ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

4TEEN

続編『6TEEN』が近々出るということで、やっと読んだ石田衣良の直木賞受賞作。ストーリーは至って単純で、下町月島を舞台にしたテツロー、ジュン、ダイ、ナオトの4人の14歳の友情ストーリーといったところか。

何となく『TUGUMI(つぐみ)』の少年版ってイメージもあるんだけど、『TUGUMI(つぐみ)』が田舎の夏の美しい風物詩といったゆったりしたイメージなのに対して、こちらは下町の喧騒の中で思春期に揺れる焦燥感のようなものを感じさせる。彼らの大人に憧れている部分と大人になりたくない部分とがごちゃ混ぜになったよう何ともいえない切ない感じだ。

それからテツローの語りによる展開は同氏代表作『池袋ウエストゲートパーク』シリーズを思い出させる。各章の出だし部分なんかは本当にそっくり。

ちなみに自分の中学生時代とは全然違うので懐かしさとかは全く感じなかった。。。


4TEEN (新潮文庫)
4TEEN (新潮文庫)
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石田 衣良
新潮社
売り上げランキング: 21,526


(「BOOK」データベースより)
東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない―。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。

秀才のジュン、早老症のナオト、太っているダイ、そしてこれといった特徴のないテツロー。この14歳にしてはちょっとカッコよすぎる仲良し4人組が月島を舞台に走り回り、友情、愛、セックス、涙、笑い、命、、、と様々な経験を通して強くなっていく全8作の短編連作集。

とにかくいろんなことが矢継ぎ早に起きて、読者を飽きさせない作りはさすが。あっという間に読み終えてしまった。

早老症ウェルナー症候群に侵されているナオトへの友情とエロの話では、クールな援交女子高生が見せる意外な優しさに触れる。

秀才ジュンが夫の暴力に悩む人妻を救う話や、ダイが不良グループに巻き込まれる話では暴力に屈しない彼らの芯の強さが描かれている。

摂食障害で精神のバランスを崩した同級生ルミナの話や、ホモセクシュアルのカズヤの話では、マイノリティを排除しない彼らの心の強さも描かれている。

東京湾大華火祭の日に末期ガン患者と出会う話や、ダイ未必の故意のような形で暴力父を死に至らしめた話では、14歳には重過ぎる命への関わりが描かれ、そしてそれが早老症を患うナオト自身の命の短さを読者に意識させる。

芸能界に憧れるお調子者ユズルが決死のダイビングをかます話や、4人が新宿で野宿をしながら遊びまわる話では、思春期ならではの彼らの危うさが描かれている。

新宿からの帰路、変わることが怖いと話すテツロー。大人への憧れと今のまま変わりたくない思いとが複雑に絡み合い、それがまた彼らを成長させていく。

登場人物の設定や遭遇する出来事はかなり現実離れしているのに、ところどころに散りばめられたリアルさはさすが石田衣良。もう少し設定に現実味を持たせるとさらにリアルさがアップしただろうけど、そうするとここまで面白い小説にはならなかっただろう。まさに絶妙なバランスで、さすが石田衣良だ。