ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕

★★★☆☆
今野 敏
価格
今までになかった刑事像
展開が面白くどんどん読み進められました。結末はちょっとありがちな感じもしますが、それまでの過程がよかったです。
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隠蔽捜査』シリーズでお気に入りになった今野敏氏の警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ第1作。 実はこの作品は1996年に幻冬舎から刊行されていたものが、昨年になって新潮文庫で再刊行されたもの。シリーズの残り2作『朱夏』と『ビート』も同様に新潮文庫として刊行されている。何で10年も経ってからリバイバル刊行されたんだろう???よく分からん。。。 まぁ、そんなことはさておき、本作品も隠蔽捜査シリーズに負けず劣らずの骨太警察小説で、警察内部の描写もなかなか詳しい。特に捜査本部設置時の班分けや捜査期間などが分かりやすかった。 正直、期待しすぎていたこともあり、思ったよりも楽しめなかった。主人公に隠蔽捜査シリーズの竜崎のようなカリスマ性がなく、どちらかというと捜査で犯人を追っていくことに主眼が置かれているようだ。あと2作、シリーズとしての完成度に期待したい。

(背表紙より) 「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。

主人公樋口は警視庁捜査一課強行犯第三係の係長。40歳と比較的若い係長だ。17年連れ添った妻を愛し、高校生の娘とも微笑ましい会話をするマイホームパパでもある。職場では真面目実直なところを周囲から評価されているが、本人は実力以上に評価されていることが不安でたまらない。周囲の目が気になって仕方なく、上司には良き部下であろうとし、部下には良き上司であろうとする。ある意味小心者だが、持ち前のポーカーフェイスで周囲にはそのことを悟られていないようだ。 タイプは違うが真面目実直なところは隠蔽捜査シリーズの竜崎と似ている。まぁ、竜崎のキャラ設定はこの樋口がベースになっているんじゃないかと。 さて、本題に入ろう。事件は毎週火曜に中年の男が殺され、その全ての現場でリオという美少女が目撃されるという、一見援交絡みの連続殺人事件だ。パッと見は単純そうな事件だが、実は根が深く、複雑だったりする。 まず最初の事件の被害者は、荻窪のデートクラブオーナー。樋口は荻窪署に設置された捜査本部に予備班として加わることに。予備班というと何か仕事がない余り物のイメージが強いが、捜査主任の懐刀的な存在で、通常はベテラン捜査官が担当する非常に重要なポストだ。もう一人、樋口と組む形で予備班となったのは荻窪署ベテラン刑事の植村だ。樋口を柔とすると植村は剛。ただでさえ荷が重い予備班の任務なのに、年上で自分とは違うタイプの刑事と組むことに不安を感じた樋口。しかし、植村が取り調べで落とせなかったデートクラブ店長を見事に落とし、その植村に認められる。 そこで樋口が一言、「植村さんは相手にしゃべらせようとした。私は相手の話を聞こうとした。その違いじゃないですか?」 ちょ、、、おま、、、嫌味すぎる。。。あれ?でも植村もその上司で荻久保署捜査課長の尼城も何か喜んでる。。。北風と太陽って。。。 続く2件目の事件では新宿のパブオーナーが殺される。火曜日の犯行で、現場から少女が立ち去ったという情報は最初の事件と同じだ。事件の類似性から捜査本部は警視庁本庁へと移され、合同捜査本部となった。合同捜査本部では警視庁の刑事部長が本部長となり、これまで本部長だった荻窪警察署長は新たに加わった新宿警察署長と共に副本部長となった。警視庁刑事部長といえば隠蔽捜査シリーズでは竜崎と同期で幼なじみでもある伊丹だ。こんな感じで対比させるのも面白い。 さらに3件目、またしても火曜日に今度は渋谷のラブホテルでビデオ撮影会社の社長が殺される。そしてとうとう、3つの事件の現場に居合わせた少女、飯島里央(リオ)が現場で緊急逮捕される。 そしてリオに会った樋口はその美しさに惹かれていく。。。 って、なんですか?この流れは。。。 ここまでは樋口も魅力的だったんだけど、これでもう幻滅。それまでガマンしていたKY発言とか、団塊世代への恨み節とか、もう全てが許せなくなってくる。 特に世代論を語らせたら非情にウザイ。全共闘には乗り遅れ、その破壊の後始末に追われ、その後にやってきた遊びの世代にもなれなかった、といった発言が何度も出てくる。著者が樋口と同い年らしいので、これって恐らく著者の叫びなんだろうけど、まぁしつこい。こうした世代論はなかなか興味深いんだけど、主人公が繰り返し、しかも恨み節で語るってのはいかがなものかと。 さてさて、リオを緊急逮捕した捜査本部はリオが犯人であるという方針で動き始める。しかし、樋口はどうしてもリオが犯人だとは思えなかった。捜査本部の方針に逆らって、相棒となった氏家(荻久保署生活安全課)と共に、リオに関係のありそうなDJのハル、教師の梅本を訪ねる。 結局、犯人は梅本だった。自身も父親の暴力や両親の離婚が引き金となってアダルトチルドレンとなり、両親の離婚や継母との不仲という問題を抱えていたリオを助けることで自分自身をも救おうとしていたらしい。うーむ、分かるようでよく分からん。 そんなこんなで捜査本部の方針から外れ、スタンドプレーで真犯人を逮捕した樋口。植村からは九回裏の逆転満塁サヨナラホームランなんて言われてるが、真面目実直なキャラがブレまくりで魅力が半減してしまった。まだまだ竜崎の領域じゃないな。 ちなみに今回一番気になった登場人物は樋口の愛妻恵子だ。仕事柄帰宅が遅くなる樋口を遅くまで夕飯を用意して待ってるし、晩酌まで付き合っちゃう。樋口の世代論恨み節に対しては、あなたは被害者意識が強い、と言い切っちゃうし、樋口が捜査対象の少女に惚れたことを仄めかしても、あなたは惚れっぽいから、なんて軽くあしらってしまう。さらに高校生になる娘の照美とは友達のような関係で、絵に書いたような幸せな家庭を築いた功労者だ。見た目については不明だが、学生時代に樋口が惚れたエピソードから推測すると、40歳になった今も相当な美人だろう。 で、そんなステキ過ぎる恵子さんなんだが、次作では何と誘拐されちゃうらしい。ヒロイン凌辱モノというマニアなジャンルがあるらしいが、そんな感じなのか? いや、違うか。。。
今野 敏
価格
ドキッとさせられます。
初刊から10年以上経っているのに古さは全く感じません。警視庁強行犯係 樋口警部補が主人公なのですが、1955年生まれの全共闘運動の頃はまだ子供で「祭りの後の後始末の世代」であり、若者と大人の対立を間...
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