ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

失はれる物語

★★★★
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なみだが自然と流れてきました
どのお話も好きですが、とくに幸せは猫のかたち が最高でした。電車の中ではらはらと泣いてしまいました
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乙一特有の切なさとファンタジーがあふれる短編集。暗い性格の主人公が自分の妄想だけの存在にすがるという、ちょっと陰鬱な感じの作品が多い。それでも最後に爽快感が残る辺りは乙一の力量を感じる。『平面いぬ。』が好きな人ならこちらも楽しめるはず。 収録作品はこちら。 1.Calling You 2.失はれる物語 3.傷 4.手を握る泥棒の物語 5.しあわせは子猫のかたち 6.ボクの賢いパンツくん 7.マリアの指 8.ウソカノ

(「BOOK」データベースより) 目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

1.Calling You 話し相手になる友人がいないため本当は持ちたい携帯電話を持てない女子高生リョウ。携帯電話に想いを馳せるうちに想像の中の携帯電話が本物のような存在感を持つようになる。そしてある日、似た境遇の少年シンヤからの電話で着信音が鳴った。 頭の中の携帯電話で結ばれたリョウとシンヤ。携帯電話は実在しないが、2人は確かに存在し、互いに惹かれるようになる想いも本物だった。 互いの時間がずれるなど、絶妙な設定も上手いと思った。最後は少し切ない終わり方。 2.失はれる物語(表題作) 交通事故で右手の感覚以外、視覚、聴覚、嗅覚、味覚といった人間のあらゆる感覚を失った男性が主人公。感覚は失いつつも意識はあるという絶望的な状況は地獄だと思う。死にたくても自殺すらできない状況。 そんな中、彼に献身的に尽くす妻は、彼にとって唯一の外界とのつながりである右手を通して、様々な情報を与えてくれていた。 しかし、彼女の疲れを敏感に嗅ぎ取った彼は、彼女を解放するために自ら交信を途絶えさせる。いつしか妻も看病に来なくなり、暗闇と静寂の無の世界で意識だけが残り続ける。 地獄のような絶望的な状況、主人公の苦しみが描ききれてないのが残念。 3.傷 小池徹平、玉木宏のダブル主演で話題となった映画『KIDS』の原作。 触れた相手と自由に傷の受け渡しができるという不思議な能力を持つ少年の語。不幸な境遇を負ってきた二人だったが、その能力を悪用せずに慎ましく過ごしてきた。信じてきた相手に裏切られても健気に生きていく二人がよく描けていると思う。 正直、最後のセリフ染みたところがウザかったが、死ぬ寸前の大怪我を半分に分けたところは号泣モノ。 4.手を握る泥棒の物語 間抜けな泥棒のサクセスストーリーか? 自身がデザインした腕時計の発売するための費用を捻出するために民宿の壁に穴をあけて、手だけを入れて盗みを働こうとする。しかし、そこで宿泊客の手を握ってしまい、さぁ大変、といった感じ。 うーむ、何とも言い様がない。終わりがあっけないので、もう少し続きが見たかったかなぁ、と。 5.しあわせは子猫のかたち やっべ、最後泣きそう。個人的には本書No.1作品かと。 人付き合いが下手で孤独を好む主人公。大学進学を機に一人暮らしをすることになった家は数週間前に住人だった女性カメラマンが刺殺されたいわくつきの家だった。 住んでみてまもなく不思議な気配を感じる主人公。当たり前のように家に上がりこんできた白い子猫を通して死んだはずの女性カメラマンの存在に気付く。その彼女は温かな心の持ち主で、孤独を求めてきた彼もいつしか人と接する喜びに目覚めていた。 最後に訪れるつらいけど温かい別れは号泣モノ。さらにちょっとした謎解きもあって、あっさりミステリとしてもいい感じだった。 6.ボクの賢いパンツくん なんだこれ。短っ。 タイトル通り、賢いパンツくんが少年を成長させる。 パンツと会話する少年は何だかシュールだ。 7.マリアの指 本書、最長作品。というか内容の割りに長すぎて読むのが疲れた。 神々しささえ感じるような別格の存在、鳴海マリア。主人公はマリアの幼馴染みの弟、鈴木恭介。 マリアがある日列車投身自殺をする。バラバラになった彼女の身体のうち、1本の指を主人公が拾う。そして、その1本の指からマリアが自殺したのではなく、誰かに殺されたことに気がつく。まぁ、そんな話。 最後は少し意外性があってよかったが、とにかく途中が冗長すぎた感じがする。 8.ウソカノ 「あとがきにかえて」と添えられた作品。なかなかよかった。 友達にいい格好するために、ウソの彼女(ウソカノ)を創りだしてしまった主人公。彼女の名前は安藤夏。名前だけでなく、出会いのエピソードや趣味など、細かい設定で真実味を帯びてくる。ウソで固めた彼女の存在は、いつしか本物のように彼に語りかけてきた。 何となく『平面いぬ。』収録の『はじめ』(レビューはこちら)を思い出した。 主人公のクラスメート池田君にも忍羽舞(苗字は「忍羽」だがなんて読むのか不明。この名前自体がウソっぽい。)というウソカノがいて、彼らは二人で秘密を共有することになる。互いのウソを互いでカバーし合う事で周囲を騙し続けてきた二人だが、ある日、池田君のウソがばれてしまう。 最後は安藤夏の趣味であるギターで一人立ちした主人公の前から彼女が姿を消す。ウソの存在なのに悲しい別れで、少し泣きそうになる。
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これを読まずして乙一は語れない
まず装丁が美しい。そして六つの物語、すべてが美しい。『手を握る泥棒の物語』はユーモラスな明るい話だが、他はすべて事故や殺人などが絡んでいる。しかし陰惨な話にはならない。独特の優しさや透明感があり、特...
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切ない・・・
普通の恋愛小説かと、思って読んでみたらちょっと不思議なお話だった乙一さんのお話ははじめて読んだんだけど最近、読みやすい小説しか読んでなかったから最初はちょっと、読みにくかったかなでも、気がついたらは...
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都筑 せつり
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うえーん(泣)みたいな。
この作品は乙一さんシリーズで一番好きですね。都筑さんの絵が乙一さんの世界にびっくりするほどあってます。物語自体も、予想を裏切りまくる物語です。もう1つの「傷KIZ/KIDS」はちょっとこわめ?感動も...
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