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イニシエーション・ラブ


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イニシエーション・ラブ (文春文庫)
文藝春秋(2007-04)
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これはスゴイ。まんまと騙された。。。この類の小説は何度か読んだけど、ここまで鮮やかで衝撃を受けたのは初めてでした。

 

最後の数十行辺りで「ん?」となり、最後の2行を読んだ時には「へ?」となり、その数十秒後くらいに「うええええええっっ?何だコリャ~!?」となり、ちょっと深く考えると「ギャーッ(泣)」ってなって、さらに読み返して確信を得ると、背筋がゾワーッてなる、そんな感じ。これはものスゴイ衝撃。

 

事件らしい事件が何も起きてないのに、こんなに背筋が寒くなる小説も珍しい。。。

 

(「BOOK」データベースより)

大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって…。

 

 

 

 

以下、マジでネタバレ注意。

 

いやぁ、騙された。。。純情そのものという印象だったマユの別の姿が最後に浮かび上がってくる。

 

しつこいけど、以下、ネタバレ注意!

 

今にしても思えば、目次構成がすごくトリッキー。カセットテープのA面B面を模して、各節に曲名をつけている。よく見るとA面は恋愛が盛り上がっていくようなタイトルで、B面は恋が冷めていくようなタイトルになっている。まるで1つの恋愛が盛り上がって、そして冷めていくような印象を受けてしまう。しかし実際にはA面→B面という時系列なのではなく、同時進行していた。微妙にB面の方が先を行っているところが絶妙だ。よく考えればA面とB面は表と裏だった。よく考えると、これはマユの表と裏ということなんだろう。

 

で、この同時進行ストーリー。A面とB面の鈴木(たっくん)が別人(A面=夕樹、B面=辰也)であることに気がつくと、さらに恐ろしい事実が次々と。

 

まずは夕樹を”たっくん”としたマユの狡猾さ。B面で付き合っていた辰也のことを”たっくん”と呼んでいたが、A面での夕樹との会話の中で危うく”たっくん”と呼んでしまいそうになる。ここで危険を察知したマユは、夕樹の”夕”の字がカタカナの”タ”に似ているからと言って夕樹を”たっくん”と呼ぶようにした。実際、B面で辰也がマユに別の女性の名前を呼んでしまったことで、辰也とマユの恋愛は終わっていることを考えると、マユの危機管理能力は素晴らしすぎる。かなり強引なのにすっかり騙されてしまった。夕樹も自分も。。。

 

一番恐ろしいと思ったのは、B面でマユが妊娠してるかも(つーか、本当にしてたんだが。。。)って辰也に打ち明けたその日の夜に、A面では何と夕樹をデートに誘っていること。いやいやいや、妊娠してるかもって悩んでいる時に別の男を誘えるものなんだろうか。。。

 

さらに、A面で夕樹とのデートをキャンセルした理由を便秘で苦しんでいたと打ち明けているが、本当はB面で堕胎手術を受けていたためだというのが分かる。マユは開放感とかスッキリしたとか言ってるが、実は便秘ではなく堕胎したことを指していると考えると、ある意味スゴイなぁ、と。

 

クリスマス・イブのホテルの予約も絶妙だ。A面でちょうどキャンセルが出たからということで予約できたのだが、実はこれ、B面で辰也がマユと別れたためにキャンセルしたもの。

 

あと、B面で辰也がマユと別れて1ヶ月後に、間違えてマユに電話してしまったシーン。これも印象的。マユはA面の夕樹とは付き合っているので、夕樹からの電話だと思って、普通に「たっくん?」と呼びかけてしまう。これに辰也がマジでビビる。そりゃそうだ。1ヶ月前に自分から一方的に振った女が、電話越しで普通に自分を呼んだとしたら。。。この1ヶ月間、自分と別れたことを、そして自分と話してないことを正しく認識できていないのだとしたら。。。これは振った側はかなりビビるだろう。

 

他にも絶妙すぎる両面の対比があったが、全部は思い出せない。というか全部は気づかなかったんだと思う。再読して、両面の出来事を時系列に書き出してガッチャンコしたら大変な事実がもっと出てくるのかもしれない。いつかやってみたいなぁ、と。

 

で、ここまではマユが恐ろしい女と書いてきた。確かに恐ろしいことには変わりないが、辰也の仕事の関係で遠距離恋愛になってしまった心の隙間を夕樹に求めてしまったと考えれば、まぁ同情できないこともない。そもそもフタマタになった前後関係はともかく、辰也も美弥子と浮気していたことを考えれば、辰也とマユにとってはお互い様なワケだ。ちなみに美弥子はフタマタOKという前提で辰也と付き合っていたので、全く知らないのは夕樹だけになる。ちなみに辰也も夕樹の存在は知らない。結果的には、夕樹と辰也はお互いの存在を知らず、マユと美弥子はお互いの存在を知っている、ということになる。そして何も知らずに一番幸せ、”知らぬが仏”状態なのが夕樹ということになる。

 

というわけで、本当に衝撃的な小説でした。

 

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