ザキレポ

ネタバレ上等ブログ

自覚―隠蔽捜査5.5

大好きな警察小説、隠蔽捜査シリーズの現時点で一応最新刊。

『去就―隠蔽捜査6』が小説新潮での連載を終えているので、そろそろ発売されそうだし、ってことで本巻を手にしました。

ナンバリングに .5 がついているのは本編ではなくスピンオフ短編集で、これは『初陣―隠蔽捜査3.5』以来となります。

隠蔽捜査シリーズの過去のレビュー
隠蔽捜査 - zakky's report
果断―隠蔽捜査2 - zakky's report
疑心―隠蔽捜査3 - zakky's report
初陣―隠蔽捜査3.5 - zakky's report
宰領―隠蔽捜査5 - zakky's report


自覚: 隠蔽捜査5.5
自覚: 隠蔽捜査5.5
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今野 敏
新潮社
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(Amazon.co.jp 商品説明欄より)
この男の行動原理が、日本を救う! 〝変人〞警察官僚の魅力が際立つ超人気シリーズ第七弾。署長・竜崎伸也はぶれない。どんな時も――誤認逮捕の危機、マスコミへの情報漏洩、部下たちの確執、検挙率アップのノルマなど、大森署で発生するあらゆる事案を一刀両断。反目する野間崎管理官、〝やさぐれ刑事〞戸高、かつて恋した畠山美奈子、そして盟友・伊丹刑事部長ら個性豊かな面々の視点で爽快無比な活躍を描く会心のスピンオフ!

スピンオフ短編集

3.5のスピンオフ短編集は全話が伊丹刑事部長の話だったけど、今回は各話で主人公が変わります。

まあ主人公が変わるだけで全部同じような流れだったなぁw まあこれが隠蔽捜査シリーズ、竜崎マジックだからなぁ。

各話主人公 ウジウジ悩んで竜崎に相談(もしくは報告)
竜崎 一体何を悩んでいるんだ?
各話主人公 え?
竜崎 □□○○すればいいだろ
各話主人公 一体俺(私)は何を悩んでいたんだろう? (´∀`*)ポッ


というわけで各話簡単に振り返っておきます。

1.自覚

主人公:大森署副署長 貝沼悦郎 警視

管内で起きた事件の捜査情報が一部新聞に漏れてしまった。さらに誤認逮捕の可能性までも浮上して対応に苦慮する貝沼。

最初は署長の竜崎に内緒で対応しようとした貝沼だが、秘密にすることのストレスが半端なく逆に打ち明けたことで状況が打開することになる。

誤認逮捕についても


2.訓練

主人公:警視庁警備部 警備企画係 畠山美奈子 警視

大阪府警で行われるスカイマーシャルの訓練に参加することになった畠山。

しかし、SAT屈指の猛者たちに混じり、唯一のキャリアそして女性としての参加ということで初日で挫けそうになり、竜崎に電話する。

竜崎からは女性であること、そしてキャリアであることを利用しろというアドバイスを受ける。意外かも知れないが、竜崎からすれば自分自身の特性、すなわち性別や役職や権限などを利用しないほうがおかしいということだった。

アドバイスを受けた畠山は2日目以降、力で対抗するのではなく女性であることで相手を油断させたり、うまくいなす形で対応していき、何とか訓練を乗り切ることができた。

もっと色仕掛けするのかと思ったが、そこはお固い警察小説だからねw あと竜崎って『疑心―隠蔽捜査3』で畠山に惚れちゃって大変だったんだけど、電話での応対ぶりはそんな感じが微塵もなかった。切り替えの速さも竜崎はすごいな。


3.人事

主人公:警視庁第二方面本部管理官 野間崎正嗣 警視

出た! ウザ管理官w こいつマジでうざいんだよなぁw

でも今回は新しく赴任してきた第二方面本部長と竜崎署長の間に立たされて困っててちょっと愉快w

どうやら方面本部管理官と所轄の署長はだいたい同格らしく、その二人の関係性で両者の上下が決まるらしい。普段は竜崎に軽くあしらわれている野間崎だけど、今回は本部長の威を借りて竜崎を呼びつけようとするもやはり拒否されるw 理由は大森署管内での事件発生だからまあ仕方ない。

そこで新本部長の思いつきでこちらから大森署に顔を出すことになるも、竜崎は例によって前線で指揮を取っていて不在。格上の方面本部長が待たされ、そのお供として同行している野間崎も気が気じゃない。

意を決して再度連絡をすると今度はすぐに会うという。竜崎の豹変ぶりが理解できない野間崎。人事を尽くしたから、つまり署長として陣頭指揮するに辺り必要なことを全て済ませ、後は捜査員に任せられる状態になったから戻ってきただけ。

野真崎は呼びつけられたから拒否、こちらから会いに行ったから受け入れたって捉えていたが、相手のことを考えればそんな風には思わないはずなんだが。

その辺、第二方面本部長の方はちゃんと分かっていたね。


4.自覚

主人公: 大森署 刑事課長 関本良治 警部

本シリーズの名物問題刑事戸高が人質を抱えた強殺犯に発砲した。例によって拳銃使用はマスコミの格好の餌食になりやすい。しかも今回は犯人が人質を抱えている状態、つまり人質の方向に撃ったということになる。

