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新解さんの謎

ちょっと古いけど気になったので読んでみた。 著者赤瀬川氏の知人、SM嬢(女王様とか縛られる側とかではなく単なる頭文字らしい。つーか、巻末解説の謝辞で鈴木眞紀子さんと本名が出てたが、、、)が発見した三省堂『新明解国語辞典』の辞書らしからぬ自己主張を面白おかしく書いている本。一時期ブームになった謎本の一つなのか? ちなみに表紙にはちゃんと許可を得て『新明解国語辞典』の写真を使ってるので、三省堂とは別に険悪ではないようだ。

新解さんの謎 (文春文庫)
赤瀬川 原平
文藝春秋
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内容(「BOOK」データベースより) 辞書の中から立ち現われた謎の男。魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない―。「新解さん」とは、はたして何者か?三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。紙をめぐる高邁深遠かつ不要不急の考察「紙がみの消息」を併録。

 

 

 出だしがなかなか面白い。まずは『恋愛』から、、、

 れんあい【恋愛】−する 特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態

 これ、ほんとか??? 「恋愛」の意味ってこんなんでいいのか???(汗) 合体って一体、、、ってわけで、じゃあ『合体』は?ってことで見ていくと、、、

 がったい【合体】−する ①起源・由来の違うものが新しい理念の下(モト)に一体となって何かを運営すること。

 ②「性交」の、この辞書でのえんきょく表現。

 、、、うわー、もう凄すぎる。で、当然のことながら気持ちは『性交』に向かうわけで、、、

 せいこう【性交】−する 成熟した男女が時を置いて合体する本能的行為。

 いや、、、えっと、、、時を置かなきゃいけないのか??? あと、もう最近は男女じゃなくても、、、(汗) とまぁ、こんな感じで初っ端から読者のハートを掴んでしまうワケだ。

 その後も読者を唸らせる迷解説がずらりとならぶワケだが、その中でも特に気に入ったのが『馬鹿』の説明の最後にあるこの一文。

 −−〔=女性語で、相手に甘える時の言い方〕

 これ棒線が2本あるので「ばかばか」となるワケです。つまり、萌えっ子が彼氏の厚い胸板を「いやん、ばかばかっ」って叩くアレですな。うーん、新解さん恐るべし。

 まぁ、途中で文例に対してあーだこーだ言ってるのは大して面白くなかったが、他にも「火炎瓶」の説明に数え方「一本」ってのが唐突に入っていたり、「動物園」の説明で『生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。』と、怒りをあらわにする新解さんが紹介されたりして、まぁ飽きなかった。つーか、動物園の説明はほんとに大丈夫なんだろうか。。。旭山動物園とかも新解さんに言わせれば動物虐待のようなもんなんだろうか。。。

 と、こんな感じで新解さんネタは残念ながら前半で終了。

 後半は著者がどこかの雑誌で連載してきた紙を題材にしたエッセイが綴られていた。これがまた新解さん目当ての自分にはちょっと退屈だった。つーか、書籍タイトルと全く違う内容が半分を占めるってのはいかがなもんかと。

 たまに紛れてる蘊蓄話は少しだけ楽しめたが。。。

 最近見かけなくなった公衆電話ボックスにびっしり貼られていたピンクチラシ。実は朝のNTTの清掃で剥がされるのを見越して、事前にそのテの業者が剥がし、清掃が終わったら貼り直してたという。さらに公衆電話の客層に合わせて、昼はサラ金関係、夜は風俗関係のチラシに貼り分けていたところもあったとか。

 あと、カメラのストロボを「焚く」ということがあるが、これは昔のカメラは鉄皿の上にマグネシウム粉を盛り、それをボンと発火させた明かりで写真を撮ったことから来ているとのこと。そのため、昔はフラッシュ撮影には消防関係の許可が必要だったとか。

 こんな感じで稀に琴線に触れることが書いてあったりするが、全体的には退屈な内容だった。それにこの本は1990年代前半の雑誌連載記事が元ネタになってるので、後半のエッセイは古さがモロに出ちゃってる。まぁ、古いことに関しては今頃になって読んだ自分が悪いんだが。。。

 ま、後半のエッセイはおまけと割り切るしかないかな。

 ちなみに新解さんネタの方は古さをあまり感じさせず、今から読んでも十分楽しめると思う。特に本書は執筆時の最新版である第四版をベースに話が進んでいるが、現在の最新版である『第六版』では新解さんがどう変わっているのか、また、今後はどうなっていくのかを追っていく楽しみにもつながりそうだ。そう考えるとちょっと気になるかも。。。

新明解国語辞典 第七版
新明解国語辞典 第七版
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