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Hot Pepper ミラクルストーリー

またまたリクルート本。今や誰もが知るリクルートの無料クーポンマガジン Hot Pepper

Hot Pepper ホットペッパー フリーマガジン

かなりセンセーショナルな登場だったと記憶している。これが出てきた当初は無料でクーポン配るだけの雑誌って儲かるのかな? というのが正直な感想だった。

ところがところが、これがものすごい儲かったらしい。たった4年で売上300億、営業利益100億というオバケ事業になったという。

この業界No.1クーポンマガジンの事業化を例にして、新規事業の立ち上げ方について独自の視点で語っている。前半は成功自慢話ばかりで事業立ち上げの話もあまりなく、ちょっと中身が薄そう???という嫌な予感が過ぎったが、中盤から実話盛りだくさんで失敗例や成功例、事業の仕組みづくりからリーダー育成まで、読み応え十分の内容になっている。ただ、話が営業寄りだったのが残念かな。もちろん、新規事業には営業力が重要なんだろうけど。




(オンライン書店ビーケーワンより)
業務委託のメディア・スタッフと契約社員によって、わずか4年で売上げ300億、営業利益100億の事業になった『ホットペッパー』。そんな組織がどのように創られていったのかを明らかにする。

序盤は Hot Pepperの凄さや秘密に迫るという内容。生活圏、行動圏をエリアターゲットとしたことでマーケットが見えてきたとか、正規社員がごくわずかの外様部隊での成功だったとか、ちょっと成功ばかりの自画自賛気味なのが若干うざい。『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』でも感じたけど、この自画自賛はリクルート社員の気質なのかな?

中盤からはいよいよ当時の具体例を出して、事業化について語ってくれる。この辺りから読み応えが出てくる。

Hot Pepperには前身となる雑誌「サンロクマル」があった。7年で累積赤字36億というリクルートのお荷物事業。この事例に基づいて失敗する事業の危険ポイントを警告する。できない理由をこれ以上ないほど的確に説明している現場担当者や勝つシナリオが描けないマネジメント、さらには決められたことを実行できない営業担当者といった当たり前だけどありがちな話で、事業立ち上げに関わったことのある人なら心当たりがあるんじゃないかと。。。(汗)

後半はサクセスストーリーに一変し、ホットペッパー事業急拡大のキッカケに迫る。成功事例盛り沢山で読むペースが格段に速くなる。正直、ホットペッパー事業はアイディアが秀逸で単なる先行者利益による成功だと思っていたが、実際には事業統括、企画担当、現場リーダー、営業担当といった事業に関わる全員がかなり泥臭い苦労をして勝ち取ったものだということがよく分かった。成功モデルを汎用化してナレッジ共有を計るなんて簡単そうに書いてるが相当な苦労だったに違いない。

地理的にも全国各地に版元が分散し、組織的にも業務委託等の社外要員が多いため、組織全体でのベクトル合わせも相当な困難だったに違いない。だが、ビジョプレやサマフェスといった独自イベントを通じ、巨大な組織は一つになっていく。さらに一気通貫ブランディングによって売上げを一気に拡大させ、プチコンと称する領域限定コンサルティングによって顧客との接点を強固なものとしていく。このプチコンによる顧客との信頼関係の構築こそがホットペッパーの本当の強みであり、後発への参入障壁になったのだとか。

他にも営業担当者がすべての業務を実施する一人屋台方式や、5分間ロープレ、ワンプライス営業といった営業シンプル化施策、そして、七福神お届け営業、おみくじキャンペーン営業、こぶ茶と唐辛子せんべいでちょっと一服営業など、営業担当者が思わず営業に行きたくなる仕掛けなど、営業力を強化する数々の試みが紹介されている。

最後はリーダー育成について。ここでリーダーの資質についていろいろ書いているが、一番重要なのは「決めるチカラ」だという。自分がすべての責任を負って決断するのがリーダーであるという。うやむやでは済まさせず、徹底して自ら決めることを要求される版元長という名の現場リーダー。地理的にも分散した巨大な組織であるにも関わらず、組織全体で同じ方向に進んだのは、そんなリーダー達がたくさん育っていたからだと。それこそまさに人材輩出企業リクルートそのものだと思った。

というわけで、成功事例のエッセンスをひたすらアツく語っており、読み応え十分でした。