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数学ガール/フェルマーの最終定理

★★★★★




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「数楽(すうがく)」に萌え、3人の女子(ミルカ、テトラ、ユーリ)に萌える
2晩で一気に読みました(2時間×2=4時間程度)。このような数学の題材を一気に読ませる著者の筆力に脱帽します。女の子たちの言動にドキドキ・ワクワクしながら、"フェルマーの最終定理"に関係する数学の"...
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数学好きの高校生「僕」が3人の少女と数学を楽しむ青春数学ストーリー。前作『数学ガール』以上の萌え萌えっぷり、、、じゃなくて、数学魂っぷり。もちろん、萌えっぷりもすごくて相変わらずドン引きしまくりだったけど。 才色兼備のツンデレ女王様キャラの天才ミルカ。バタバタっ娘でかわいいストーカーのテトラ。さらに今回の新キャラでテトラ以上の妹キャラで猫語萌えのユーリ。うーん、、、萌えキャラ増やすなよ! で、こんな調子で大丈夫か?と思いきや、数学ネタはかなり本格的で見応え十分。かなり高度で難しい内容が非常に分かりやすく説明されていて、数学本としての完成度は高いと思った。 表題にもなっている「フェルマーの最終定理」のワイルズの証明を非常に端的に分かりやすく説明しているのは見事。あのサイモン・シンの傑作『フェルマーの最終定理』とは一味違う分かりやすさがある。


(オンライン書店ビーケーワンより) 「僕」たちが追い求めた、整数の「ほんとうの姿」とは? 「僕」と3人の少女が織りなす数学物語。小学生にもわかるものから、数学者を350年以上悩ませたほどの難しいものまで、さまざまな問題を収録。2007年刊の続編。

まず一番に感じたのは登場人物の設定の絶妙さ。といっても萌え要素ではなく、数学スキルの多彩さ。これがなかなか計算しつくされていると感じた。 天才的な数学頭脳を持ったミルカ。ミルカ程ではないが、それでも非凡な数学センスと卓越した説明能力を持つ主人公の僕。質問上手で基礎的な事もきちんと確認するテトラ。中学生で当たり前の事にも疑問を持つユーリ。 こういった具合に、数学について様々なスキルレベルの登場人物がいることで、読者は登場人物と一緒に無理なく理解を深めることができる。数学の先生がただただ延々と講義を続けるという内容とは一線を画している。 最初に出てきた時計巡回問題はアプローチが見事で非常に分かりやすかった。一見、単なる導入編、ウォーミングアップ問題のように見えるが、これがこの本の題材でもある「フェルマーの最終定理」につながっていくのは見事。 強力だけど学校ではあまり習わない数学テクニックも満載だ。原始ピタゴラス数が無限に存在するか?という問題を”偶奇”と”互いに素”という条件を突き詰めるだけで回答を導いたり、数論的題材を幾何的視点で捉えるところは本当に見事。 あと、√2が無理数であることの背理法を使った有名な証明があるが、それの別解が見事過ぎる。同じ排理法だけど、途中から”素因数分解の一意性”を利用して矛盾を導き出す。素因数分解の一意性ってのはなかなか使える証明テクニックだと思った。あと他にも鳩の巣原理を使った証明テクニックが出てきたが、こういうのも簡単な割に学校教育ではあまり出てこないだろう。 素数を複素数の積に展開する話も面白かった。通常の整数の範囲では積の形に分解できない素数だが、複素平面上の格子点に対応する”ガウスの整数”まで範囲を広げて考えると、積の形に分解できる素数が存在するという話。しかもそれらを並べると驚くべき規則性が見出だせる。ミルカの種明かしを聞けば当たり前のことなんだけど、本当に驚いた。 それから、とっつきにくい群論もミルカの説明にかかれば非常に分かりやすい。そしてアーベル群から楕円曲線にまで話をつなげていく展開も見事だ。群から始まって、環、体へと話は進む。有理数体とかって普通に読み飛ばしていたが、この”体”にきちんとした意味があったとは。。。 この辺りから「フェルマーの最終定理」の影がちらつき始める。 三辺が自然数で面積が平方数である直角三角形はあるか?という問いの無限下降法での証明、そしてそこから続くFLT(4)(フェルマーの最終定理の次数が4の場合)の証明は圧倒される。変数は出まくるは、排理法は使いまくるはでかなりキツいが何とか追えた。 また、最も美しい数式と言われているオイラーの式「e^iπ+1=0」の意味が「単位円周上、偏角がπの複素数は−1に等しい」というのも目から鱗。今まで、単にネイピア数、虚数単位、円周率という一見無関係と思える数学的要素がたった一つの式に収まる、という美しさだけで納得、感動していただけで、意味なんて考えたこともなかった。そういった疑問をユーリがぶつけてくれるのが、この本の素晴らしさか。 そして最後はおまちかねの「フェルマーの最終定理」についてだが、これがまた駆け足なのに非常に分かりやすかった。まず最初にワイルズの証明の概略が理解できたのがよかった。 ・「フェルマーの最終定理」が成り立たないのならフライ曲線が作れる。 ・フライ曲線は半安定な楕円曲線だがモジュラーではない。 ・全ての半安定な楕円曲線はモジュラーである。 ワイルズの証明では、これらを背理法を使うことで「フェルマーの最終定理」の証明を完成させている。 そして、これで終わりかと思いきや、最後の最後に原始ピタゴラス数が無限に存在するか?という最初に出てきた問題に対するユーリのひらめきが見事だった。 とまあ、かなりベタ褒めなんだけど、数学から離れた話はちょっと必要性が分からなかった。萌え要素としては必要なのかもしれないが。。。 特にユーリが足の手術でかかとの骨を削ったって話。これって骨肉腫とか命に関わる病気なのでは?と本気で心配してしまった。「命は限りあるもの、即ち有限だ」とかってミルカの話も出てきたり、ミルカの兄が亡くなった話とか、何かユーリの死亡フラグがちらついていたんだが、、、結局何もなし。うーん、かかとの骨を削るってのはポピュラーなのかな??? 他にもミルカの交通事故とか、ユーリの四親等発言、図書室でテトラが「僕」の背中に抱きつく話なんかも、読んでてかなり苦しかった。これで数学本としての完成度がイマイチだったらかなりイタイ本になっちゃうなあと思った。




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本書の主人公が数学を学ぶ心構えは実にイイッ!
実は続編「数学ガール フェルマーの最終定理」を先に読んでから、本書を読みました。巻が独立しているので、数学の内容としては違和感なく読めますね。(ストーリーとしては、本書→続編と読む方が確実に"萌えま...
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