zakky's report

ネタバレ上等ブログ

 

エデン


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ジロ・デ・イタリア2011、第3ステージでのウォートル・ウェイラント選手の事故死。あまりにも痛ましい事故で前作『サクリファイス』を思い出した。そして、それがきっかけとなり、この続編の『エデン』を読了。 何とも、、、本当に何とも言えない気分になってしまった。

事故翌日のジロ第4ステージはウェイラント選手に捧げる追悼レースということで、全選手が喪に服してのニュートラル走行を行った。そして本作品にも追悼ランのシーンが出てくるのだ。本作品は2010年3月に刊行されたものだが、その1年後にまさかこんなことが起きるとは、、、 

前作『サクリファイス』のレビュー サクリファイス - zakky's report


エデン
エデン
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近藤 史恵
新潮社
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内容(「BOOK」データベースより)
あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。

主人公は白石誓(チカ)。 日本からヨーロッパへと渡り、スペインのサントス・カンタンを経てフランスのパート・ピカルディに移籍。エースのミッコのアシスト役として活躍している。契約はあと一年半残っており、それまでに個人での実績を積むことでさらに上を目指す心積もりだったが、スポンサー撤退によるチーム消滅の危機で目論見が崩れてしまう。

そんな中、年に1度の大舞台、ツール・ド・フランスがやってきた。アルプスやピレネーといった高地を駆け巡り、フランスを一周する世界最高峰のロードレースだ。チーム消滅が迫っている中、個人の実績が欲しいところだが、チカはミッコのアシスト役に徹するつもりだった。

ところがレースが始まるとチームメイトの様子がどうもおかしい。実はこれにはワケがあった。フランスの次代を担う若きスター選手、ニコラが所属するクレディ・ブルターニュと共同戦線、いや一方的にパート・ピカルディがアシスト役に徹するという作戦がミッコとチカ以外に知らされていたのだった。チーム消滅は選手だけでなく監督にとっても職を失うことになる。パート・ピカルディのマルセル監督はフランス自転車界の至宝を勝たせることで新チームのスポンサーを得ようという腹積もりだった。

そのニコラがステージ優勝などの活躍で総合トップ、マイヨ・ジョーヌを着て、ピレネー山岳ステージを迎える。ピレネーは途中休養日を挟んだ全3ステージの長丁場だ。監督の方針に従うべきか悩んでいたチカだったが、ミッコのアシスト役に徹する決心を固めていた。

ピレネー初日は二級、超級、一級の山岳賞を抜けた後、平坦コースを経てゴールするコース。山岳を得意とするチカは監督から逃げるように指示を受けていた。逃げ集団はチカを含めて5人。その中にはニコラの幼馴染みにしてチームメイトのドニもいた。最終的にチカとドニの2人になるが、ドニがマシントラブルで脱落。チカは最後の山で山岳賞ポイントを獲得し、マイヨ・グランペールを手に入れる。最後の平坦コースで集団に追いつかれ、ステージ優勝こそできなかったが、山岳賞として表彰台にも上がった。アシスト役のチカにとっては非常に大きな実績だ。

実はドニのマシントラブルは、ニコラのトラブルの犠牲だった。エースのためにマシンを提供することはロードレースでは当たり前のことらしい。

ピレネー二日目は山頂にゴールが設定されたコース。チカはミッコのアシストに徹しようとしたが、運悪く落車に巻き込まれ集団から脱落してしまう。ミッコは難を逃れ、先頭集団に残れたもののアシスト不在で苦戦することになる。結局総合トップはニコラ、続く2位にミッコ。3、4位には山岳を得意としつつも総合優勝を狙える実力者のモッテルリーニとカンピオンが入ってきた。どうやらこの4人が総合争いをすることになりそうだ。

休養日を挟んでピレネー最終日、再び山頂ゴールのコースだ。2~4位のミッコ、モッテルリーニ、カンピオンがニコラ包囲網を敷き、細い道に入ったところで3人が抜け出す。この辺りは熟練の成せる技。これでニコラは離され総合順位はモッテルリーニ、カンピオン、ミッコが1~3位で20秒以内と並び、ニコラは2分近くの遅れ。ニコラにとっては致命的な遅れ。

その後平坦ステージが4日続くが総合順位も時間差もほとんど変わらず。このままのタイム差なら最後の個人タイムトライアルでミッコの逆転勝利の可能性も見えてきた。アルプス山岳ステージでモッテルリーニとカンピオンがどれだけリードを伸ばすのか、そして続く個人タイムトライアルでミッコがどれだけ追いつくのか、が勝負の分かれ目となりそうだ。

そしてアルプス山岳ステージ。初日はニコラが単独アタックを仕掛けるが、最終的には集団に追いつかれ総合順位も時間差もほとんど変わらず。山岳での単独アタックはほとんど無謀らしい。

アルプス2日目は難関ラルプ・デュエズ山頂ゴール。20人近い逃げ集団ができるがミッコを含めた総合上位陣は動かない。逃げ集団に入っていたチカは得意のダウンヒルで集団から抜け出そうとするが、そこにニコラがついてきてしまう。ニコラがいなければ逃げもありだったが、ニコラがいるとなるとミッコのアシストとしてはこのまま逃げるワケにはいかない。そんな葛藤の中、ミッコはチカに「チャンスを生かせ、勝てるなら勝て」とチカを勝たせようとする。うーん、ミッコ、名前は女っぽいけど男気があるな。

ところがチカもやっぱり男だった! ニコラからは逃げに協力してくれればステージ優勝を譲ると持ちかけられていたのだが、チカはその話に乗ると見せかけて徐々にミッコ達に追いつかせるような走りをしていた。ステージ優勝は喉から手が出るほど欲しいが、ミッコの総合優勝こそが自分の使命なのだ。チカの策略に途中で気づいたニコラは一人で逃げるかたちとなり、ステージ優勝こそ果たすが総合優勝は絶望的になってしまった。一方、ミッコはチカが戻って合流したことで山岳コースでの貴重なアシストを得る。得意ではない山岳ステージで2位と健闘したミッコ。総合順位こそ変わらず2位だがモッテルリーニとカンピオンが得意とする山岳ステージでタイム差を縮めたのは大きい。この辺りはロードレースをよく知らない人(俺も)には分かりにくいのだが、山岳コースを一人で走るのとアシストがいるのでは全然違うらしい。

そしてアルプス最終日を翌日に控えた晩に事件は起きる。なんとニコラの幼馴染みでチームメイトのドニが薬物の影響で死亡してしまう。ここに悲しすぎる二人の物語が。。。 貧しかったニコラが自転車競技を続けるには裕福だったドニのお下がりが必要だった。そのためにドニを利用してきたニコラ。プロになったら急にニコラに勝てなくなったドニ。ドニの焦りは薬物へと向かっていってしまった。

ドニの死に誰よりもショックを受けたニコラ。ドニは自分が殺したようなものだと落ち込み、引退まで口にする。

翌日アルプス最終日はドニの追悼走行となる。そして冒頭に書いたジロ・デ・イタリアのような追悼走行のシーンへとつながる。実は1995年のツール・ド・フランス、第15ステージでカサルテッリ選手が事故死し、翌日、追悼走行になったという事例があり、本作品はそれをモチーフにしているのだろう。

そして、ニコラとチカはこんな会話を。

ニコラは、ぼくを見上げて尋ねた。
「ねえ、チカ。きみにも呪いがかかっているのかい」
ぼくは頷いて笑った。
超弩級のがね。きみが走り続けるのなら、いつか話してあげるよ」
そう、それは美しくて、ひどく陰惨な呪いだ。

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