ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕

★★★★
今野 敏
価格
オトナ向けかな
夫婦、家族というのは不思議なものだ。特に日中外に出て仕事をし、また、夜も遅くなり、週末もなかなか家に居着かれないようなそんな、ご主人様と、奥さん、娘さんらのほかの家族との付き合いというものは、なかな...
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今野敏の「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズ、第二弾。 今回は家族愛がテーマといった感じか。前作『リオ』では、主人公の樋口のキャラになじめず楽しめなかった。事件に巻き込まれた美少女に惚れてスタンドプレーに走るし、世代論で愚痴るのもウザいし、さらに天然嫌味キャラってのも読んでて痛々しかった。 それに比べれば本作はなかなか楽しめた。樋口の天然嫌味キャラも若干だけど鳴りを潜めたし、世代論の愚痴りはなくなった。ただし、今回も妻の失踪でスタンドプレーに走るけど。。。でもまぁ女子高生に惚れての暴走ってワケじゃないのでいいかなと。 ただ、やっぱり樋口に魅力は感じられなかった。。。単なる捜査モノとしては若干楽しめたけど、やはり『隠蔽捜査』シリーズほどのハマリ感はない。まぁ、このシリーズも次の第3作が最後なので、近々読もうとは思う。

(背表紙より) あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ――。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。

前作ではその仲の良さが魅力的に見えた樋口家だったが、本作最初の方では何か微妙な雰囲気だった。特に樋口の家庭への覚めっぷりがスゴイ。結婚が決まってから妻への性的関心がなくなっただとか言ってるし。。。読んでいて何とも言えない嫌悪感に包まれた。。。 でもまあ、今回は妻の恵子が誘拐される話なので、妻が誘拐されてからの樋口の心境の変化とか、事件解決後の感動に結びつけるために敢えてそう書いているのだろう。ただ、演出が露骨過ぎると返って覚めちゃうなぁ。 で、何かよく分からないうちに妻恵子が誘拐される。アルバイトの下訳(翻訳前の下書き)を翻訳家城島直己の家に届けた帰りに、スタンガンと白いミニバンでさらわれる。何も知らずに帰宅した樋口は、妻がいないことにまず腹を立て、そして次に恵子が愛想をつかして蒸発したのかと怯え始める。なかなかのKYっぷりだ。でもまぁ、最後はやはり有能な捜査官ってことで、何とか誘拐の可能性を考え始める。あ、ちなみに樋口の役職は警視庁捜査一課強行犯第三係の係長ってことで、まぁそれなりに出世していると思われる。 すぐに捜索願いを出したところで事件性の無い失踪は3日ほど様子を見るという警察内部の事情を知っているため、樋口は独自捜査を展開しようとする。幸い土曜日ということもあり午後からはフリーのはず。じっくり捜査するぞ〜、と思ったのかどうかは分からないが、何か同じ強行犯第一係の係長、天童警部補から極秘任務を申し付けられる。なんでも警視庁の警備部長に脅迫状が届いたらしく、警察内部の犯行の可能性もあるという。内部の不祥事を隠すために極秘に捜査本部を立ち上げることになった樋口。事件の性質上、警務部と公安との混成本部になるという。警務部は人事管理部門で警察官の犯罪や非行をチェックする役割を担っているとのこと。公安はスパイや思想犯を対象とした隠密部門といったところか。 それから樋口と天童、同じ強行犯係の係長だけど、一係の係長というのは他の係長より格上らしい。天童は捜査一課の中では課長、管理官に次ぐNo.3という立場らしい。うーむ、よく分からん。。。 それでも本格的な捜査本部立ち上げは月曜からだから、土曜の午後と日曜日で何とか解決しようとする。前作でも登場した相棒、荻窪署生活安全課の氏家巡査部長を頼り、独自捜査がスタートする。 捜査を始めると樋口がいかに恵子との会話を適当にしていたのかが改めて明らかになる。なんと樋口は恵子の下訳の届け先を全く知らなかった。それでも、恵子の机にあった出版社に問い合わせ、何とか届け先である城島直己を割り出すことに成功。城島宅のある初台周辺での聞き込みの結果、恵子の目撃情報も入手できた。 犯人の可能性があるのは2人。一人は翻訳家の城島直己。もう一人はこの地域の地域課警察官で樋口を慕っていた安達巡査。樋口は自分を慕う安達を犯人とは思いたくないのと、何か自分の知らないところで恵子と知り合っている城島への嫉妬心から、城島を根拠も無く疑う。もう心が狭すぎる。。。(泣) 氏家が止めたからよかったが、下手をすると別件逮捕しかねない勢いだった。つーか、捜査令状無しで家宅捜索までしちゃうし。。。 読者にはかなり早い段階で安達が犯人ってのがミエミエなのに、有能な捜査官のはずの樋口は全く気がつかないのも不自然なところ。やはり愛妻の危機で思考がパニックなってしまったということだろうか? 身に覚えの無い事件で家宅捜索までされた城島だったが、なんと樋口に重要な情報を提供する。ニクいなぁ。もう主人公の樋口がダメダメすぎるから、氏家や城島がかっこよく見えちゃう。 で、結局安達が犯人なワケだけど、何と警備部長脅迫の犯人もコイツだった。んで、コイツがまたどうしようもない。一人っ子で、仕事人間の父とはほとんど触れ合いがなく、厳しい母親に躾けられてきたらしい。その歪みで何か自分勝手で完全主義者っぽくなってしまったという。何かこの辺にあたって大人の責任だとかなんだとかって始まるワケだが、これって前作でも似たような説教臭さがあったので、このシリーズ特有のテイストなのかもしれない。ウザイなぁ。。。 あ、で、タイトルにもなっている「朱夏」って何だ?って話が最後に分かる。そもそもタイトル的に夏の話なのかと思ってたのに、クリスマスから年末にかけての真冬の話だし、どういう意味があるのかと気にはなっていた。どうやら人生を春夏秋冬で例えると、青春−朱夏−白秋−玄冬となるらしく、若い頃の青春時代の後に来るのが朱夏だという。人は青い春で若さを謳歌し、赤い夏で人生の充実を楽しむ。そして枯れた味わいのある白い秋を迎えて、やがて黒い冬で人生を終えるという。なるほど〜とは思ったけど、何かこのシリーズ、説教臭いんだよなぁ。。。
今野 敏
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