ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

アイガー北壁

1936年7月、アイガー北壁で起きた悲惨な事故をテーマにした映画。

雪山の吹雪、圧倒する壁、カメラワークが見事で非常にリアルな映像。見ている者ですら絶望的になる。

そして一方でぬくぬくしているマスコミのやつらに憤慨しつつ、でも結末は知っているからどうしようもない。。。

正直なところ見終わってどっと疲れた。でも見てよかった。

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(「シネマトゥデイ」より)
ベルリン五輪開幕直前の1936年夏、ナチス政権は国威発揚のためドイツ人による前人未到の難所アイガー北壁初登頂を強く望んでいた。ドイツの若き登山家トニー(ベンノ・フユルマン)とアンディ(フロリアン・ルーカス)、そしてオーストリアの2名が大いなる期待を背負って北壁に挑む。彼らは順調に登っていくが、落石によるメンバーの負傷や悪天候に見舞われ……。

アイガーとはスイスの名峰で、ウィキペディアによると、ベルニーズアルプスの一峰でスイスを代表する山。標高は3975m。北壁は高さ1800mの岩壁で、グランドジョラスの北壁、マッターホルン北壁とともに困難な三大ルートの一つとして知られ、それらと共に三大北壁と呼ばれているのだとか。

実際この映画の舞台となった1930年代のヨーロッパでは、次々と名峰が登攀され、最後の難所として残っていたのがこのアイガー北壁だった。そしてナチス政権はこのアイガー北壁を制覇した者に五輪の金メダルを授与すると発表する。

ドイツではすでに4人の名登山家がこのアイガー北壁で命を落としており、祖国の威信に賭けても初登攀者の輩出を欲していた。そんなドイツから若き登山家のトニー・クルツ(ベンノ・フユルマン)とアンディ・ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)が挑戦することになる。そして、彼ら登山家とは別のもう一つの視点として用意されているのが二人の幼馴染みであり、トニーの恋人でもあるルイーゼ・フェルトナー(ヨハンナ・ヴォカレク)だ。

彼女は新聞社の新米でありながら、二人の知人として出張取材の機会を得る。同行する上司のヘンリー・アーラウ(ウルリッヒ・トゥクール)はドイツからの初登攀者輩出を信じて疑わず、その歴史的瞬間を逃すまいとアイガー北壁に面したホテルで悠々と待機する。

この登山家視点のリアルな絶望と傍観者視点のぬくぬくとした楽観がなんとも対照的。この対比によって登山家視点の絶望感がより増加しているのは確かだ。

さてドイツの2人以外にも各国から登山家が集まってきていたが、悪天候のためなかなかスタートに踏み切れない。数日待機して、雨がやんだのを見計らい、トニーとアンディの二人が周囲に気づかれないようにスタートを切る。途中まで順調に登る二人だが、どうやら追ってくる一隊がいるようだ。オーストリアのヴィリー・アンゲラー(ジーモン・シュヴァルツ)とエディ・ライナー(ゲオルク・フリードリヒ)の二人だ。

ここでまず最初の事故が起きる。上にいるドイツ隊が岩を崩してしまい、その落石がオーストリア隊のアンゲラーに直撃。アンゲラーは頭部に重傷を負うが、ライナーの説得も聞かずに登山を続けてしまう。

そして有名な第1雪田下のヒンターシュトイサー・トラバース(ヒンターシュトイサーが初めてトラバースしたことでそう呼ばれている。)を超えたところで2隊が合流し、行動を共にする。難所も超え、この混成チームがアイガー北壁初制覇するのは時間の問題と思われていた。ルイーゼとアーラウが宿泊するホテルでも翌日の登攀を記念してケーキが配られていたほどだ。

ところが、、、事態は一気に絶望的な状況へと急変する。天候が崩れ吹雪となり、さらに負傷していたアンゲラーも体調を崩していた。混成隊はアンゲラーの命を優先して撤退を決める。そして運命のヒンターシュトイサー・トラバース。行きにここを越えた時、帰ることは全く考えず、ザイルを外してしまっていた。これが命取りとなる。

ヒンターシュトイサー・トラバースは行きはザイルをかけてトラバースできるが、帰りはそのザイルを残しておかないと戻れない場所だった。つまり、ザイルを外した以上、撤退は許されないのである。頂上まで登攀して別のルートで下山するか、さもなくば死を待つのみだった。

一行はザイルで下降を試みるが吹雪と雪崩でトニーを除く3人が相次いで事故死する。そしてトニーもほとんど装備がない状態で立ち往生してしまった。まさに絶望的な状況。

ルイーゼが手配して救援隊がかけつけるも、トニーのところまではとてもいける状況じゃない。ザイルを渡して自力で降りてこさせることが唯一取れた策だ。距離があるため2本のザイルをつないでトニーに渡す。そしてゆっくりとトニーが降りてくる。あと数十メートルからあと数メートルというところまできて、トニーの下降が止まってしまう。

何とザイルの結び目がカラビナに引っかかってしまったのである。トニーにはもうカラビナを開いて結び目を通す力さえ残っていなかった。あとちょっと、ピッケルか何かで引っ張れそうな、そんな距離まで来ているのに届かないもどかしさ。そしてルイーゼや救援隊が見守る中、彼は息を引き取るのである。。。 何とも言えない悲劇だ。

しかしアーラウの考えはヒドイ。登山隊が撤退を決めたら記事を書く価値がなくなったとして帰るとか。記事になるのは歴史的瞬間の登頂か悲劇だと。そして実際に悲劇が起きてしまうわけだが。。。それに比べてオーストリア人記者の方は自分は記者である前に人間だと。今のマスコミにも見習ってほしいものだ。


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