副署長の貝沼は処分の方向で考えているが、関本は上司として何とか穏便に済ませたいがやはり拳銃使用は問題視されるだろうとモヤモヤしている。

ところが竜崎の合理的判断であっさりと不問。

戸高に聞いた話では、犯人は殺人を犯した直後で興奮していたので、拳銃を使用しなければ犯人は人質をすぐにでも刺す勢いだった。つまり拳銃を使用しようがしまいが人質は危険だったと。さらに戸高が言うには人質がもがいて一瞬緩んだ隙をついて人質に伏せさせ発砲したというから確かに拳銃使用は適切だろう。マスコミがどう判断するかはともかく。

つーか、関口も戸高を助けたいと思いながらも戸高からちゃんと事情を聞かないからなぁ。確かに竜崎マジックだけど、それ以前に関口しっかりしろって感じだわ。


5.実地

主人公:大森署 地域課長 久米政男 警部

地域課は新人の実地研修を最初に受け入れることが多く、新人を育てなければならないらしい。しかもその新人がヘマをすれば連帯責任を負う可能性があるとか。つーかそのしきたりおかしいだろw

案の定、新人が緊配(緊急配備)の最中に犯人に職質をかけながらも取り逃がしてしまうというミスを犯す。

しかもその犯人が長年刑事部が追ってきた大物空き巣犯「猫抜けのタツ」だったから関口刑事課長はマジギレ。久米と署内で衝突する。つーか、猫抜けのタツってダサすぎワロタ。スリとか空き巣犯のアダ名ってなんでこんなにダサいんだろうか?

あと関口は1つ前の話では結構ウジウジモヤモヤしてたのに今回は威勢良すぎw

今回も竜崎がその新人君からいろいろ聞いたところ、新人君のミスとは言い切れず、むしろそこから猫の抜けのタツのアジトを知るきっかけまでできて新人君お手柄という竜崎マジックが炸裂でした。

久米地域課長と関口刑事課長の衝突も雨降って地固まった感じでまさに竜崎マジック


6.検挙

主人公:大森署 刑事課強行犯係長 小松茂

警察庁からのお達しで検挙数と検挙率のアップを求められる小松。しかし窃盗係や知能犯係と違って強行犯係は発生事案数が少ない上に、一度重大事件が発生すれば捜査本部に張り付くため数字を上げるのは大変とのこと。

とはいえ警察組織は上意下達が基本。関口刑事課長からの指示を小松係長も受けざるを得ず、それを部下に伝える。

が、ここには戸高という問題刑事がいた。今回のスピンオフ短編集で戸高が主人公の話がないのが意外だが、その代わり複数の話でキーマンとして登場している。その都度、勤務態度が悪くて操作中に平和島競艇場に出入りしているというワンパターン紹介がウザいんだけど、連載小説だから毎回紹介するのはしょうがないんだろうね。

上からの検挙数検挙率アップの通達に対して戸高が提案した方法は、銃刀法違反や軽犯罪法違反などの軽微な犯罪で取り締まり検挙数を上げる。さらに捜査に時間がかかりそうな告訴は受けなければ分母が減るので検挙率アップに繋がると。

その結果、大森署は留置場は満杯な上、告訴を受け入れてくれない被害者からの苦情で大混乱。

その状況を知った竜崎は戸高らを叱責せず、警察庁からの通達がおかしい、理念のない数字に意味はないとばっさり。あっという間に片付いた。


7.送検

主人公:警視庁刑事部長 伊丹俊太郎 警視長

トリは伊丹刑事部長が務める。

大森署管内で強姦・殺人事件が発生した。

いくつかの証拠から配達員が逮捕されて、伊丹の判断で早期送検で決着すると思われたが、後にDNA判定でシロが判明してしまった。

まあ真犯人が別にいるんだから不起訴にするしかないんだが、検察側はDNA判定の新証拠を握り潰してでも、その人物を落とすよう要求してくる。これにはアホかよと思った。

結局真犯人の身柄を拘束したことで検察も折れたんだが、不起訴でセーフみたいな空気は一体どういうこと?

最初に捕まった配達員はいきなり身に覚えのない罪で逮捕された上に、送検されて何日も取り調べを受けてるわけで、これ全然セーフじゃないからな。



まとめ

こんな感じの竜崎の周辺の人物によるスピンオフ短編集でした。

基本は最初に書いた流れの通りで、みんな悩んでいるけど竜崎はなぜ悩んでいるのか理解不能って流れ。

シリーズ初期は竜崎が変人だったけど、最近は竜崎がまともで周囲がおかしい気がしないでもないな。


次回作『去就―隠蔽捜査6』は年内には発売すると思うのだが。。。


宰領: 隠蔽捜査5 (新潮文庫)
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