き出すような闘いの記録。痛切なストーリーが胸を抉る衝撃作。

主人公の大西葵は中学2年生の普通の女の子。クラスでは下らない冗談を言ったりしてほんのちょっと目立つ存在。でも、家庭では育児放棄気味の母親と呑んだくれの暴力義父に追い詰められ辛い思いをしている。そんな葵が悪魔めいた怪しい風貌のクラスメート、宮之下静香との出会いをきっかけに、2人の人を殺害するまでに至った物語。 といっても全編を通して絶望的というわけではなく、幼なじみへの恋愛ちっくな話とか、クラスの女子グループとの微妙な友人関係だとか、明るく等身大な女子中学生の話も出てきたりする。その一方で絶望的な描写は凄まじく、その落差が結構大きかった。そういえば表紙の青空の写真も内容とはかけ離れた感じがするなぁ。 ただ、そんな絶望的な中にも滑稽さが入り混じったりしている。葵のセリフなんかは、『〜なのかぁ』みたいな、ちょっとしまりがないというか緊張感がない。あと極めつけは最後の殺害シーン。凶器は何とバトルアックス! 華奢な女子中学生がバトルアックスで大人の男を殺すって絵的にどうなのかと。。。で、気になって「バトルアックス」でググってみるとレプリカとかも結構売ってるっぽい。なんか女の子がバトルアックス構えてる写真とかも出てくるし、実は女の子の武器にバトルアックスというのもアリらしい。 それから章タイトルもシュールすぎる。一章、三章、終章で静香が言ったセリフからタイトルがつけられているが、それがこんな感じ。『用意するものはすりこぎと菜種湯です、と静香は言った』、『用意するものは冷凍マグロと噂好きのおばさんです、と静香は言った』、『用意するものはバトルアックスと殺意です、と静香は言った』 冷凍マグロと噂好きのおばさんって。。。もうこれを目次で見ただけで先が気になって仕方なかった。で、これらはどれも静香が葵に殺害方法を提案する際に言ったセリフなんだけど、結局、最初の二つは失敗する。というか計画があまりにもずさん過ぎる。悪魔めいた風貌で絶対にばれない人の殺し方とか言ってるので、さぞすごい計画なのかと思いきや、かなり穴だらけ。 そんな穴だらけな計画も葵の心の中で沸き立つバトルモードや静香の勇気の一撃で二人の大人を殺害してしまう。一人目の殺害は、相手の心臓発作とたまたま悪意もなく仕掛けていた鏡のマジックによって心臓発作の薬が見えなくなっていたという偶然が重なっての結果。二人目の殺害は正攻法のバトルアックス頭かちわり。まぁ、殺された二人はどちらも殺されていいとまでは言わないけど、あまり同情はできないかなぁ。 そんなこんなで二人を殺してしまった葵と静香。二人とも憔悴しきって今にも死んでしまいそうだ。そこに救いの神が現れる。それまでも何度か葵を助けてくれて、あの『スパルタの狐』の話をしてくれた優しい警察官だった。スパルタの少年は秘密を守るために狐に噛み殺されてしまったが、少女たちは生きるために秘密を告白した。
桜庭 一樹
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『砂糖菓子・・・』とダブって感じられたが
ライトノベルで人気の著者の初めての一般小説(2005年9月刊行)。2006年版『このミス』20位。話題作『赤朽葉家の伝説『私の男』は未読、桜庭作品を読んだのは『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に次い...
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